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作品 《近衛騎兵隊の士官》

絵画部門 : フランス絵画

《近衛騎兵隊の士官》

© 1995 RMN / Hervé Lewandowski

絵画
フランス絵画

執筆:
Séverine Laborie

1812年のサロンが開催された折、ジェリコーは20歳であった。伝説によると、画家はサン=ジェルマンの土埃の舞う道で後脚で立ち上がった輓(ひき)馬に想を得たようである。ジェリコーは、古典古代、ルーベンス、彼の最初の師であるカルル・ヴェルネ、グロといった多岐に渡る影響を両立させ、独自のヴィジョンの体験によって生気を吹き込みながら、力強い統一感の中に結びつけることが出来る作家である。ジェリコーの歿後、作品はオルレアン公によって買い上げられた。

独創的な構図

斑紋のある逞しい灰毛の馬が、障害物の前で後脚で立ち上がり、汗を迸らせながらいきり立っているところで、恐怖で目は飛び出し、興奮した鼻孔は膨らんでいる。ジェリコーは、鞍の上にしっかりと動じずに跨っている騎手を描くために、猟馬兵の中尉である友人の一人、アレクサンドル・デュードネにポーズを取らしている。
構図のフレーミングは非常に狭められている。馬の姿が画面の右側に向かって上昇する対角線を描き、画面の幅全体を占めている。空もその対角線に沿って、黄昏と炎という2つの部分に分割されている。きわめて低い位置にある地平線が立体感の効果を強調し、まるで描かれた対象が観者に向かって投げ出されているかのようだ。左側では一人の騎手が軍隊の進行を告げているのに対し、猟兵は体を激しくよじり、剣を振り下ろして合図をしたところである。彼は部隊に向かって何か話しかけているように見えるが、一方でその眼差しがどこを見つめているのかは分からない。

ジャンルの革新

動いている馬のエネルギーと、内面化された騎手のエネルギーという、2つのエネルギーの間には対立関係が存在している。こちらを振り返っている騎手の姿は、騎馬像という月並みな主題を表わしているに過ぎないが、ジェリコーの主題の独創性は、こうしたぶつかり合うエネルギーの「対比」にある。ジェリコーは古代の石棺を多数模写したが、この将校の平然とした顔つきを描いた際に、それらの古代の英雄たちの毅然とした姿を思い起こしていたかのようである。『講義録』や『日記』の中で画家に対する称賛を繰り返し述べてきたミシュレは、それを敏感に察知して、次のように書いている。「彼は我々の方を振り返り、考える[…]。今度こそ死ぬに違いない。それがどうした。これ見よがしになることも諦めることもない。[…]」
英雄の持物(じもつ)として用いられている軍服は、装身具としての地位から近代的な主題の象徴としての地位へと変化している。ジェリコーはここに、物語の主観的な解釈を表明しているのだ。こうして画家は、特定の戦闘場面を描かずに、戦いの総合的なヴィジョンを示している。そこではただ一人の軍人が戦争の何たるかを要約し、騎馬肖像画と歴史画のジャンルを同時に刷新しているのである。

タッチ(筆触)の勝利

ジェリコーはこの作品によって、1812年のサロンにデビューしている。「勝利」とはならなかったものの、ジェリコーの独創性と力強い作風が注目を浴び、金賞を獲得した。しかしこの絵には、最初の出品の際も、1814年のサロンで対作品《傷ついた胸甲騎兵》(INV.4886)と共に再び展示された際にも買い手がつかず、ジェリコーは大変失望している。
ダヴィッドは作品を見て、その斬新さを指摘した。「この斬新さはどこから来るのか。このタッチには見覚えがない。」実際に、ジェリコーのタッチは、衝動的で大きく色彩豊かであり、ダヴィッドやゲランといった新古典主義の画家による質感のない上塗りの対極を成すものであった。こうしたタッチは、ルーベンス、ゲラン、グロといった画家の作品から受けたインスピレーションをよみがえらせ、個人的なヴィジョンを表現したものなのである。
ジェリコーが深く傾倒したグロは、1812年のサロンで、ジェリコーの猟兵とはかけ離れた《ミュラ元帥の騎馬像》(R.F.1973-29)を発表している。そこでは馬と軍服が主な役割を担っているものの、構図はなめらかな筆遣いで硬直した印象を与え、背後に見える紺碧の眺望が勝利と栄光を表わしている。

出典

- LAVEISSIERE S., MICHEL R., CHENIQUE B , Géricault, catalogue d’exposition, Paris, Grand Palais 1991-1992, Editions de la Réunion des musées nationaux, Paris, 1991.

作品データ

  • テオドール・ジェリコー(ルーアン、1791年-パリ、1824年)

    《近衛騎兵隊の士官》

    1812年のサロンに出品

  • 油彩、カンヴァス

    縦 3.49 m、横 2.66 m

  • 1851年、ルイ=フィリップの競売の際に取得

    INV. 4885

  • 絵画

    ドゥノン翼
    2階
    モリアン ロマン主義
    展示室77

来館情報

ルーヴル美術館 パリ フランス
地下鉄:1番線または7番線、Palais-Royal Musée du Louvre 駅
 
開館時間
月・木・土・日:9時-18時
水・金:9時-21時45分(夜間開館)

休館日:毎週火曜日、1月1日、5月1日、12月25日
 
 

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