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作品 《丸眼鏡の自画像》

素描・版画部門 : 18世紀

Sceau-cylindreTroupeau autour de l'étable

© 2003 Musée du Louvre / Christian Larrieu

素描・版画
18世紀

執筆:
Boyer Sarah

1771年のサロンで、シャルダンは衆目を驚かせた。シャルダンの健康上の不安はつとに知られており、シャルダンが絵を描くことを断念したと信じていた者もいたのだが、そうした中でシャルダンの三枚のパステル画はセンセーションを巻き起こした。暗い青の地に、斜め前を向き、頭をかしげ、白い縁なし帽をかぶり、褐色の目で丸眼鏡越しにこちらを探り、スカーフを首に巻いたシャルダンは、褐色の室内着をはおっている。ここでのシャルダンの眼差しには、1775年の《帽子の庇(ひさし)のある自画像》(ルーヴル美術館)より力があり、シャルダンは一時中断して対象から目を逸らしている。

素描でもなく絵画でもなく

顔料を粉末に砕き(鉛のベースに油を混ぜると目にしみる)、媒剤と混ぜ合わせることによって目を痛めながらも、シャルダンがパステルの肖像画と自画像とともに新しい溶媒と主題を取り入れたのに対し、当時のパステル画家カッリエーラ、ラ・トゥール、ペロノー、リオタールらは、肖像画の分野のみにとどまっていた。シャルダンのパステル画は、しばしばカンヴァスに貼り付けられている。シャルダンのパステルの性質は、ラ・トゥールのそれとは異なる。シャルダンは、描線をそのまま残し、パステルの魅惑的な滑らかさを拒否した。シャルダンは、後年になってパステルを用いるようになったため、多彩に、そして絵画的に描く方法を創意工夫しなければならなかったのである。頭部と上着を鮮やかに描き出すサーモン・ピンクと青のニュアンスの選択と配置に、シャルダンの並々ならぬ自由な表現がうかがえる。ここでは、ぼかしのない広い色面が並置され、鋭い明確なアクセントがほどこされることによって、人物に彫刻のような堅固さが与えられている。多様なニュアンスの個々のハッチングとタッチがシャルダンの手つきを反映するこうした大胆な技法によって、アカデミックな伝統が称賛してきた滑らかに仕上げるやり方に終止符が打たれたのである。

プルースト家の方へ

「馬鹿でかい鼻眼鏡が鼻の先までずり落ちていて、その鼻の先を真新しい2枚の円いガラスではさみつけているのだけれど、鼻眼鏡の上の方では、疲れた瞳が、光の消えた眼球の上端までつりあがっている。もう充分見たし、からかったし、愛したといった様子で、虚勢を張った、ほろりとさせるような口調で『そうさ、私も年をとったよ』とでも言っているような風情である。彼の瞳は、年のせいで光の消えたやさしさに蔽われているけれども、そのやさしさの奥では、まだ何か燃えあがっているものがある。だけどくたびれたまぶたは、使い過ぎた留め金みたいに、縁の方が赤くなっている。体を包んでいる古びた服と同じように、彼の肌も硬くこわばってとうに盛りを過ぎている。でもその布地と同じようにまだ薔薇色の色合いを保っているし、その色合いはいっそう生き生きとしているほどだ。そしてところどころ、金色を帯びた真珠色に染まっている。そしてあるものの衰弱損耗は、いつだって別のあるものの衰弱損耗の色調を呼び起す。[…]限りなく繊細で、豊かで、甘美な色調だ。われわれが見てびっくりするのは、口元の皺が眼の開き具合にいかに正確に支配されているかということなのだが、鼻の皺もこの眼の開き具合に応じている。肌に出来たほんのちょっとした皺も、静脈のほんのわずかな浮き上がりも、性格と人生と現に味わっている感情という、互いに応じあう三つの根元的なものを、実に忠実に実に興味深く描き出しているのだ。」

雪崩のごとき色彩

親密で心理的なシャルダンの自画像は、その沈黙と知的な奥深さによって、シャルダンの芸術の中でも最も驚くべき様相を呈している。自己に集中し自信に満ちたシャルダンは、落ち着いた青と灰色によってやわらげられた暖かいばら色と赤色のスカーフをこれ見よがしに身に着けている。こうした色調は、上着のマティエールにも浸透し、顔のいくつかの部分にも反映している。思いがけない色彩の斑点―ばら色の下の青―が、絵画の表面に生彩と統一感を与える。こうした斑点は、慎重に配置された陰影と戯れ、この肖像画に実在感を与えている。このパステル画では、色調の真の美しさが、肖像画のいくつかの滑稽さをも和らげている。ここで芸術家は、真実と率直さをもって、そして色彩を常ならぬやり方で組み合わせることによって、自己を描くとともに、自身の芸術をも描き出したのである。

出典

- DERRIDA Jacques, Mémoires d'aveugle : l'autoportrait et autres ruines, cat. exp. Paris, musée du Louvre, 1990-1991 (notice 18, Y. Séverac).

- ROSENBERG Pierre, Chardin, catalogue d'exposition, Paris, Galeries nationales du Grand Palais, Düsseldorf, Kunstmuseum et Kunsthalle, Londres, Royal Academy of Arts, New York, The Metropolitan Museum of Art, 1999-2000, pp. 324-325, n 96.

En savoir plus

- Künstler im Spiegel einer Sammlung, Graphische Bildnisse von Malern, Bildhauern und Kupferstechern aus dem Porträtarchiv Diepenbroick, cat. exp. Münster, Westfälisches Landesmuseum fur Kunst und Kulturgeschichte, 1997.

- DENK Claudia, Artiste, citoyen & philosophe : der Künstler und sein Bildnis im Zeitalter der französischen Aufklärung, Munich, W. Fink, 1998.

- EDIZEL Gerar, Jean-Simeon Chardin : seeing, playing, forgetting, and the practice of modern imitation, Ann Arbor (Mich.), UMI, 1998.

- Face à face : portraits d'artistes dans les collections publiques d'Ile-de-france, cat. exp. Mantes-la-Jolie, Musée de l'Hôtel-Dieu, 1999.

- ROLAND MICHEL Marianne, Chardin, Hazan, Paris, 1999.

- BARKER Emma, WEBB Nick, WOODS Kim, The Changing status of the artist, New Haven-Londres, Yale University press : Open University, 1999.

- HESS Daniel, Eitelkeit und Selbsterkenntnis : Selbstbildnisse des 17. und 18. Jahrhunderts im Germanischen Nationalmuseum, cat. exp. Nuremberg, Germanisches Nationalmuseum, 1999.

- RENARD, Portraits et autoportraits d'artistes au XVIIIe siècle, Tournai, La Renaissance du livre, 2003.

作品データ

  • ジャン・シメオン・シャルダン(パリ、1699-1779年)

    《丸眼鏡の自画像》

    1771年

  • パステル

    縦46 cm、横38 cm

  • ジャン=オーギュスタン・ド・シルヴェストル・コレクション、フランソワ=ルイ・グノ・コレクション、ブリュザール・コレクション、1839年にルーヴル美術館により購入

  • 素描・版画

    保存上の理由により、当部門の作品は常設展示室では展示されていません。

来館情報

ルーヴル美術館 パリ フランス
地下鉄:1番線または7番線、Palais-Royal Musée du Louvre 駅
 
開館時間
月・木・土・日:9時-18時
水・金:9時-21時45分(夜間開館)

休館日:毎週火曜日、1月1日、5月1日、12月25日
 
 

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作品の補足情報

右下に署名と年記:chardin / 1771