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作品 《微笑んでいる女の肖像》

素描・版画部門 : 16世紀

Portrait de femme souriante, coiffée d'un bonnet

素描・版画
16世紀

執筆:
Boyer Sarah

ルーヴル美術館のコレクションの中で唯一確実にグリューネヴァルトの作であるとされるこの素描は、正面向きの女の胸像を描いたものだが、 その表情は一風変っており、意外ですらある。肩は衣服で覆われておらず、顔の下部にはやや左右非対称な二重あご、薄い唇、際立った頬の窪み、秀でた眉弓(びきゅう)、頭部に巻かれたヴェールにより覆われた広い額、これらはいずれも、グリューネヴァルトが集中的に取り組んだ特徴的要素である。

「ドイツのコレッジョ」

残存するグリューネヴァルトの素描は、30作強あるかないかである。大部分は絵画作品のための準備作であり、大きく分けて、全体の構図の習作と、モデルに基づく部分習作に分類される。そのほとんどに黒チョークが用いられ、時に白のハイライトが施されていることから、グリューネヴァルトは「ドイツのコレッジョ」と呼び慣わされた。というのも、この素描に見られるように、グリューネヴァルトはデューラーとは逆に、輪郭線の厳密さにも、モデリングの堅固さにも無関心であったからである。一方、その素描家としての技巧は、一見気まぐれに用いられているように見える、さまざまに密度の異なる線条(ハッチング)や描線に現われ出ている。例えば、頭巾の左部分で何度も加筆を行っている神経質さに、左眼を同心円状に包み込み、立体感をもたらしている線描の緻密さが呼応しているのである。

人の表情の研究における先駆者

作者は描かれる人物の顔に意識を集中しており、その顔立ちの独特さを強調しようとしている。露わになった胸部、首、顔の仕上げ方の度合いはそれぞれ異なり、右を向いた伏しめがちの小さな眼は、半ば閉じている。かすかな微笑を示したこの女の表情は、女の左上方向にあるただ一つの光源が、その顔の下部のわずかな歪みを強調していることから、なおさら謎めいて見える。その顔つきの独特さ、ひいては奇妙さは、他の二つの、手を合わせた女の習作(オックスフォード、アシュモーリアン美術館、およびヴィンタートゥーア、オスカー・ラインハルト・コレクション)を思い起こさせる。これらは両者ともに、1512年から1515年の間に制作されたグリューネヴァルトの代表的作品であるイーゼンハイムの祭壇画のための習作である。したがって、これらの素描のためには、同じモデルがポーズを取ったはずである。最後に、デューラーが、とりわけそのオランダ滞在(1520-1521年)の際描いた肖像画において、人物の本物らしさと、同時にその社会的特徴を示そうとしていたのに対し、グリューネヴァルトは、その内的な生のかたちを描き出そうとしていたのだということを、指摘しておかねばならない。

写実主義から表現主義的形式へ

オックスフォードならびにヴィンタートゥーアの各素描との間に見られる実際的な類似、また、《聖セバスティアヌス》のための二つの習作(ドレスデン、銅版画室、および、ベルリン、銅版画室)との明らかな作風の類似から、そのイーゼンハイムの祭壇画との関連は疑うまでもなく、ルーヴルの素描は1512年から1515年頃の作と考えてよい。さらに、グリューネヴァルトが、レオナルド・ダ・ヴィンチのように、人の表情の研究に関する先駆者を自任していたとすれば、その人間の表情を率直に表現しようとする意志ゆえに、画家はしばしば、表情の歪みや醜さといったものに限りなく近づくことになったのである。例えば、マインツ大聖堂の聖アルバヌスの祭壇画(今日では消失)のための準備作である、《泣く子供の頭部》の二つの習作(ベルリン、銅版画室)は、緊張した、苦しげな面持ちを表わしている。これらの作品は、表現の荒々しさを特徴とする16世紀前半におけるゲルマン美術の根本的傾向を示しており、同様の傾向は、ルーカス・クラナッハによる二つの盗賊の習作(ベルリン、銅版画室)にも見て取ることができる。

出典

- BERG Karen van den, Die Passion zu malen. Zur Bildauffasung bei Matthias Grünewald, Duisburg, pict. im, 1997, pp. 92-98.

- KROLL R., Dürer, Holbein, Grünewald : Meisterzeichnungen der Deutschen Renaissance aus Berlin und Basel, cat. exp. Bâle, Kunstmuseum, Berlin, Staatlichen Museen, 1997-1998, pp. 176-194, n 11.1-11.7.

- KROLL R., From Schongauer to Holbein. Master Drawings from Basel and Berlin, cat. exp. Washington, National Gallery of Art, 1999-2000, pp. 212-234, n 92-99.

- RUHMER Eberhard, Grünewald Drawings, Phaidon, 1970, pl. 21, p. 88, n XVII.

- STARCKY Emmanuel, Dessins de Dürer et de la Renaissance germanique, cat. exp. Paris, musée du Louvre, 1991-1992, Éditions de la Réunion des musées nationaux, pp. 132-133, n 124.

- ZIMMERMANN H. (assisté d'E. Beissel), Matthias Grünewald, 2001.

作品データ

  • マティス・ゴートハルト・ニトハルト、通称グリューネヴァルト(ヴュルツブルク、1470-1480年頃- ハッレ・アン・デア・ザーレ、1528年)

    《微笑んでいる女の肖像》

    1512-1515年頃 ?

  • 黒チョーク

    縦20.4 cm、横15 cm

  • エヴァーハルト・ヤーバッハ・コレクション、1671年国王美術品蒐集室のために購入

  • 素描・版画

    保存上の理由により、当部門の作品は常設展示室では展示されていません。

来館情報

ルーヴル美術館 パリ フランス
地下鉄:1番線または7番線、Palais-Royal Musée du Louvre 駅
 
開館時間
月・木・土・日:9時-18時
水・金:9時-21時45分(夜間開館)

休館日:毎週火曜日、1月1日、5月1日、12月25日
 
 

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作品の補足情報

左上に、ペンおよび褐色インクによるデューラーのモノグラム、真偽未詳