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ホーム>作品と宮殿>コレクションと学芸部門>《スポレートの戦い》

Bataille de Spolète

RMN-Grand Palais - Photo S. Maréchalle

素描・版画
16世紀

執筆:
Mancini Federica

この素描は、1538年に描き上げられた大作のための習作であるが、その大作の完成までには幾度もの中断があった。その制作は、実現されずに終わったペルジーノによる絵の制作計画を引き継いで進められたものである。その絵はヴェネチア統領官邸の大会議室にあるグワリエントの作品に代わって飾られる予定であった。注文主である同都市の十人会議の決議した報酬返済要求のため、ティツィアーノはこの計画をどうしても完遂せざるを得なくなったのである。なお、絵は1577年に宮殿が火事に見舞われた際に焼失してしまっている。

スポレートの略奪

この絵では、描かれている場面が何であるのか、見て理解するより先に、まず猛り狂うような描線が見る者の注意を引く。後ろ向きに描かれた兵士が操っている大砲からは、まだ煙が立ち昇っている。その背後では、短縮法で描かれた馬によって、画面の右端が区切られている。そのうち一頭には上半身裸の男が跨り、横向きに描かれたもう一頭の馬には、羽飾りの付いた兜をかぶった騎士が乗っている。中心部では、橋のアーチ型の部分が、周囲の混戦とは対照的に、われわれの眼を休ませてくれる。画面左側では再び乱戦が続く。ぶつかり合う集団は単に頭だけ、あるいは馬や槍の形のみで表現されているが、そこから際立って、いくつかの人物像が描かれている。背景で町に向かって上って行く集団の姿になると、筆致はより軽くなる。右上では、めまぐるしい人間の渦は大自然の渦巻く力によって取って代わられている。というのも、戦いの激しさは、不安気な嵐模様の黒雲や山塊の存在によって強調されているからである。左上に見えている旗は、皇軍の進軍方向を指し示しており、立ち昇る二つの煙はスポレートの町の略奪を示唆している。1155年、教皇アレクサンデル3世への支持を表明したスポレートの町に対し、教皇に敵対するフリードリヒ赤髭王の軍隊は、町の破壊で応えたのである。

テレーロ(大絵画)の制作準備

この素描は準備習作ではなく、最終的な作品モデル考案のための途中経過を示した作品である。引かれているます目は、素描の転写のためよりは、部分部分の表現をさらに豊かにするために役立てられたようである。筆致は揺れ動き、真に迫っているが、それはティツィアーノが明部と暗部の色調のコントラストを特に際立たせているからである。また、制作の初め(1513年)と終わり(1538年)で作風が異なっているのは、アイデアのうちいくつかが時代遅れになっていたからである。とは言え、作品は、ティツィアーノがマントヴァに滞在中その作風を知り得たはずであるジゥリオ・ロマーノの影響を受けている。ティツィアーノは、ジゥリオの素描の他に、その弟子により1538年に制作された、統領官邸内「トロイアの間」の天井画をも見ることができたはずである。

絵画制作の舞台裏

ティツィアーノの生まれ故郷の風景を想起させることから、しばしば《カドーレの戦い》の名で呼ばれることもあるこの《スポレートの戦い》は、その長い制作準備期間を考えると、それだけ重要性を持っていると言える。さまざまな出来事によりこの作品の完成は先延ばしにされた。例えば、1516年のジョヴァンニ・ベッリーニの死去に伴う、センセリーア(特別親任)が出るまでの待機であるとか、サンタ・マリア・デイ・フラーリ教会の《聖母被昇天》制作のためとかである。それでもティツィアーノは、一番気掛かりであった十人会議の度重なる返金要求を無にはできないため、制作を再開し、非常な熱意を持って作品を仕上げた。描き上げられたテレーロ(大絵画)は、その完成直後から高い評価を受けたが、十人会議は、ティツィアーノが完成に要した期間が長すぎることを不満とし、隣接する装飾画はポルデノーネに依頼した。しかし、ポルデノーネはこの仕事が完了する前に世を去ったために、その装飾画は未完のままとなっている。

出典

- BACOU Roseline, Dessins du Louvre, école italienne, Paris, Flammarion, 1968, n 46.

- CHIARI MORETTO WIEL Maria Agnese, Tiziano, Corpus dei disegni autografi, Milan, Berenice, 1989, pp. 90-91, n 24.

- Guida d'Italia del Touring Club Italiano, Umbria, Milan, 1978, p. 317.

- REARICK William R, Le Siècle de Titien, l'âge d'or de la peinture à Venise, cat. exp. Paris, Galeries nationales du Grand Palais, 1993, pp. 574-575, n 225.

- REARICK William R., Il disegno veneziano del Cinquecento, Milan, Electa, 2001, pp. 96-98.

- SCRASE David, The Genius of Venice, 1500-1600, cat. exp. Londres, Royal Academy of Arts, 1983, pp. 292-293, n D72.

作品データ

  • ティツィアーノ・ヴェチェッリオ、通称ティツィアーノ(ピエーヴェ・ディ・カドーレ、1488/1490年 -ヴェネチア、1576年)

    《スポレートの戦い》

    1538年頃

  • 木炭および黒チョーク、褐色の淡彩および白のハイライト、黒チョークによるます目、青色の紙

    縦38.2 cm、横44.4 cm

  • ペトルス・パウルス・ルーベンス・コレクション(?)、A.トリースト卿コレクション、ピエール・クロザ・コレクション、シャルル=ポール・ジャン=バティスト・ド・ブルジュヴァン・ヴィアラール・ド・サン=モリス・コレクション、1793年に亡命貴族の財産として接収の後、1796-1797年に中央美術館に収蔵

  • 素描・版画

    保存上の理由により、当部門の作品は常設展示室では展示されていません。

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