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《ニッチに置かれた花瓶》

© 2005 Musée du Louvre / Erich Lessing

絵画
オランダ絵画

執筆:
Collange Adeline

ファン・ハイスムは、この中で花の静物画の伝統的なモチーフを使用しているが、愉快な非対称と鮮やかな彩色によりさらに高度の豪華な装飾性へと高めている。様々な種類の花が見せる、開花期最後の姿が、自然の本物らしさを再現しようとする入念さをもって描かれている。作品は、この世の無常の観念を表していると考えることができよう。これらの花の美しさはやがて終わりを迎え、露の滴が生命のはかなさを象徴し、蠅たちが、いずれ訪れる腐敗を予兆している。

植物図鑑のような鮮明さ

ヤン・ファン・ハイスムはここで、花静物画の伝統的なモチーフを用いている。ニッチに置かれた、生けられた花の描写は、空間が壁の中に実際にへこんでいるかのような、だまし絵のようである。このような錯覚を作り出そうとする意図に、北方では非常に重要視されている自然主義的な真実味が加わっている。その結果、この絵は植物図鑑のように鮮明であるが、それはいかに装飾的な図であろうか。各々の品種が固有の特質を持ちあわせている。サンシキアサガオの青みがかった花冠、森のヒヤシンスの鈴の音が聞こえるような房、血のように赤い大きなボタンの豪華さ、ヒナゲシの脆(もろ)さ、チューリップの凝った二色の色彩美、カーネーションの優美さ、白バラの絹のような滑らかさ・・・

花の儚(はかな)さ

これらの豊かな装飾の裏には、道徳的なメッセージが隠されている。だからと言って、描かれているそれぞれの花が象徴するものを探し出そうとしてはいけない。15・16世紀は、各々の植物に特別な意味を与えることが一般的な時代であったが、17世紀に入った途端にそれはきわめてまれになるからである。花束はその全体が、存在の移ろいやすさと、この世の儚(はかな)さを警告している寓意として捉えられるべきであろう。作家はバラ、カーネーション、サンシキアサガオといった生命を表す花、ヒヤシンスや水仙といった死を象徴する花、さらに、ケシといった永遠の眠りを連想させる花を混ぜ合わせている。大部分の花は咲き終わっており、数時間のうちにその美しさはあせてしまう。避けられない終りがケシによって表現されている。ファン・ハイスムはもうすぐ開花しそうなつぼみ、乱れるような花盛りを迎えた一輪の花、花弁という装いを失ってしまった貧相な芯を並置している。露の滴が葉にちりばめられ、その命のはかなさを強調している。虫の存在は、だまし絵の効果を引き立てつつ、二重の意味を含んでいる。魂の象徴である蝶が生命の循環を具現し、蠅はやがて訪れる腐敗を想起させることで、生命の退廃を強調している。地上の快楽の虚しさに対する戒めは、永遠を約束する正しく清い生活を送るよう我々に促しているのだ。

装飾の妙技

熟達した妙技を持つ画家ファン・ハイスムは、花束の絵画を多数描いている。アンブロジウス・ボスハールトのようなアンティミスト(日常的な室内情景の画家)の、七宝のような、ほとんど幾何学的といってよいほど厳密な要素の配置よりも、画家は絢爛豪華な装飾に溢れた、この豊かに生い茂る見事な草花の描写を好んだ。彼の芸術は、快活な非対称と鮮やかな色彩りのバロック的息吹の中で、その先人たちの作品をさらにふくらませている。方々に飛び出した茎が、花束の整然とした構成を打ち砕いている。葉の陰に隠れた、やっとのことで花を支えているかのような花瓶は、積み重なった花 のせいでほとんど忘れられている。終りを前にした最後の生命の奮起を振り絞ってニッチからあふれ出ようとしているかのようなこれらの植物は、観る者の心を動かす逆説となっている。

出典

- FOUCART Jacques, Catalogue des peintures flamandes et hollandaises du musée du Louvre, Paris, Gallimard/Musée du Louvre éditions, 2009, p. 318

- TAPIE Alain, Le Sens caché des fleurs : symbolique & botanique dans la peinture du XVIIe siècle, Adam Biro, 1997.

作品データ

  • ヤン・ ファン・ハイスム (1682‐1749年)

    《ニッチに置かれた花瓶》

    1720‐1740年頃

  • 油彩 木

    縦80cm、横61cm

  • 1891年、レオン・モローによる遺贈

    R.F. 708

  • 絵画

    リシュリュー翼
    3階
    フランドル、オランダ 18世紀前半
    展示室A

来館情報

ルーヴル美術館 パリ フランス
地下鉄:1番線または7番線、Palais-Royal Musée du Louvre 駅
 
開館時間
月・木・土・日:9時-18時
水・金:9時-21時45分(夜間開館)

休館日:毎週火曜日、1月1日、5月1日、12月25日
 
 

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作品の補足情報

署名:JAN VAN HUYSUM FECIT