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作品 《レースを編む女》

絵画部門 : オランダ絵画

《レースを編む女》

© 2007 Musée du Louvre / Angèle Dequier

絵画
オランダ絵画

執筆:
Collange Adeline

前方に置かれた本は聖書に違いあるまい。それによって、モデルの作業は宗教色を帯びた伝統的かつ道徳的な雰囲気の中で行われているが、女性(かつて根拠なくフェルメールの妻だとされたが、そうではない)は縫子の作業着を身に着けてはいない。左側に置かれた見事な色彩のクッションは、裁縫の小道具を片づけるための道具入れである。モデルの集中力と明るい灰色の背景によって強められた色彩の演出が素晴らしいフェルメールの傑作である。

道徳と日常

ルノワールは、ルーヴル美術館に1870年に収まったこの傑作を、同じくルーヴル所蔵のヴァトーの《シテール島の巡礼》と共に、世界で最も美しい絵画と称していた。間違いなくデルフトの小ブルジョワ階級に属すると思われる一人の若いレースを編む女が、身をかがめて、作業台の上で糸巻き、留めピン、糸を熱心に操っている。オランダ文学や絵画の中で(とりわけカスパル・ネッチェルによって)幾度も扱われてきたレースを編む女の主題は、伝統的に、家事をする女性の美徳を描くものであった。前景に見受けられる小さな本は、確かに聖書であり、絵画の持つ道徳的かつ宗教的解釈を強調している。一方でこの作品は、かの有名な《牛乳を注ぐ女》(1658年頃、アムステルダム国立博物館蔵)と同様、フェルメールを魅了した日常世界への深い沈潜を表したものでもある。画家は、自分を取り巻く慣れ親しんだ物を観察し、作品の中でそれらを組み合わせることを好んだ。同じ背の低い家具や葉模様のオランダ絨毯を、フェルメールの他の複数の作品においても見出すことができる。

甘美な親密さ

絵から発されている深い親密感は、作品の小さなサイズ(フェルメールによって描かれた最も小型の作品である)と、人物を中心とした枠取りに起因している。デルフトの巨匠の天分は、観察する人間の目そのものが作り出す自然な視覚の歪曲を、作品の中に複数の奥行きを作りだしながら再現していることだ。たとえば、我々の注意の集中する点である、レースを編む女が作る綿密な作品や、とりわけ女性の指の間に張られたきわめて細い白い糸は、非常な緻密さで細部が表現されいる。逆に、視覚の中心部から遠ざかると、前景に配されているにもかかわらず、描かれているものの形はよりぼやけて見える。裁縫道具入れのクッションからはみ出している白と赤の糸にはそうした緻密さはいっさいない。それらは抽象に近く、もつれ合う絵の具の流れとも言うべきものだ。澄んだ色彩の「点描画法」の小さな点で描かれた布地も、この視覚をぼやけさせる現象に与っている。フェルメールの最大の特徴でもある、絵に描かれた宝石のような色彩の調和はヴァン・ゴッホを魅了し、ゴッホは、1888年にエミール・ベルナールに宛てた手紙の中で、「レモン色、ほのかな青色、パールグレーの配置」の美しさについて書き留めている。

光の静かな詩

しかしながら、モデルのすぐ近くにいるという感覚とは裏腹に、我々がレースを編む女の世界に実際に入り込むことは不可能である。垂れ布、裁縫クッション、小卓などがひとまとまりになって我々を彼女から引き離し、右手で隠された彼女の作品を見ることは出来ない。フェルメールの作品には皆、この「静寂の詩」が備わっている。それによって、我々には無縁の世界の中で、また、描かれた物の上に細かい光の粒となって付着する、撫でるような優しい明るさの中で、そして、親密であると同時に手に取ることのできない瞬間において、人物像は動き回っているように見えるのである。

出典

- ARASSE Daniel, Le Détail : pour une histoire rapprochée de la peinture, Flammarion, Paris, 1992, pp. 199-201.

Ben Broos, Arthur K. Jr WheelockJohannes Vermeer, catalogue de l'exposition, Washington, National Gallery of Art. 1995-1996, La Haye, Koninklijk Kabinet van schilderijen Mauritshuis, Flammarion, Paris, 1996, pp. 176-179.

作品データ

  • ヨハネス・フェルメール、もしくはヤン・フェルメール(デルフト、1632‐1675年)

    《レースを編む女》

    比較的後期(1669‐1670年頃)の作品

  • 油彩 板の上に画布

    縦24cm、横21cm

  • 1870年、ヴィス・ブロックフイゼンによる売り立てにて取得

    M.I. 1448

  • 絵画

来館情報

ルーヴル美術館 パリ フランス
地下鉄:1番線または7番線、Palais-Royal Musée du Louvre 駅
 
開館時間
月・木・土・日:9時-18時
水・金:9時-21時45分(夜間開館)

休館日:毎週火曜日、1月1日、5月1日、12月25日
 
 

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作品の補足情報

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