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ホーム>作品と宮殿>コレクションと学芸部門>《アルコ谷の風景》

Vue du val d'Arco dans le Tyrol méridional

素描・版画
14-15世紀

執筆:
Grollemund Hélène

ガルダ湖の北に位置する、この砦を戴いた岩がちな山塊、アルコの眺望図は、デューラーの最も美しい風景画のうちの一つであると同時に、最も丹念に描かれたものの一つである。この作品は、1495年にデューラーが最初のイタリア旅行から戻る際、ヴェネチアから生地ニュルンベルクへと至る道の途上で描かれた。この長旅の途次にデューラーは15枚ほどの水彩画を描き、それらの作品はウィーン、ベルリン、ブレーメン、ロンドンに所蔵されている。この作品はそのうち最も有名なものの一つである。

イタリアからの帰国

1495年春のある朝、ヴェネチアからトリエントを通りブレンネル峠へ向かう途上にあったデューラーは、ガルダ湖北の、砦を戴く岩肌の山塊の前、アルコで足を止めた。ヴェネチアでは、カルパッチョ、チーマ・ダ・コネリアーノ、ベッリーニらの風景画を堪能することができたであろうデューラーは、ニュルンベルクに向けて発ったところであった。デューラーはガルダ湖を見たいと思っていたのに違いないが、目の醒めるような自然と、おそらくは生地の思い出を無意識に喚起した城砦とのパノラマに、突然足が止まったのだ。作品中の書き込みは、制作年より後の、1502年から1503年のものであろう。モノグラムも同様に、後日描き入れられたものである。

二回に分けた入念な制作

作品が未完に見えるのは右側中央部分だけであるが、最初のイタリア旅行における他のすべての水彩画は、スナップ写真を思わせるような、未完成の効果をもたせてある。これらの水彩画の大部分はヴェネチア行きの往路における作品である。作風の円熟ということが、作品の入念な仕上がりを説明する一つの解釈であるが、それに一つの仮説を付け加えねばならない。それは、素描の前景が、後になって描き足されたものだとする考えである。というのも、前景では色遣いが違い、中央部の主題に比べ筆致がやや無味乾燥だからだ。他方で、この水彩の明るい印象は、マンテーニャの影響を表わしていると見てよいかもしれない。

力強さ、均整、晴朗さ

デューラーの風景画は、1500年前後のヨーロッパ美術において独自の位置を占めており、真にその直接の継承者といえる芸術家は、デューラーの弟子の中にも見られない。描かれる場所の地形を、緻密かつ描写力あふれる筆致で忠実に再現しつつ、デューラーはこの水彩画の中で、春の景色の光溢れる詩情と色調の豊かさを、精緻に分析し、表現しようと努めている。オリーヴの木の灰青色と、水彩の全体的にきわめて明るい印象は、それが朝の風景であるということを思わせる。デューラーは生い茂る木や草、とりわけ葡萄の木の根元を驚くべき巧みさで描いている。小村の城壁のぎざぎざ模様はおそらく少し誇張して大きく描かれているが、デューラーが、外部の攻撃から人間を守る要塞に対し抱いていた興味をよく示している。同じく、実際は尖峰の背後に存在する堂々たる山並みは、中心のモティーフをよりよく際立たせるために、作者によって意図的に省略されている。そして、鮮やかで明るい色彩のこの作品を支配しているのは、実際には、穏やかで均衡のとれた力強さの印象なのである。

出典

- STARCKY Emmanuel, Dessins de Dürer et de la Renaissance germanique dans les collections publiques parisiennes,  cat. exp. Paris, musée du Louvre, Éditions de la Réunion des musées nationaux, Paris, 1991, n 33.

- THÜRLEMANN Felix, "L'aquarelle de Dürer 'fenedier klawsen'. La double mimesis dans l'analyse picturale d'un lieu géographique", in Revue de l'art, n° 137 / 2002-3, p. 9-18.

sur les aquarelles :

- LEBER Hermann, Albrecht Dürers Landschaftsaquarelle : Topographie und Genese, Hildesheim, G. Olms, 1988.

- HERMANN-FIORE Kristina, "Dürers neue Kunst der Landschaftsaquarelle", in Albrecht Dürer,  cat. exp. Vienne, Albertina, 2003, pp. 26-43.

作品データ

  • アルブレヒト・デューラー(ニュルンベルク、1471年-同地、1528年)

    《アルコ谷の風景》

    1495年頃

  • ペン、褐色インク、水彩とグワッシュによるハイライト、黒インクによる加筆

    縦22.3 cm、横22.2 cm

  • ヤーバッハ・コレクション、1671年に国王美術品蒐集室に収蔵

  • 素描・版画

    保存上の理由により、当部門の作品は常設展示室では展示されていません。

来館情報

ルーヴル美術館 パリ フランス
地下鉄:1番線または7番線、Palais-Royal Musée du Louvre 駅
 
開館時間
月・木・土・日:9時-18時
水・金:9時-21時45分(夜間開館)

休館日:毎週火曜日、1月1日、5月1日、12月25日
 
 

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作品の補足情報

右上にペンと黒インクによるデューラーの書き込み : fenedier klawsen (ヴェネチアの峠)、および別人の手になる、ペンと褐色インクによるデューラーのモノグラム