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ホーム>作品と宮殿>コレクションと学芸部門>《アレクサンドリアの聖カタリナ》

Sainte Catherine d'Alexandrie

素描・版画
16世紀

執筆:
Mancini Federica

ルーヴルの《聖カタリナ》は、現在ロンドンのナショナル・ギャラリーに所蔵されている木板に描かれた絵のための準備習作である。これはラファエッロの素描の中でも最も完成度の高いものであり、その制作時期は、ラファエッロの画業修練の移行期、すなわち、《バリオーニの祭壇画》(ルーヴル美術館、素描・版画部門、INV 3865)を完成させた、未だ「フィレンツェ」時代に入る時期と、ヴァティカン宮「署名の間」の制作開始期との間に当たる。

隠れた異作の存在を示唆する見事な素描

このカルトン(下絵)の驚くべき保存状態の良さは、その大きさおよび転写のための目打ちの存在からしても、さらに目を見張るものがある。その大きさはかなりのものであり、ラファエッロの素描作品としてはめずらしいのだ。転写のための用意という点を加えれば、幾人かの美術史家らの確信、すなわち、この素描が、ロンドンの《アレクサンドリアの聖カタリナ》のための、木板に転写される直前の最終版であるとする説が裏付けられる。しかしながら、素描と板絵のさらに詳細な比較によって、両者の間の相違点も明らかにされている。例えば、首およびうなじの右側部分や衣服、また、顔面に用いられている遠近法や人物像全体に適用されている短縮法などである。

キアロスクーロ(明暗法)と身体の捻れ

カタリナは、その殉教を示す持物(じもつ)である車輪にもたれて立っている。腕と衣服は、長くカーブした描線により表現され、聖女に波打つようなリズムを与えている。傾げた頭部は左へ向けられているのに対し、身体はやや捩れた状態で正面を向いている。完成版の絵の方では背景に描き込まれている風景は、ここには見られない。作者の関心は、明暗(キアロスクーロ)の効果を施された顔の部分の、苦悶と禁欲とを同時に示している迫真の表情へと集中しているようである。苦しげな姿勢も、身体の周りを螺旋状に取り巻いているひだのついた衣裳の優美な表現によって、和らげられている。

Trente-sept ans de chefs-d'oeuvre

この素描は、それが種々の複雑な影響を受けたことを示しているために、はっきりとした制作時期が特定されておらず、その制作は1505年から1511年の間であるとされている。この時期は、非常に活動的で、流行の変化に敏感であったラファエッロの、作風の発展における重要な時期に当たっている。《聖カタリナ》は、25歳にしてすでにヴァティカンのフレスコ画の注文を受けていた、この短命の天才の知識の豊富さを物語っている。ルーヴルのカルトンは、署名と1507年の年記のある《バリオーニの祭壇画》(ローマ、ボルゲーゼ美術館およびヴァティカン絵画館)制作のための探究がなされたのと同時期であろう。同様に、この素描は《メディチのヴィーナス》や、ローマの「署名の間」の《聖体の論議》(1509-1511年)のための準備習作と比較されている。《聖カタリナ》はそれゆえ、フィレンツェで始められた研究がローマにおいて結実したことを表していると言えよう。この推察は、人物像が彫塑的な立体感のタイプを示していることで、さらに裏付けられる。というのは、その作風は、ラファエッロがローマに到着した際、古典古代に倣って熟考を重ねた結果だからである。なお、このカルトンの重要度は、それとの比較に用いられた数々の傑作によって色褪せることはなかった。その知名度の高さは、1811年から19世紀終わりに至るまで、この素描がルーヴルの各所で常に展示され続けてきたほどである。

出典

- BACOU Roseline, Cartons d'artistes du XVe au XXe siècle : LVe exposition du Cabinet des dessins, cat. exp. Paris, Musée du Louvre, Éditions de la Réunion des musées nationaux, 1974, p. 14-15, notice 4.

- CORDELLIER Dominique, Raphaël : autour des dessins du Louvre, cat. exp. Rome, Académie de France, 1992, p. 113-115, notice 36.

- VIATTE Françoise, Dessins italiens de la Renaissance : LVIIIe exposition du Cabinet des dessins, cat. exp. Paris, Musée du Louvre, Éditions de la Réunion des musées nationaux, 1975, p. 134-135, notice 62.

- VIATTE Françoise, Raphaël dans les collections françaises, cat. exp. Paris, Galeries nationales du Grand Palais, Éditions de la Réunion des musées nationaux, 1983-1984, p. 231-234, notice 62.

作品データ

  • ラファエッロ・サンティ、通称ラファエッロ(1483-1520年)

    《アレクサンドリアの聖カタリナ》

    1507-1509年

  • ベージュ色の4枚の紙片をつなぎ合わせたものに黒チョーク、白のハイライト、転写のための針による目打ち

    縦58.7 cm、横43.6 cm

  • エヴァーハルト・ヤーバッハ・コレクション、1671年に国王美術品蒐集室に収蔵

  • 素描・版画

    保存上の理由により、当部門の作品は常設展示室では展示されていません。

来館情報

ルーヴル美術館 パリ フランス
地下鉄:1番線または7番線、Palais-Royal Musée du Louvre 駅
 
開館時間
月・木・土・日:9時-18時
水・金:9時-21時45分(夜間開館)

休館日:毎週火曜日、1月1日、5月1日、12月25日
 
 

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