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ホーム>作品と宮殿>コレクションと学芸部門>《嵐の中の難破を見つめるラップランドの魔女》

La sorcière de Laponie observant un naufrage dans la tempête

素描・版画
18世紀

執筆:
Boyer Sarah

ルーヴル美術館に唯一切り離されて所蔵されている、驚くほど近代的なこの素描は、ルーヴルのコレクションにある5冊の画帖とともに、ロムニの多様な素描技法についての適切な考えを与えてくれる。ここではロムニは、褐色インクの淡彩を用いて、荒れた海、猛り狂う水面と空、船とその船員の遭難を表わしているだけでなく、鋭いペン遣いで、マントに風をはらみ、突き出た岩の上で縮こまり、拳を握り締めた魔女の持つ力も描き出している。

魔女

きわめて近代的で幻想的なこの素描は、画家の息子ジョン・ロムニ師が1818年にケンブリッジのフィッツウィリアム美術館に寄贈した、似通ってはいるが逆向きの2枚の習作と同じ主題を扱っている。ロムニが1775年にローマから帰国して以来、魔女のいる場面をとりわけ好むようになったことから、こうした作品はおそらく1780年頃に制作されたものと推定される。ロムニのこのテーマへの関心は一生涯続いた。ロムニは、とりわけ1789年以降、『マクベス』に想を得て洞窟の魔女を描いた何枚もの習作で、このタイプの場面を再び取り上げる機会を得る。その上、ロムニの息子が語ったところによれば、この淡彩の連作は、父ロムニがとりわけ好んだ素描であり、黒チョークによる大型のカルトン(下絵)のためのかなり完成度の高い習作であった。ロムニの庇護者ウィリアム・ヘーレーによれば、このカルトンは、1804年のアトリエの引越しの間に折悪しく消失したと言う。

謎めいた主題のために

どの典拠から取られたのか、また深い意味合いは何かといった点において不可解なところのあるこの素描は、嵐の最中の船の遭難を表わしており、そこに難破を引き起こした当の魔女が悦にいった様子で居合わせている。こうした場面は、魔女が悪徳の象徴として現われる、ミルトンの『失楽園』のエピソードを参照しているとも考えられる。しかし、この場面は、1767年にコペンハーゲンでデンマーク語とラテン語で出版された『ラップランドの頌歌』から取られた可能性もある。ノルウェイの詩人修道士クヌド・レーム(1697-1774年)は、エリック・ヨハンネス・イェセンス(1697-1774年)の助力を得て、この著書で版画を裏付けとして、ラップランド人の宗教的慣習、異教の儀式と信仰を研究した。当時ラップランドという言葉は、北欧のどの国も指していたが、この著作はラップランド文明に関する唯一の本であり、幾度の旅行を経た後、1767年に初版が刊行された。1771年にライプツィヒで第2版が刊行され、1778年には『ザ・スペクテイター』誌に翻訳が出版されている。

「崇高」と「恐怖」

シェイクスピア、ミルトン、グレイ、オウィディウスやアイスキュロスから取った文学的主題に親しんでいたロムニは、鉛筆で描いた子供っぽいクロッキーや、この素描の例のような淡彩の洗練された試作によって、選んだ場面を描き出した。ロムニは、描かれた主題に完璧にふさわしい技法を用いている。実際、褐色インクの淡彩を重ね塗りしたかあるいは一塗りしたものが、組み合わさったり、対照をなしたりして、波のうねり、暗い空、船員のシルエットが見える船を暗示しており、時に自由な書画風の描き方に変化している。逆にロムニは、鋭いペンによって魔女の横顔のみをくっきりと描き出している。岬に上ったこの魔女は、こうしてあらゆる力を表わしている。それ以来、こうした強力なイメージは、ロムニの素描を、幻想性においてブレイクに近く、大きな陰影面を用いることにおいてカズンズに近い、「当時のイギリス美術において全く新しい『崇高』と『恐怖』の例」と書き記したフラクスマンの主張を裏付けている。

出典

- CROSS David A., A Striking Likeness : The Life of George Romney, Aldershot, 2000.

- HAUPTMAN William, L'âge d'or de l'aquarelle anglaise, 1770-1900, cat. exp. Lausanne, Fondation de l'Hermitage, 1999, p. 48, n 10.

- JAFFE Patricia, Drawings by George Romney : Fitzwilliam Museum, Cambridge, cat. exp. Cambridge, Fitzwilliam Museum, 1977.

- KIDSON Alex, George Romney, cat. exp. Liverpool, Walker Art Gallery, Londres, National Portrait Gallery, San Marino, Huntington Library, 2002.

- MUNRO Jane, Shakespeare and The Eighteenth Century, cat. exp. Cambridge, Fitzwilliam Museum, 1997, pp. 5-9.

- PRESSLY L., The Fussli Circle in Rome. Early Romantic Art of the 1770s, cat. exp. New Haven, Yale Center for British Art, 1979, pp. 118-127.

- ROBERTS Jane, D'Outre-Manche : l'art britannique dans les collections publiques françaises, cat. exp. Paris, musée du Louvre, 1994, p. 274, n 177.

作品データ

  • ジョージ・ロムニ(ダルトン=イン=ファーネス、1734年-ケンダル、ウェストモーランド、1802年)

    《嵐の中の難破を見つめるラップランドの魔女》

    1775-1780年頃

  • 鉛筆の描線に、ペン、褐色インク、筆、褐色の淡彩

    縦0.293 m、横0.501 m

  • ポール・プルーテ画廊、1991年に取得

  • 素描・版画

    保存上の理由により、当部門の作品は常設展示室では展示されていません。

来館情報

ルーヴル美術館 パリ フランス
地下鉄:1番線または7番線、Palais-Royal Musée du Louvre 駅
 
開館時間
月・木・土・日:9時-18時
水・金:9時-21時45分(夜間開館)

休館日:毎週火曜日、1月1日、5月1日、12月25日
 
 

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