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Le Triomphe de la Richesse

素描・版画
16世紀

執筆:
Boyer Sarah

1532年頃、ロンドンに二度目に滞在した際、ホルバインはハンザ同盟商人組合の祝典会場のために、《富の勝利》および《貧困の勝利》を描いた。金と水彩でハイライトを施した、デトランプによるこれらのグリザイユ(単色画)は、15世紀中葉に成立したペトラルカの『勝利』のユマニスト的象徴解釈に従って、実物大の擬人像が、戦車を取り巻いて行進する様を描いている。この解釈はデューラーによってマクシミリアン1世の《凱旋門》にも取り入れられている。

複雑な図像表現

この装飾に関する作品では、ホルバインの残存するただ一つの真作であるルーヴルの素描では、「富裕」の神であるプルートスが、眼を閉じた老人の風貌で、杖を突き、戦車の天蓋の下に収まっている。傍らには、「豊穣」の女神ケレスとのつながりを想起させる、豊穣の角が取り付けられている。プルートスの前には、目隠しされた盲目の「幸運」がおり、手に持つヴェールは風に吹かれて舞い上がっている。女神は、古代の有名な「富豪政治家」ら、すなわち、タンタロス、ミダス、クロイソス、クレオパトラといった人々に金貨を配っている。右には、行列の上を、「復讐」の女神であり節制をつかさどるネメシスが舞い、その古来の持物(じもつ)である馬銜(はみ)および定規を携えている。戦車は、「知識」と「意志」の手綱を手にした「理性」によって御されている。これらの装飾画を模写したものによると、四頭の馬は、金儲けの四つの悪徳(「吝嗇(りんしょく)」、「暴利」、「聖職売買」、「契約(により聖職者が取引すること)」)を象徴している。また、これらの馬は、キリスト教公認の教義に基づく四つの美徳、すなわち「鷹揚」、「公平」、「正義」、「誠意」の鞭により制されている。この大胆な寓意解釈の真意は、模写の中の飾り帯にラテン語で記された説明文に読み取ることができる。「金は誘惑の父にして、苦痛の息子なり、持たざる者は苦しみ、持てる者は懼(おそ)れる。」

習作から装飾画へ

研究者らはしばしば他の模写との比較から、この素描が、完成作のための最初の段階の構想を表わしていると考えた。というのも、作者はここで、行列中の各グループを、それぞれ別個に際立たせようとしているからだ。逆に、グリザイユ(単色画)のほうでは、作者は登場人物の数を増やすことで、行列をよりはっきりと群集として描き出しており、これは当時の新傾向に沿った手法である。この視点の転換は、いくつかの変更点によりさらに強調されている。例えば、左から二人目の人物である「正義」と、三人目の人物シカエウスは、観者のほうを向き、行列の行進がもたらす動きの感覚をより強めている。最後に、戦車も、構想段階では少々重々しかったのが、貝殻の形に作り直されている。

肖像画家であると同時に装飾画家

ホルバインがイギリスで描いた装飾壁画の、数少ない貴重な例である《富の勝利》は、その大きさによっても、技巧によっても、《サウルを呪うサミュエル》(バーゼル)に結び付けることができる。この作品は1529年から1530年頃に描かれた、バーゼル市庁舎の装飾画の一つのための構想である。マンテーニャの《(カエサルの)勝利》をも想起させるルーヴルの素描は、ホルバインが肖像画家としてだけでなく大規模な装飾事業を構想した画家としても活躍していたことの一端をよく示している。その装飾作品としては、例えば、ロンドンのスティールヤード、ルツェルンのヘルテンシュタイン家(装飾画は消失、バーゼル、銅版画室所蔵の準備習作が現存)、あるいはバーゼルのツム・タンツ館(装飾画は消失、同じく準備習作がバーゼルの銅版画室に現存)などがある。

出典

- BONNEFOIT Régine, Largesse, cat. exp. Paris, musée du Louvre, Éditions de la Réunion des musées nationaux, 1994, p. 192, n 77.

- GANTZ Paul, Les dessins de Hans Holbein le Jeune : catalogue raisonné, 1939, p. 40, n° 120.

- KOEGLER Hans, "Holbeins Triumphzüge des Reichtums und der Armut", in Jahresberichte 1931/32 der Öffentlichen Kunstsammlung Basel, 1933, pp. 57 et suiv.

- MAGNON Myriam, Dessins de Dürer et de la Renaissance germanique, cat. exp. Paris, musée du Louvre, Éditions de la Réunion des musées nationaux, 1991-1992, p. 160, n 146.

- MICHEL Régis, Les Mots dans le dessin, cat. exp. Paris, musée du Louvre, Éditions de la Réunion des musées nationaux, 1986, p. 30, n 27.

- MULLER Christian, Dürer, Holbein, Grünewald : Meisterzeichnungen der deutschen Renaissance aus Berlin und Basel, cat. exp. Bâle, Kunstmuseum, Berlin, Staatlichen Museen, 1997-1998, pp. 343-418, n 25.1-25.32.

- MULLER Christian, From Schongauer to Holbein. Master Drawings from Basel and Berlin, cat. exp. Washington, National Gallery of Art, 1999-2000, pp. 350-424, n 161-191.

作品データ

  • ハンス・ホルバイン(子)(アウクスブルク、1497-98年-ロンドン, 1543年)

    《〈富の勝利〉のための習作》

    1532年頃

  • ベージュ色の紙にペン、褐色インク、および褐色・黒インクによる淡彩、後世に加筆された白のグワッシュによるハイライト、黒チョークによる下絵、ます目。ペンおよび褐色インクによる縁取り、ヤーバッハによる素描整理の際貼付された金箔の飾り帯の跡

    縦25.2 cm、横56.9 cm

  • エヴァーハルト・ヤーバッハ・コレクション、1671年に国王美術品蒐集室のために購入

  • 素描・版画

    保存上の理由により、当部門の作品は常設展示室では展示されていません。

来館情報

ルーヴル美術館 パリ フランス
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開館時間
月・木・土・日:9時-18時
水・金:9時-21時45分(夜間開館)

休館日:毎週火曜日、1月1日、5月1日、12月25日
 
 

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