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ホーム>作品と宮殿>コレクションと学芸部門>《エラスムスの肖像》

Taureau-plaquette

© 2008 Photo RMN / Franck Raux

素描・版画
16世紀

執筆:
Grollemund Hélène

1520年のオランダ旅行の折に、デューラーはエラスムスと少なくとも四回は会っており、二回は肖像画を描いている。16世紀ヨーロッパで最も名を知られたユマニストと、当時のドイツにおける最大の芸術家との出会いにより、このルーヴルの、力強く簡潔に描き上げられた見事な素描が残されることとなった。この素描は、すぐのちにホルバインにより描かれた肖像画と併せ、エラスムスの肖像画のうちで最も重要なものの一つとして数えることができる。

未完の肖像画

この素描は、デューラーがオランダに滞在していた間(1520年7月12日-1521年7月)に描かれたものである。ブリュッセルに滞在した際、デューラーは旅行記の中で、1520年8月28日と9月2日の間にエラスムスの名を記している。デューラーはエラスムスに《キリストの受難》の銅版画を贈っており、さらにこう付け足している。「余は新しくロッテルダムのエラスムスの肖像を描いた。」したがってデューラーは、言外に、すでにエラスムスの肖像画を描いたことがあるということを示している。最初の肖像はおそらく8月5日から19日の間にアントウェルペンで描かれ、その際にエラスムスがデューラーに多くの贈物をしており、こうした種々の状況が符合することから、ブリュッセルで描かれた肖像とは素描であり、おそらくルーヴルのそれであるということが示されている。エラスムスの伝えるところによれば、この作品は、カール5世の聖成式のためニュルンベルクの貴顕が訪れたため未完のままとなったようであるが、それもこの仮説を裏付けている。実際、他の多くの黒チョークによる肖像画と異なり、ルーヴルの素描は、黒チョークの暗い下地から浮き上がっておらず、そのことも、これが未完成であるということを思わせる。おそらくはこの素描も、1526年、エラスムスの依頼によりデューラーが制作したビュラン版画(エングレーヴィング)のための下絵であろう。とは言え、この仮説には異議が唱えられている。なぜなら、ユマニストは版画の中では横向きに描かれており、正面向きに描かれてはいないからである。

アペレスとルターの再来

デューラーとエラスムスとの出会いは、歴史的なものであったとはいえ、このユマニストが他の人々と結んでいたような、長年の交友関係のきっかけとなったわけではなかった。両者の共通の友人であるヴィッリバルト・ピルクハイマー(1470-1530年)も、エラスムスが強く要望していた大肖像画を描くよう、デューラーを説得することができなかった。1525年1月8日、エラスムスはこう書いている。「私もデューラーに肖像画を描いてもらいたいのだ、誰もが彼のような偉大な画家にそうしてもらいたいように。だが、どうやったらそれが可能となるのだろうか。デューラーはブリュッセルで、木炭でこの仕事に取りかかったのだが、どうやら私のことを、久しく忘れてしまったらしい…。」エラスムスはデューラーのことをアペレスの再来と称え、デューラーはこのユマニストをもう一人のルターと見ていたが、それが相互の尊敬の念を示す印であったとはいえ、深い相互理解の証というわけではなかったのである。この肖像画は、それが未完成であるためにおそらくそう見えるのであろうが、どちらかといえば表面的であり、そこからも二人の関係が理解できると言ってよい。

皮肉と瞑想

デューラーはエラスムスをほぼ正面から捉え、胸部は画面の中心線に対しやや斜め向きに描いている。最初の下描きの跡――例えばその帽子の輪郭の周り――が認められるが、それはデューラーが最初は顔を画面の中心に置き、それを後から左へずらしたのだということを示している。瞼の形や唇の両端からは、このユマニストの操る言語がしばしば帯びる辛辣さと皮肉とが見て取れる。伏し目がちのエラスムスの視線は、ホルバインの残した肖像画においてはこれほど強調されてはいないが、この人物にわずかに神秘的な趣を与えている。それは、まさに瞑想の最中にある人物を表わしているようである。

出典

- Dürer schriftlicher Nachlass, éd. Hans Rupprich, 1. Bd., Berlin, 1956.

- CALVET Arlette, Le XVIe siècle européen : Dessins du Louvre, cat. exp. Paris, musée du Louvre, 1965, notice 23.

- GERLO Alois, Erasme et ses portraitistes, Bruxelles, 1950.

- MENDE Matthias, Albrecht Dürer, cat. exp. Vienne, Albertina, 2003, notice 173.

- PANOFSKY Erwin, Albrecht Dürer, vol. 2, Princeton, 1948, n 1020.

- SCHUSTER Peter-Klaus, Köpfe der Lutherzeit, cat. exp. Hambourg, Kunsthalle, 1983, sous notice 67.

- STARCKY Emmanuel, Dessins de Dürer et de la Renaissance germanique dans les collections publiques parisiennes, cat. exp. Paris, musée du Louvre, 1991-1992, Editions de la Réunion des musées nationaux, 1991, notice 66.

作品データ

  • アルブレヒト・デューラー

    《エラスムスの肖像》

    1520年

  • 黒チョーク

    縦0.373 m、横0.268 m

  • A.F.アンドレオッシ・コレクション、1864年4月13-16日にパリで競売(61番)。J.ジグー・コレクション、1882年3月20-23日にパリで競売(288番)、レオン・ボナ・コレクション、1912年2月21日寄贈

  • 素描・版画

    保存上の理由により、当部門の作品は常設展示室では展示されていません。

来館情報

ルーヴル美術館 パリ フランス
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月・木・土・日:9時-18時
水・金:9時-21時45分(夜間開館)

休館日:毎週火曜日、1月1日、5月1日、12月25日
 
 

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