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作品 《パオロとフランチェスカ》

絵画部門 : フランス絵画

《パオロとフランチェスカ》

© 1996 RMN / Jean-Gilles Berizzi

絵画
フランス絵画

執筆:
Malika Bouabdellah - Dorbani

「永遠に続く地獄の嵐が、魂たちを突風で吹き飛ばし、旋回させぶつけ合い執拗に攻め立てていた。(略)そして私は分かったのだが、その魂は欲望に身を委ねて肉欲の罪を犯した者たちの魂だったのである。(略)こうしてその突風は邪悪な魂たちをあちらこちら、上へ下へと(略)空中に大きな列を作りながら運んでいる。(略)魂が激しい風に運ばれて来たので、私は尋ねた。「師よ、明かしてください。黒い風によって懲らしめられているあの魂たちは誰なのですか。」

歴史の地獄に落ちた者たち

ラヴェンナ出身のグイード・ダ・ポレンタの娘であるフランチェスカは、政治的な理由で不具のジョヴァンニ・マラテスタに嫁いだのだが、義弟である美男のパオロと恋に落ちる。湖のラーンスロットとグィネヴィアの禁じられた恋の物語を読んで感動した2人は、接吻を交わす。その2人を目撃したジョヴァンニは、剣で2人を刺し殺す。
この歴史的なドラマは、ダンテの『神曲』三部作の第一編の中にある、第二圏五歌の主題を成している。『アエネイス』の著述家で、ダンテの師であると同時に象徴的な案内役であるウェルギリウスに伴われて、詩人は、地獄の嵐の中で、理性を省みずに己の情熱に身を任せて罰を受ける恋人たちに出会うのだった。
18世紀末の様々な翻訳や研究によって、数多くの画家や作家がダンテの詩を再発見し、それに慣れ親しむようになった。恋人たちの禁じられた愛は、芸術家たちに好まれたが、彼らは当初、この劇的な出会いを表現するには至らなかった。ダンテの詩に対する熱狂は、1815年以降に具体的な形を取るようになる。
ゲーテの恋人たち(ファウストとマルゲリーテ)、もしくはシェイクスピアの恋人たち(ロミオとジュリエット)のように、ダンテの恋人たちは、ドラクロワ、アングル、ドヴェリアといった多くの画家にインスピレーションを与えたが、彼らはロマン派的またはトルバトゥール風に、生きていたときの2人の恋人が読書していたり、抱き合ったりしているところを描き、このエピソードの知的、逸楽的、官能的、または肉欲的な性格を前面に出している。
神秘的でメランコリックなシェーフェルは、魂の奥深い感情を描き出しながら、精神的な解釈を提示しており、2人を永遠に彼岸で結びつけている感情を通して、神聖なる精神を具現化している。画家は、ダンテとウェルギリウスに2人の恋人の物語が及ぼした効果を描いており、詩人たちにとっては、かくも微妙な恋人たちの告白は弱さを許すものだった。純潔な魂の愛となった肉体的な愛は、清らかで、ゆえに詩人たちは辛くも優しい哀れみを感じ、永遠に心を痛めているのである。



悲劇的な恋愛

地獄のテーマに敏感であったシェーフェルは、1822年からこの主題にこだわっていた。オルレアン公によって購入された1835年の作品は、最も完成度の高い作品と見なされている。画家は、地獄のテーマで、1855年に制作されたルーヴルのこの作品を含めた、10点ほどの作品を描くことになる。理想、純潔、崇高さを念頭に、シェーフェルは、実際に起こった人間の惨劇を象徴のレベルにまで高めている。パオロが、ヴェールで顔を覆い、フランチェスカの悲痛な話に打ちのめされているのに対し、より脆いフランチェスカが、愛する者の絶望に苦しんでいることを告白し、心動かされる。死と愛による結びつきが優先される中で、画家は、人間の本質の逆説的な真実を表わしている。優美さ、感情、甘美な思い出に対する愁い、不幸を語っている2つの魂の苦悩といったものは、肉体に覆われてはいるものの、その透き通るような姿ゆえに、この2人は重力の法則と現実から逃れている。
「愛した者、愛する者、これから愛するであろう者の全ては、フランチェスカとパオロの前で魅了され、感極まって立ち止まるであろう。ダンテの『地獄篇』は、恋人たちの情熱的な抱擁を神秘的で永遠のものとするためだけに、フランチェスカとパオロを苦悶の地獄圏に登場させたとしか思われないのである。」(フィリップ・ビュルティ、『ガゼット・デ・ボザール』、1859年5月10日、57頁)
複雑な状況は、簡潔に表わされており、左側では、明るい対角線と絡み合った曲線が、裸体の恋人たちと白いドレープを背景のグリザイユ(単色画)から浮かび上がらせ、右側では詩人たちが影の中に佇んでいる。乳白色の肉体から衣襞の灰青色へ、前景の仄かな光から中景の赤みを帯びた色調へ、恋人たちのモデリングから詩人たちに見られる緻密なデッサンへ、ウェルギリウスによって不滅のものとされたディドからダンテに愛されたベアトリーチェへ、感情から形態へと、これらの移り変わりは繊細で、各部分は他の部分と調和を保ちながら結びつけられている。

死を越えた愛情

画家が構想した、2つの魂、肉体と感情が結びついた飛翔の姿は、地獄の嵐の中に永遠に巻き込まれて空中で翼を広げた鳩という、詩人の思い描いた光景を忠実に描写している。
「この世紀で最も簡潔で最も偉大な、この唯一の作品において、人間の本質に関する永遠の真実が完全に理解される。男が自己中心的な絶望の叫びを発しているのに対し、女の唇からは、彼女を深淵に引きずり込んだにもかかわらず、彼女が死を越えて愛する者に対する、限りない愛着のため息がもれている。もし男が目を開いたとしても、その視線が彼女に注がれることはないだろう。逆に女が瞼を上げれば、そのまなざしは彼だけしか見ないだろう。男は自分自身の苦悩と必死に戦っている。女は、自己犠牲の奇跡によって、自らの苦悩を少しも感じず、他者の苦しみだけが彼女を苦しめる。永遠の死と、永久の悲しみに囚われてはいるとはいえ、こうして女は、ほぼ天使のような存在へと変容し、地獄に落とされたものの失われた天国を取り戻すのであり、神から遠ざけられ、見捨てられたその存在ゆえにまさに、これ以降彼女自身が一種の愛の救済となるのである。」(レオポルド・ヴェリスツ、前掲書、23頁)

出典

- KOLB Marthe,  Ary Scheffer et son temps, Paris, 1937.

- EWALS Leo, La Carrière d'Ary Scheffer, ses envois aux Salons parisiens. Institut Neerlandais, Paris 1980.

作品データ

  • アリ・シェーフェル(ドルトレヒト、1795年-アルジャントゥイユ、1858年)

    《パオロとフランチェスカ》

    1855年

  • 油彩、カンヴァス

    縦1.71m、横2.39m

  • 1900年、画家の娘マルジョラン=シェーフェル夫人より遺贈

    R.F. 1217

  • 絵画

    ドゥノン翼
    2階
    モリアン ロマン主義
    展示室77

来館情報

ルーヴル美術館 パリ フランス
地下鉄:1番線または7番線、Palais-Royal Musée du Louvre 駅
 
開館時間
月・木・土・日:9時-18時
水・金:9時-21時45分(夜間開館)

休館日:毎週火曜日、1月1日、5月1日、12月25日
 
 

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作品の補足情報

左下に署名および年記:Ary Scheffer. 1855