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ホーム>作品と宮殿>コレクションと学芸部門>《若い女の頭部》

Tête de jeune femme

素描・版画
16世紀

執筆:
Boyer Sarah

この作品は、1881年に初めて公表されて以来、異論なくパルマ・イル・ヴェッキオの作とされている数少ない素描である。ベージュ色の紙に黒チョークで描かれ、白のハイライトが施されたこの美しい習作は、巧みに髪を結い上げ、眼を上に向けた女を、ほぼ横から描いている。この絵は多少なりとも例外的な構図を取っており、肩元を示すような衣裳も線も存在しない。

モデルを写生した習作

モデルを写生した習作であるこの女の顔は、パルマ・イル・ヴェッキオの作風の特徴を示している。というのは、この画家は、部分習作にはチョーク(サンギーヌあるいは黒チョーク)を用いるのに対し、全体構図の作画にはペンとインクを用いるからである。さらに、はっきりした輪郭線にハッチングを組み合わせる作法は、顔を際立たせるために背景を黒く塗っているのと同様、この画家によるものであることを示している。この背景に施された塗りは、パルマ・イル・ヴェッキオの作法を特によく表わすものだ。黒チョークによる描線は、平行に、かつ綿密に考えられた秩序に従って配置されており、繊細かつしっかりと描かれた顔の豊かな輪郭と調和しているが、顔の輪郭は、右目部分におけるのちの加筆修正により、いくぶん乱れが生じている。しかしながら、中間色に白チョークによるハイライトを付加していること、ならびに髪の部分で黒チョークによる多少の強調を加えていることで、素描は完全なものに仕上がっているのである。

下絵の利用

絵画のための下絵であるこの女の顔は、ヴィチェンツァのサント・ステファノ教会の主祭壇にある《聖ゲオルギウスと聖ルキアに囲まれる聖母》における、聖ルキアの顔立ちとポーズを思わせる。またこの顔は、アルブレヒト・デューラーへの敬意を表した作品《アダムとエヴァ》(ブラウンシュヴァイク、ヘルツォーク・アントーン・ウルリヒ美術館)のエヴァ、あるいは、《キリストと姦淫の女》(サンクト・ペテルブルク、エルミタージュ美術館)の中の姦婦をも思い起こさせる。その顔立ちと光線の当たり方、ポーズと髪型からして、この素描の女はエルミタージュの姦婦により似ている。こうした特定の難しさから、推測できるのは次のようなことだ。すなわち、パルマはまずこの習作をモデルを写生して描き、それをアトリエの奥にしまっておいて、事あるごとにいくらか変更を加えつつ、幾度もそれを用いて描いたのに違いない、と。

異なる伝統の接点で

この、とりわけ明るく精緻な頭部の習作は、ジョルジョーネ、および若きティツィアーノの女性の理想像に、より簡潔な形を与えて表現したものだ。たとえ、顔の楕円形がより単純で、かつより幾何的であるとはしても、これが16世紀20年代までのヴェネチア派の女性の理想像を代表する一つの例であることに変わりはない。ティツィアーノの力強い作例を受け継ぎつつも、パルマははるかに慎重かつ、規律に従った作風を守っているように見え、決して同時代の大画家の、堂々たる開放的な画風へは到達していない。彫塑的な形を定め、典雅で理想的な自然さを表現することに心を砕きつつ、パルマは分析的かつ体系的に描いてゆく。その技巧によって、セバスティアーノ・デル・ピオンボの描く絵のような、豊満で、それでいて抑制された重みと質量感の効果を生み出すパルマの作風は、光とその視覚的効果への関心という点ではヴェネチア派の伝統に、また、その控えめな技法と、分析の明晰さの点では中部イタリアのそれに、多くを負っている。くっきりとした描線に見られる明らかな自信と、女のはっきりとした力強い眼差しからして、この素描をパルマの円熟期の初め、1520年から1522年頃の作と考えてよいであろう。

出典

- OBERHUBER Konrad, Le siècle de Titien : l'âge d'or de la peinture à Venise, cat. exp. Paris, Galeries Nationales du Grand Palais, 1993, notice 19.

- OBERHUBER Konrad, Tiziano Vecellio : amor sacro e amor profano, cat. exp. Rome, Palazzo delle Esposizioni, 1995, p. 213, 283 , notice 53.

- REARICK William R., Il disegno Veneziano del Cinquecento, Milan, Electa, 2001, pp. 71-82, 215-216.

- RYLANDS Philip, The Genius of Venice 1500-1600, cat. exp. Londres, Royal academy of Arts, 1983-1984, pp. 265-266, notice 32.

- RYLANDS Philip, Palma Vecchio, Cambridge, New York, Melbourne, Cambridge University Press, 1992, pp. 120, 251, n 3.

作品データ

  • ヤーコポ・パルマ・イル・ヴェッキオ(セリーナ、1480年頃-ヴェネチア、1528年)

    《若い女の頭部》

    1520年頃

  • ベージュ色の紙に、黒チョークおよび白のハイライト

    縦22.2 cm、横13.8 cm

  • エメ=シャルル=オラース・イス・ド・ラ・サル・コレクション、1878年に寄贈

  • 素描・版画

    保存上の理由により、当部門の作品は常設展示室では展示されていません。

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