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作品 《微笑む若い女の肖像》

素描・版画部門 : 16世紀

Portrait de jeune femme en buste, souriant

素描・版画
16世紀

執筆:
Boyer Sarah

ホルバイン(子)のものとされる作品のうち、数少ない素描肖像画であるこの絵は、ほぼ正面向きの若い女の胸像を描いている。女は髪を三つ編みにしているが、少しほつれている。女は、肩を覆うドレスを身に着けている。ドレスの胸元には、その縁に沿って省略形のドイツ語でこう記されている。「ALS. IN. ERN. ALS. IN.(全き敬意の下に、あるいは全き敬意を表して)」女はその首に、聖アントニウスの記章のついた首飾りを誇らしげに下げているが、おそらくこれは、ペストに対する護符であろう。

「ドイツのモナ・リザ」

確かで精細な筆致の金属尖筆が、この眼と瞼を伏せ気味にした若い女の、肩の丸みを際立たせるとともに、頬のふくらみを立体的に描き出している。恥じらいがちな視線で、首を軽く傾げた女は、控え目で神秘的な微笑をたたえており、それはモナ・リザの微笑を思い起こさせずにはおかない。線描を用いる技巧は、作者の父、大ハンス・ホルバインの肖像画を思わせるが、表情の描出における新たな感性の表われと、確実な観察力とは、後に彼がイギリスで制作することになる三色のチョークを用いた肖像画を予見させるものである。

モデル未詳の肖像画?

この素描の写実的画法からは、ホルバインがこの習作のためにモデルを写生したことがうかがえるが、そのモデルが誰なのかについては、さまざまな推測がなされている。例えば、ある論者らはこの若い女の眼差しに、画家の妻エルスベット・ビンツェンストックが罹った眼病の直後の痕跡を見る。その病いについては、1528年から1529年にかけてのロンドン滞在の際に構想された感動的作品《画家の妻と二人の兄の肖像》(バーゼル美術館)に明らかである。一方、他の研究者は、やや説得力に欠けるものの、女の顔立ちに、《ラーイス・コリンティアカの肖像》(バーゼル美術館)のそれを見出している。

特徴的な技法

何はともあれ、金属尖筆とサンギーヌのハイライトを組み合わせた技法は、初期ホルバインの特徴をなしている。というのも、バーゼルの町を揺さぶった宗教紛争の後、ホルバインは1524年にフランスを短期間訪れており、そこでおそらく、クルーエの作品を堪能し得たに相違ないからである。以来ホルバインは、後の二度のイギリス滞在の間に描いた肖像画群の典型的な技法である三色のチョークを用いるようになる。さらに、鼻筋の上、唇の端、下瞼、左右の目尻、眉の上、そして鼻の左部分に施された白のグワッシュによるハイライトは、この女性像に柔らかみを与えている。なお、この素描は、ゾーロトゥルン市裁判所書記であったヨーハン・ゲルスターの注文により1522年に制作された、《ゾーロトゥルンの聖母》(ゾーロトゥルン市立美術館)のための習作であるが、ゴシック様式の伝統とルネサンスのイタリア的作風とを明らかに融合させているこの絵画作品の中では、聖母はやや異なった姿勢を取っており、頭を上げ、微笑みもより控え目である。

出典

- MAGNON Myriam, Dessins de Dürer et de la Renaissance germanique, cat. exp. Paris, musée du Louvre, Éditions de la Réunion des musées nationaux, 1991-1992, pp. 154-156, n 141.

- MULLER Christian, Dürer, Holbein, Grünewald : Meisterzeichnungen der deutschen Renaissance aus Berlin und Basel, cat. exp. Bâle, Kunstmuseum, Berlin, Staatliche Museen, 1997-1998, pp. 343-418, n 25 .1-25.32.

- MULLER Christian, From Schongauer to Holbein. Master Drawings from Basel and Berlin, cat. exp. Washington, National Gallery of Art, 1999-2000, pp. 350-424, n 161-191.

作品データ

  • ハンス・ホルバイン(子)(アウクスブルク、1497-1498年-ロンドン、1543年)

    《微笑む若い女の肖像》

    1522年以前

  • ピンク色に地塗りした紙に金属尖筆、ペンおよび黒インクでなぞった線、サンギーヌと白のグワッシュによるハイライト

    縦19.6 cm、横15.5 cm

  • エヴァーハルト・ヤーバッハ・コレクション、1671年に国王美術品蒐集室のために購入

  • 素描・版画

    保存上の理由により、当部門の作品は常設展示室では展示されていません。

来館情報

ルーヴル美術館 パリ フランス
地下鉄:1番線または7番線、Palais-Royal Musée du Louvre 駅
 
開館時間
月・木・土・日:9時-18時
水・金:9時-21時45分(夜間開館)

休館日:毎週火曜日、1月1日、5月1日、12月25日
 
 

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作品の補足情報

ブラウスの縁に金属尖筆による描き込み:ALS. IN. ERN. ALS. IN.