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作品 《左斜め前を向き、腕を組んだ女の半身像》

素描・版画部門 : 16世紀

Femme en buste, de trois quarts vers la gauche, les bras croisés

素描・版画
16世紀

執筆:
Mancini Federica

この素描に表われているのは、レオナルド・ダ・ヴィンチ、とりわけその《モナ・リザ》の肖像に対してラファエッロが抱いていた称賛の念である。ウンブリア地方の芸術家であるラファエッロがフィレンツェの画家レオナルドの作品を知ったのは、自身の師匠であるとともに、ヴェロッキオ門下でレオナルドの兄弟弟子であったペルジーノを通してであった。しかもラファエッロは、実際にフィレンツェでその作品に直に接することができたのである。《モナ・リザ》の作者に対する敬愛の念は、もちろんこの素描を単なる模写で終わらせることはなかった。それと言うのも、《女の半身像》は、レオナルド風人物モデルを個性的な解釈によって綜合した作風を表わしているからだ。

「ロンバルディア結い」

左斜め前を向いた《女の半身像》は、鑑賞者の方を見ている。女は腕を組んで手すりにもたせかけている。衣裳は細部に至るまで描き込まれており、その髪型は、「レンツァ・ロンバルダ(ロンバルディア結い)」の名で知られ、1510年までロンバルディア地方で用いられていた代表的なものである。部分的に見えている二つの円柱が肖像を取り囲んでおり、そのため肖像は垂直に並ぶ線に挟まれつつ、そこから際立って見える。人物像は、背景の広々とした戸外の空間からも浮き出て見える。なお風景は、左にある木立の粗描、および右の建物のクロッキーによって簡略に示されている。

ラファエッロ独自の《モナ・リザ》

素描が完成した状態であるのは、ラファエッロの作法としてはめずらしい。というのも、ラファエッロは素描を研究の場、すなわち変化の途上にある習作と見なしていたからである。最近になって、新しい絵がこの画家の作として加えられた。それは《コスタンツァ・フルゴーゾの肖像》(個人蔵)で、そのポーズ、ドレス、髪型のタイプのどれもが、この素描と同じである。この発見により、ルーヴルの素描が特定の絵画作品のためのものであったことがさらにはっきりと理解でき、それが同時に、素描が完全に仕上がっていることの説明ともなっている。一見、《モナ・リザ》との関わりがあるように見えることも、《女の半身像》の制作年を定めるために十分な要素であるとは言えない。なぜなら、ラファエッロはレオナルド・ダ・ヴィンチの行った研究に、生涯を通じて感銘を受け続けていたからである。ラファエッロは1504年にフィレンツェに向けて発ち、1508年頃にローマへ出発するまで、そこに留まる。この滞在は、ラファエッロがフィレンツェ美術を知るためにきわめて重要であった。フランスにある作品のうちで最も美しい素描の一つとされる《女の半身像》は、この時期に描かれたものであり、同時期にラファエッロは、《バリオーニの祭壇画》(《死せるキリストの哀悼》の素描はルーヴル蔵)、および《一角獣を抱いた婦人像》(ローマ、ボルゲーゼ美術館)の制作を行っていた。

称賛の念が生んだ傑作

ジョルジョ・ヴァザーリによると、レオナルドの素描を見ることができるかもしれないということが、若いラファエッロをフィレンツェ行きに駆り立てた理由であった。年代記作者ヴァザーリは、二人がまったく違う芸術家であると確信していた。と言うのも、『画家・彫刻家・建築家列伝』の中でヴァザーリは、いくつかの制作上の難問を解決する上で、ラファエッロが決してレオナルドを凌駕することがなかったとして、レオナルドの方をより高く評価しているからだ。とは言え、この素描は、ラファエッロがレオナルド風の人物モデルを深く知り抜いていたことを示しており、そのモデルを用いたこの作品は、それ自体が傑作となっているのだ。光の描写、技巧の精確さ、そしてハッチングにより表現された空間の配置には、レオナルドに対する尊敬の念が表われ出ている。また、そこにはさらに顔の部分の力強く闊達な描線が加わり、その類いまれな技巧の高さから、肖像素描家であるラファエッロの「色を使わずして描く画家」との別名が生まれることとなった。また、レオナルドの影響は若いウンブリアの画家の描法にも変化をもたらすことになる。すなわち、ラファエッロは柔らかい描線を用いるようになるのである。二人の画家が1513年にローマで出会った際には、レオナルドは、教皇ユリウス2世がラファエッロを重用していたことから、ラファエッロに道を譲り、三年後には《モナ・リザ》を携えてフランスへと向かうのである。

出典

- FISCHEL Oskar, Raphael, Londres, 1948.

- LUCCO Mauro, "A new portrait by Raphael and its historical context", in Artibus et Historiae, 41, XXI, 2000, p. 49-73.

- VASARI Giorgio, Le Vite de' più eccellenti Pittori, Scultori ed Architettori, Florence, 1568, traduction française d'André Chastel, Paris, 1981-1989, 12 vol.

- VIATTE Françoise, Raphaël dans les collections françaises, cat. exp. Paris, Galeries nationales du Grand Palais, Éditions de la Réunion des musées nationaux, 1984, notice 50.

- VIATTE Françoise, Léonard de Vinci : Dessins et manuscrits, cat. exp. Paris, musée du Louvre, Éditions de la Réunion des musées nationaux, 2003, p. 190-192, notice 62.

作品データ

  • ラファエッロ・サンティ、通称ラファエッロ(1483-1520年)

    《左斜め前を向き、腕を組んだ女の半身像》

    1505-1507年頃

  • ペンおよび褐色インク、黒チョークによる描線の跡

    縦22.2 cm、横15.9 cm

  • エヴァーハルト・ヤーバッハ・コレクション、1671年に国王美術品蒐集室に収蔵

  • 素描・版画

    保存上の理由により、当部門の作品は常設展示室では展示されていません。

来館情報

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