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作品 《エマオのキリスト》

絵画部門 : オランダ絵画

《エマオのキリスト》

© 2010 Musée du Louvre / Philippe Fuzeau

絵画
オランダ絵画

執筆:
Michèle Perny

復活したイエスが二人の弟子の前に現れる、というエマオの巡礼者たちの場面は、聖ルカによる福音書の中ではキリストの復活の挿話の後に書かれている。レンブラントはこの場面を異なる手法で何度も描いているが、ここではより人間的かつ内面的な洗練された表現によって、宗教画をそのもっとも最高度に純粋化され、精神性にあふれたものにまで高めている。

聖餐の場面

エルサレムともう一つの町エマオを結ぶ道の上で、キリストと二人の巡礼者との出会いがあった一日の終りにあたる、宿場での食事の場面をレンブラントは選んで描写している。一人の召使いが料理を運んでいるところだが、場面のもっとも重要な点は、眼を天に向かって上げたキリストのしぐさにある。キリストはパンを割く…超自然的な輝きが彼の顔面に光輪を作り出す一方、左側の見えない窓から注がれる一筋の光が、真っ白なテーブルクロスを照らしている。テーブルクロスは、十字架に架けられたイエスの屍衣、すなわち、三日後に空の墓の側で見つけられた聖骸布を連想させている…この瞬間に、二人の弟子はそれがイエスだと分かり、一人は畏敬の念で後ずさり、もう一人は両手を合わせて祈りのしぐさを見せている。胸を打たれるような写実性によって描かれたキリストの顔は、蒼白で苦しげであり、言葉に言い尽くせない苦しみとその死に打ち勝ったばかりであることを想起させる。その死は彼の右側に伏せられた空のグラスや、「神の子羊」の死を表す左側の料理の上に載った二つに割られた仔羊の頭といった細部の象徴によって表されている。教会のように空間を満たしている奥のニッチの緑色がかった影の上に浮かぶ光輪の儚さと、暗い茶色が支配的な色調によって明暗の起伏を刻みながら人物の顔やオブジェの上に留まった自然の光の間に存在する対比が、止まってしまったかのような形容しがたい瞬間を創り上げ、場面を人間界から神の世界へと転換させている。

レンブラントと宗教画

レンブラントは肖像画、風景画、歴史画といった多岐に渡るジャンルを見事に扱っているが、その作品の大多数は宗教画に割り当てられている。若い頃から聖書を充分に吸収した画家は、聖書の主題やキリストの描写を扱う際は長い間熟考する習慣があったようで、実際に、宗教的主題を扱った作品の中では頻繁にキリストを描いている。エマオの晩餐という主題は、それ自体、1634年と1654年に制作された自身の版画作品やその他多数の絵画作品にも着想を与えており、そのうち、今日ジャクマール・アンドレ美術館に保管されている一点は、劇的な効果が強調された、画家の若年期の作品である。それとは非常に異なる心を揺さぶる簡潔さが支配するルーヴル所蔵のこの作品は、このオランダ人画家の円熟を証明していると言えよう。

伝統の刷新

この作品の中で、レンブラントは、レオナルド・ダ・ヴィンチ、ティツィアーノやヴェロネーゼといったイタリア・ルネサンスのモデルに立脚しつつ、エマオの巡礼者を主題とした過去の諸作品から数多くの要素を借り受け、活用している。作品全体の構図や、大きく、厳密に正面から描かれた建築物、同じく正面から描かれているものの作品の中心線から微妙にずらされたキリストの姿などが、それを示している。作家は、当時よく見られた「この世の虚しさ」に特有のいくつかの象徴を故意に用いているにもかかわらず、17世紀の絵画に未だのしかかっていた図像表現や教条的な伝統から逃れ、さらには聖人伝の伝えようとするメッセージをも単純化、ひいては消し去って、その神秘的な意義のみを留めることに成功している。画家はとりわけ光を活用し、この伝説的とも言える明暗法は、描かれた場面をも超越して、この無時間的な性格を作品に与えているのだ。

出典

Le Siècle de Rembrandt. Tableaux hollandais des collections publiques françaises, exposition, Paris : Musée du Petit-Palais, 17 novembre 1970-15 février 1971, pp. 179-180.

- FOUCART Jacques, Les Peintures de Rembrandt au Louvre, Paris : Editions de la Réunion des musées nationaux, 1982, collection « Albums », pp. 50-53.

作品データ

  • レンブラント・ハルメンスゾン・ファン・レイン (レイデン、1606 年−アムステルダム、1669年)

    《エマオのキリスト》

    1648年

    1734年5月12日アムステルダム、ウィレム・シクス市長による売り立て(No.57)。1775年5月17日パリ、ラセイ伯爵による売り立て。

  • 油彩 木(マホガニー)

    縦0.68m、横0.65m

  • 1777年2月3日パリ、ルイ16世コレクションのためにランドン・ド・ボワセによる売り立て(No.50)にて取得。

    Inv. 1739

  • 絵画

来館情報

ルーヴル美術館 パリ フランス
地下鉄:1番線または7番線、Palais-Royal Musée du Louvre 駅
 
開館時間
月・木・土・日:9時-18時
水・金:9時-21時45分(夜間開館)

休館日:毎週火曜日、1月1日、5月1日、12月25日
 
 

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作品の補足情報

左下に署名と制作年:Rembrandt . f. 1648(署名はなぞられている)