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ホーム>作品と宮殿>コレクションと学芸部門>《人足》

素描・版画
19世紀

執筆:
Grollemund Hélène

この作品は、スペインの日常生活の変わらぬ一面を表わしている「F画帖」の中の一枚である。この素描ほど、孤独と打ちひしがれた様を強烈に描き出したものはない。この人物が無名であることは、人物のシルエットを隠す濃い影によって強められているが、人足のシルエットを二つに折り曲げているボリュームのある包みに関心を集中させることで、ゴヤは、見たところ月並みな場面にきわめて劇的な性格を与えている。したがって、この場面を人間の運命の象徴と解釈することができる。 

私的な画帖

ゴヤは、生涯の最後に至るまで、社会的主題や政治的諷刺を扱ったきわめて多数の素描を画帖に描き、こうした画帖を私的な秘密めいた日記代わりにした。ルーヴル美術館所蔵の別の2枚の素描(《寡婦》[RF38980]と《風景の中の男女》[RF40989])と同様、この素描も「セピア色の淡彩による画帖」と呼ばれる「F画帖」の中の最後の1枚であり、筆とセピア色の淡彩とで全て描かれ、それ以前の素描と違って一切キャプションがない。最初の19枚の素描には、蝋の垂れた跡を紙片で覆い隠している部分があるが、ゴヤはこうした欠陥を考慮しなかったたり、あるいはその作品中に組み込んだりした。素描のテーマは多岐に渡り、しばしば野外で展開する場面においてまとめられた、あらゆるタイプの人物像が描かれている。

多彩なテーマ

人足のテーマ自体は、画帖の別の素描にも見られるが、ゴヤはここで、上半身の影と体に映った影、そして背負った重荷でほとんど隠され、さらにごくわずかな唯一の染みでニュアンスが付けられているだけの、たった一人の人物像を描き出している。ここでは、アンニーバレ・カラッチ(1560-1609年)の原画《ボローニャの街の叫び》に基づいたジュゼッペ・マリア・ミテッリ(1634-1718年)の版画や、永遠に蒼穹を支える役目を負わされたアトラスの神話が思い起こされる。また、おびただしい宮殿の装飾に欠かせない要素である、アトランテス(男像柱)の人物像に思いを馳せることもできる。庶民的な人物像と古代神話を同一視することは、《ロス・カプリーチョス》(カプリーチョス9《タンタロス》)ですでに古代神話を参照していたゴヤの作品においては驚くに当たらない。したがって、こうした素描を古代のテーマの「近代化」、すなわち出来事の具体的な現実性とそれに隠された悲劇的な感情の間にいわば象徴的な距離感を置くために、同時代の人物像に神話の典拠を重ね合わせていると解釈することができる。

普遍的な意味

ゴヤによく見られるように、隠喩はテーマや常識を普遍的な意味に変える。この人物像が神話から生まれたものであろうと、マドリードの野の単なる農民を描いたものであろうと、この人物像は、肩に重荷を背負った人間の条件の象徴であり続けるのである。白地にくっきりと描かれ、濃色の重げなマッス(塊)から浮かび上がる唯一の人物像は、この重荷の空しさ自体の隠喩である。もっとも、この重荷自体が、影が投げかけられている余白の中の染みに溶け込んで、実際には重みを感じさせない。ここでは、とりわけフェルディナンド7世(1784-1833年)治世下において痛ましさをきわめた人間の条件の悲惨さの前に、ゴヤのペシミズムが透けて見える。この素描では、他にも増して、日常生活の鋭い観察に、歴史に対する悲劇的意識が交錯している。ゴヤは、マドリード近郊にあった自宅ラ・クィンタ・デル・ソルドの壁を覆った同時期の《黒い絵》において、こうした悲劇的意識を一層内密に反映している。

出典

- BARJOT-FAUX Véronique, GREENAWAY Peter (dir.), Le Bruit des nuages, cat. exp. Paris, musée du Louvre, 1992-1993, Éditions de la Réunion des musées nationaux, coll. "Parti pris", Paris, 1992, n 2.

- BOUBLI Lizzie, Inventaire général des dessins, école espagnole, XVIe-XVIIIe siècle, Éditions de la Réunion des musées nationaux, Paris, 1984, n 199.

- SERULLAZ Arlette, Acquisitions du Cabinet des dessins : 1973-1983. 81e exposition du Cabinet des dessins, cat. exp. Paris, musée du Louvre, 1984, Éditions de la Réunion des musées nationaux, 1984, n 158.

作品データ

  • フランシスコ・ホセ・デ・ゴヤ・イ・ルシエンテス(フエンテ・デ・トードス、1746年-ボルドー、1828年)

    《人足》

    1812-1823年頃

  • すかし筋の入った白地の紙に、黒チョークの輪郭線。その上にスクレイパー(三角刀)、筆とセピア色のインクの淡彩

    縦20.3 cm、横14.3 cm

  • 1828年にゴヤの息子、ハヴィエル・ゴヤ・イ・バエウ。1854年にマリアノ・ゴヤ・イ・ゴイコエチェア。1855-1860年頃にフェデリコ・デ・マドラソと(ないしは)ロマン・ガレッタ・イ・ウエルタ。パリ、ポール・ルバ。1877年4月3日にオテル・ドルーオで公開競売(59番)。モーリス・ド・ブルノンヴィル男爵、1885年2月16-19日にパリでブルノンヴィルの公開競売(49番)。パリ、エミール・カランド、1899年12月11-12日にパリでエミール・カランドの公開競売(70番)。ジャック・デュブール、1982年に相続税の代わりにルーヴル美術館に代物弁済

  • 素描・版画

    保存上の理由により、当部門の作品は常設展示室では展示されていません。

来館情報

ルーヴル美術館 パリ フランス
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開館時間
月・木・土・日:9時-18時
水・金:9時-21時45分(夜間開館)

休館日:毎週火曜日、1月1日、5月1日、12月25日
 
 

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