Go to content Go to navigation Go to search Change language

ホーム>作品と宮殿>コレクションと学芸部門>《フローラ》

Can't play the medias? Download Flash Player.

素描・版画
18世紀

執筆:
Boyer Sarah

かつてゴンクール兄弟が所蔵しており、弟のジュールが版画におこしたことでも有名な素描《フローラ》は、当時ヴァトーが滞在していたクロザ邸館の食堂のための「四季」をテーマとした装飾絵画の一つ、《春》のための準備習作に当たる。《フローラ》は、ヴァトーが時折描いていたジャンルである、大型の裸体習作の初期作品の一つである。当時、神話的主題が取り上げられることは稀になっており、アントワーヌ・コワペル以降、形態やモデリングや肌合いへの感性を次第に高める裸体を描く格好の口実としてしか用いられなくなっていた。

魅力的な少女

「四季」連作の中の3枚は、裸体画および楕円形の形態にまつわる問題を提起している。ゼフュロスに冠をかぶせられたフローラは、雲に乗り、遠近法に従って奥行きを強調して描かれている。 フローラは、絵でもデッサンでも、同じような姿態を示している。堂々としたプロポーション、充実した形態、白のアクセントがこうした裸体の特徴であり、脚を伸ばし、上体を傾けていることによって官能性が高められている。居心地悪そうに組まれた脚はぎこちなく、ゼフュロスと枠の形に合わせるために後から調整されることになるが、ヴァトーはここで柔らかく自由な筆遣いを存分に発揮している。こうした輝かんばかりの絵画的な描法が、ティツィアーノに想を得た《化粧する女》(ウォーレス・コレクション)を思い起こさせるのに対し、髪や肌や衣襞に用いられている青と白の色調は、絵の銀色の調子とともにヴェロネーゼ風の色彩である。ややぽってりとした2人の女性は、ヴァトーの晩年に典型的な細身の人物像とは対照的な理想を示している。

熱いけれども曖昧な眼差し

この「四季」連作のための準備習作は、この装飾事業の常ならぬ規模の大きさを示している。ヴァトーの《フローラ》は、コワペル、ブーロンニュ、ラ・フォッスといった年長の同年代人の裸体画を思い起こさせる。ヴァトーは、年長の画家たちと同様に、こうしたタイプの習作によく使われる黒チョークと白チョークを用いた。ここでは、白がドレープの襞を輝かせ、最も暗い陰影の部分に加えられたサンギーヌのほんの数カ所のタッチが、頭部や手や足に温かみと赤みを与えている。ヴァトーは決してペンを使わず、光を導入するために色で染められた紙を用いた。ヴァトーの女性像のダイナミックな身振りは、ヴァトーの師匠たちのより無味乾燥で生気のない習作とは一線を画している。クロザ邸館の装飾事業に積極的に携わった、ラ・フォッスのアカデミックな作風にまず想を得たヴァトーは、制作途上で習作を、仰視遠近法によりふさわしい、より生き生きとした作品にすっかり変えた。2枚の素描が示すように、ラ・フォッスは、ゼフュロスとフローラによって春を擬人化したが、ラ・フォッスの作品は、ヴァトーのそれとは顕著に異なっている。

制作年は?

光り輝く効果と肌の色を表わす、三色のチョークの組み合わせから生れた官能性は、《フローラ》に生気を与えている。フローラのポーズと絵画の左にわずかに描かれたゼフュロスとのつながりに、優しさが垣間見える。ドレープの配置や一杯になった籠、しなやかでくつろいだ様子は絵画には見られるものの、習作には見られない。構図の巧みさ、着想の大胆さ、劇的な照明効果や顔の鋭い線描は、ヴァトーの円熟ぶりを物語っているが、「四季」連作の制作年代を正確に決定することはできない。ヴァトーは、アカデミーの準会員になってほどなく、ラ・フォッスに注目された1712年以降に「四季」連作の制作に着手し、クロザがイタリアから帰国した1716年におそらく完成したものと思われる。次いで、ヴァトーが《シテール島の巡礼》(INV. 8525)を完成した1717年にこの連作を補完したのは間違いないであろう。フローラの姿態に見られる力強さと優美さの調和的な結びつき、素描の筆遣いや技法から、後期の作品であろうと推定される。

出典

- GRASSELLI  Margaret Morgan, Watteau 1684-1721, cat. exp. Washington, National Gallery of Art, Paris, Galeries nationales du Grand Palais, Berlin, Charlottenburg, 1984-1985, pp. 183-184, n 105.

- MOUREAU François, GRASSELLI Margaret Morgan, Antoine Watteau (1684-1721) : le peintre, son temps et sa légende, colloque international, Paris, Grand Palais, 1984, Genève Paris, Éditions Clairefontaine, 1987.

- ROSENBERG Pierre, PRAT Louis-Antoine, Antoine Watteau 1684-1721 : catalogue raisonné des dessins, Milan, Leonardo arte, 1996, pp. 1014-1015, n 596.

- PLAX Julie Ann, Watteau and the cultural politics of eighteenth-century France, Cambridge ; New York ; Melbourne [etc.], Cambridge University Press, 2000.

En savoir plus :

- BAILEY Colin B., CONISBEE Philip, GAEHTGENS Thomas, Au temps de Watteau, Chardin et Fragonard, cat. exp. Ottawa, musée des Beaux-Arts du Canada, Washington, National Gallery of Art, Berlin, Staaliche Museen zu Berlin, 2003-2004.

- ROSENBERG Pierre, Des Dessins de Watteau, Tokyo, Chuo-koron Bijutsu shuppan, 1995.

- ROSENBERG Pierre, Watteau et son cercle dans les collections de l'Institut de France, cat. exp. Chantilly, Musée Condé, 1997.

- TEMPERINI Renaud, Watteau, Paris, Éditions Gallimard, 2002.

- VIDAL Mary, Watteau's painted conversations : art, literature, and talk in seventeenth-and eighteenth-centuries France, Londres, New Haven, Yale university press, 1992.

- WINTERMUTE Alan, BAILEY Colin B., ROSENBERG Pierre, Watteau and his world : French drawing from 1700 to 1750, cat. exp. New York, Frick collection, Ottawa, National Gallery of Canada, 2000.

作品データ

  • アントワーヌ・ヴァトー(ヴァランシエンヌ、1684年-ノジャン=シュル=マルヌ、1721年)

    《フローラ》

    1712-1717年

    エドモン・ド・ゴンクールとジュール・ド・ゴンクールのコレクション、イザック・ド・カモンド・コレクション、1911年にルーヴル美術館に遺贈

  • 淡黄色の紙に黒チョーク、サンギーヌと白のハイライト

    縦32.60 cm、横28.30 cm

  • Collection Edouard et Jules Goncourt ; collection Isaac de Camondo ; legs en 1911

  • 素描・版画

    保存上の理由により、当部門の作品は常設展示室では展示されていません。

来館情報

ルーヴル美術館 パリ フランス
地下鉄:1番線または7番線、Palais-Royal Musée du Louvre 駅
 
開館時間
月・木・土・日:9時-18時
水・金:9時-21時45分(夜間開館)

休館日:毎週火曜日、1月1日、5月1日、12月25日
 
 

チケットを購入する