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《風景の中のヴィーナス》

© 2011 Musée du Louvre / Martine Beck-Coppola

絵画
ドイツ絵画

執筆:
Kazerouni Guillaume

右側に描かれた水面に映っているゴチック様式の町並みによって途切れている風景の中に佇むこの優美なヴィーナスは、ザクセン選帝侯たちの関心を引き寄せ、デューラーとホルバインと共に16世紀のドイツ絵画における最も著名な画家であったルーカス・クラナハ(父)の描く裸婦の典型的な特徴を備えている。1529年に描かれたこの絵画には、画家の紋章および彼のアトリエのマークでもある地面の石と巧みに混同された画家の落款である、指輪をくわえた翼のある小竜が描かれている。マニエリスムの影響を受け、洗練されたこの作品は、ヴィーナスを描いた作品や、その他の神話画の注文が殺到した芸術家の成熟期に制作されている。

ザクセン選帝侯の宮廷画家

フランケン地方の小さな街クロナハに生まれたことからその名前がついているルーカスは、当初デューラーの作品から多大な影響を受けていた。初期の作品群はしかめ面の表現豊かな人物像や、くまなく探求された風景の中に描かれた植物の描写に対する嗜好を表わしている。ウィーンにおける画家の活動は、この街の人文主義者や文学者たちとの親密な交流によって特徴付けられる。1504年に、フリードリヒ賢明公に招聘された画家は、ヴィッテンベルクに向けて発つ。そこで五年間ザクセン選帝侯の下に仕え、輝かしい業績を納める。この時代に画家の様式は和らげられ、人物像はより一層滑らかで心地よいものとなる。作品は簡潔になり、宗教改革の理想が顕著になる。こうして彼は全体と人物像の融合に集中していた初期の関心を離れ、現実(肖像画)もしくは想像上(神話画)の独立した人物の描写へと専心するようになる。この傾向は彼の描いた数多くのヴィーナスの作品において特に顕著で、ルーヴルの作品はその中でも素晴らしい例証のひとつであると言えるだろう。

風景の中の娘

佇んだ若い娘の青白い体が、背景の暗い風景の上に浮かび上がっている。赤ん坊のような顔つき、切れ長の目、成人の体つきとその冷ややかな白さが、クラナハの女性像における一定の特徴を示している。裸婦を称揚している画家の作品群は、画家の制作品の中でも最も良く知られており、ザクセン選帝侯であるヨハン不動公の統治下で多大な成功を収めた。美の女神であるヴィーナスは、ほとんどの画家の作品の中に見受けられる大きな帽子を被って微笑を湛えている。画家は大きな帽子という主題を数回に渡って取り上げている。女神は通常ただ一人、もしくは息子のキューピッドと共に描かれている。風景は右側に広がっており、クラナハが面識のあったアルトドルファーもしくはヴォウフ・フーバーといったドナウ派の画家たちの追及したものに近いものがある。

裸体

理想化された裸体は、イタリアにおいてルネッサンスと共に飛躍したジャンルである。その後イタリアの人文主義と同時に北方にもたらされた。こうして裸婦はドイツルネッサンスで最も好まれた主題のひとつとなり、絵画だけでなく彫刻作品にも波及していった。そしてより一層ゆるぎない様相とより図式的な身体が備わるようになる。この分野において、クラナハは人物像に一種の流動性をもたらした唯一の芸術家である。多くの作品の中で、画家の裸婦は道徳的な価値を保ち続けている。帽子と宝石を備えながら、クラナハの美は煩悩に対する警告として表現されているのである。

作品データ

  • ルーカス・クラナハ(父)(クロナハ、1472年-ワイマール、1553年)

    《風景の中のヴィーナス》

    1529年

    ドイツ(ブラウンシュバイク?)

  • 油彩 板

    縦38cm、横25cm

  • 1806年

    INV. 1180

  • 絵画

    リシュリュー翼
    3階
    ゲルマン語圏諸国 16世紀 展示室I
    展示室8

来館情報

ルーヴル美術館 パリ フランス
地下鉄:1番線または7番線、Palais-Royal Musée du Louvre 駅
 
開館時間
月・木・土・日:9時-18時
水・金:9時-21時45分(夜間開館)

休館日:毎週火曜日、1月1日、5月1日、12月25日
 
 

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作品の補足情報

右下翼の付いた竜(画家の紋章)の署名と、制作年1529の記載