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ホーム>作品と宮殿>コレクションと学芸部門>《聖母子》

Vierge à l'Enfant

素描・版画
14-15世紀

執筆:
Grollemund Hélène

15世紀ドイツの非凡な画家、「マイスター・シュテファン・ツー・ケルン」(ケルンの画家ステファン)は、デューラーがそのオランダ旅行記の中で言及しているためにその名を知られている。その出身地はコンスタンツ湖周辺であり、シュヴァーベン地方の写実主義派らと同じ世代に属することがはっきりとわかる。だがその作品は、画家の第二の故郷ケルンの様式を完全に我が物としていることをよく示している。この《聖母子》から発している柔和さが、その特筆すべき例である。

新しい母と子のつながり

素描上部の左右両端は切り取られ、残った空間のすべてを聖母マリアと幼子イエスが占めている。聖母は腰掛けて、左手に、おそらくリンゴであろう小さな果物を持ち、右腕でキリストを抱いている。聖母は、床まで広がるゆったりとしたマントを羽織い、腰で絞ったドレスがその下に見えている。解かれた髪はふんわりと肩にかかっている。ふっくらと頬の丸い、幼い顔立ちのイエスは、母の右膝の上に立ち、左手を果物のほうへ差し出している。幼子が視線を上に向けているのに対し、聖母は首を軽くかしげ、物思いに耽っている様子でリンゴを見つめているようである。二人の人物が位置している場を特徴づけるような空間的要素は一切ない。ここで重きがおかれているのは、聖母マリアと幼子との間における、この上ない愛情と親密さにみちた関係なのである。超自然的なものは消え去り、代わって母と子の関係が現われ出てくるのであるが、この母子の関係は、彼らの頭上に光輪が存在しないこと、また、二人を結びつける緊密な構図により、さらに強調されている。

新しきアダムとしてのキリスト

聖母マリアの位置、そのリンゴの持ち方、そして幼子イエスのしぐさは、キリストの受難を思い起こさせる。地上に罪を出現させるリンゴは、キリストの贖罪主としての役割を示しているからである。新たなアダムとしてのキリストは、自らを犠牲にすることによって原罪を消し去るであろう。このキリストの受難との関連は、聖母マリアの瞑想に耽るまなざしによって強調されている。新しきエヴァとしての聖母マリアは、我が子が生まれた瞬間に、その運命を知るのである。

優美さ ―― ケルン派の骨頂

作風とテーマが似通っていることから、この素描はシュテファン・ロッホナーと密接に関連付けられた。すなわち、ケルン派の画風を思わせる若々しい聖母マリア、髪形によって際立たせられた丸く秀でた額、細い首、人物像の柔らかな立体感、幼子イエスの頬のふっくらとした丸み、大らかでありながら繊細な筆致で表現された、ゆったりした衣服などである。聖母マリアの様式は、ロッホナーとその周辺の画家らが多くの絵で繰り返し描いている《謙譲の聖母》のそれに似通っている。たとえば、《薔薇の茂みの聖母》、あるいは、ロッホナーのアトリエで制作された小さな祭壇画《小庭の聖母》(ともにケルン、ヴァルラフ=リヒャルツ美術館)などである。マントとドレスの折り目がやや情感に欠けるとは言え、評家はこの《聖母子》をロッホナー本人の素描とするか、さもなければ、少なくともこのケルン派の巨匠の作品を基に描かれた、非常に繊細な作品として認めるのである。

出典

- TÄUBE Dagmar, in Stefan Lochner, Meister zu Köln : Herkunft, Werke, Wirkung, catalogue de l'exposition, Cologne, Wallraf-Richartz Museum, 1993, notice 87.

作品データ

  • シュテファン・ロッホナー(メールスブルク、コンスタンツ湖畔、1400年頃-ケルン、1451年)

    《聖母子》

    1440年頃

  • 黒チョークおよび淡彩

    縦12.4 cm、横9.4 cm

  • サン=モリス・コレクション、1793年に亡命貴族の財産として接収の後、1796-1797年に中央美術館に収蔵

  • 素描・版画

    保存上の理由により、当部門の作品は常設展示室では展示されていません。

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