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ホーム>作品と宮殿>コレクションと学芸部門>《8つの頭部習作》

Huit études de têtes

素描・版画
18世紀

執筆:
Boyer Sarah

この《8つの頭部習作》は、おそらく様々な時期に種々の作品の準備段階として描かれたもので、その大半は1715年から1716年頃と思われる。左上の黒人の頭部は《会話》(トレド、トレド美術館)、左から2番目の黒人の頭部と中央下側の女性の顔は《妖艶な女》(サンクト・ペテルブルク、エルミタージュ美術館)、3番目の黒人の頭部は《イタリア劇のアモル》、オーボエ奏者は《村祭りの踊り》(個人蔵)にそれぞれ用いられている。仮面を持っている手は、《魔法使い》(ブロディク城)と関連付けられている。

構図の慣わし

ヴァトーの素描の中で最もよく知られたものの一つであるこの習作の大半は、ヴァトーがチョークを擦筆でぼかして肌の色を表現した2人の若い黒人の姿のように、絵画制作に用いられた。左から1番目の黒人の頭部は、《会話》(トレド、トレド美術館)の従僕のために、あらかじめサンギーヌで描かれた《盆を手にして立つ従僕》(ロンドン、大英博物館)の体の線を補っている。左から2番目の黒人の頭部は、小さな絵画《妖艶な女》(サンクト・ペテルブルク、エルミタージュ美術館)に登場し、この絵画には、下側の左から2番目の女性の顔も帽子なしで描かれている。この女性の顔は、《シテール島への船出》(ベルリン、シャルロッテンブルク宮)のゴンドラの中央にも見られる。上側の女性の特徴が《イタリア劇のアモル》(ベルリン、州立美術館)で松明に照らし出されている女性像に近いのに対し、右下の女性は、別の帽子ではあるが、《滝》(個人蔵)に用いられた可能性がある。オーボエ奏者は、《村祭りの踊りのオーボエ奏者》(個人蔵)の三重奏団の一角をなしている。こうした絵画と素描の間のきわめて複雑な関係を鑑みるに、次のような問いが浮かんでくる。ヴァトーは、チョークでより高度な習作を描いた後、絵画を構成するにあたって、何人かの登場人物の顔を変えたのではないだろうか。

初期

この素描は、きわめて明確な制作ぶり、線描の完璧さとそれぞれの頭部をとりわけ念入りに描き込んでいる点において、例えば《2人の男性と1人の女性の立像》(ダブリン、アイルランド・ナショナル・ギャラリー)のような1714年作のサンギーヌによる人物習作を思い起こさせる。もっとも、この素描の方が、ダブリン所蔵の素描より大きく力強い。上側の左から1番目の黒人の唇の黒チョークによるハイライトや、左から2番目の黒人の瞼の白のハイライトには、入念な技巧がうかがえる。多かれ少なかれ秩序づけられた頭部の配置(ヴァトーは、上側の女性の習作に下側の女性の帽子をかぶせることを拒否している)は、ダブリン所蔵の素描の規則正しく並んだ人物像の配置に呼応している。ヴァトー初期のこの素描の頭部習作が、それぞれ独立していて、一つの大きな絵画の構想に結びつけられているわけではないのに対し、ヴァトー円熟期の習作は、あらかじめ決められた秩序に従って、相互に関連付けて配置されている点で対照的である。

形態と容姿のレパートリー

ヴァトーの全画業において用いられたこのタイプの習作は、ヴァトーの内奥世界に属するものである。常に変わらないヴァトーの手法というのは、モデルの前にし、その周囲をまわって瞬間のヴィジョンと人の心を揺り動かす真実のヴィジョンを多様化させることにあった。あらゆることに好奇心を示し、遠方の国の人々に熱烈な関心を寄せたヴァトーは、1715年にヴェルサイユ宮殿に迎えられたペルシャ大使館の人員や、おそらく友人の家の従僕であったこの素描の若い黒人にポーズを取ってもらっている。ヴァトーは、この頭部習作で光を捉えるために、2つの色調のサンギーヌ(オレンジ色と赤みがかった褐色)、黒チョークと白のハイライトを組み合わせて、皮膚の肌理(きめ)を見事に表現した。このモデルは《田園のコンサート》(ロンドン、ウォーレス・コレクション)に登場している。若い黒人の奉公人を使うことは、17世紀末にフランスに持ち込まれ、18世紀を通して維持された異国趣味の表れであり、当時の上流階級の流行だったのである。

出典

- GRASSELLI Margaret Morgan, Watteau 1684-1721, cat. exp. Washington, National Gallery of Art, Paris, Galeries nationales du Grand Palais, Berlin, Charlottenburg, 1984-1985, pp. 91-92 n 27.

- GRASSELLI Margaret Morgan, MOUREAU François, Antoine Watteau (1684-1721) : le peintre, son temps et sa légende, colloque international, Paris, Grand Palais, 1984, Genève Paris, Éditions Clairefontaine, 1987.

- PLAX Julie Ann, Watteau and the cultural politics of eighteenth-century France, Cambridge ; New York ; Melbourne [etc.], Cambridge University Press, 2000.

- ROSENBERG Pierre,  PRAT Louis-Antoine, Antoine Watteau 1684-1721 : catalogue raisonné des dessins, Milan, Leonardo arte, 1996, pp. 686-688 n 415.

En savoir plus :

- BAILEY Colin B., CONISBEE  Philip,  GAEHTGENS Thomas W., Au temps de Watteau, Chardin et Fragonard, cat. exp. Ottawa, musée des Beaux-Arts du Canada, Washington, National Gallery of Art, Berlin, Staaliche Museen zu Berlin, 2003-2004.

- ROSENBERG Pierre, Des Dessins de Watteau, Tokyo, Chuo-koron Bijutsu shuppan, 1995.

- ROSENBERG Pierre, Watteau et son cercle dans les collections de l'Institut de France, cat. exp. Chantilly, musée Condé, 1996-1997.

- TEMPERINI Renaud, Watteau, Éditions Gallimard, Paris, 2002.

- VIDAL Mary, Watteau's painted conversations : art, literature, and talk in seventeenth-and eighteenth-centuries France, Londres, New Haven, Yale university press, 1992.

- WINTERMUTE Alan, BAILEY Colin B., ROSENBERG Pierre, Watteau and his world : French drawing from 1700 to 1750, cat. exp. New York, Frick collection, Ottawa, National Gallery of Canada, 1999-2000.

作品データ

  • アントワーヌ・ヴァトー(ヴァランシエンヌ、1684年-ノジャン=シュル=マルヌ、1721年)

    《8つの頭部習作》

    1715-1716年頃

    ジャン・ド・ジュリエンヌ・コレクション 、M.ド・モンチュレ・コレクション、1787年11月19日にパリでその競売(12番)、M.ディムクール・コレクション、1858年4月21日にパリでその競売(77番)、ルーヴル美術館により購入

  • 灰色の紙に黒チョーク、2つの色調のサンギーヌ、白のハイライト、擦筆

    縦26.70 cm、横39.70 cm

  • Collection Jean de Jullienne ; collection M. de Montullé ; sa vente, Paris, 19 novembre 1787, n 12 ; collection M. d'Ymecourt ; sa vente, Paris, 21 avril 1858, n 77 ; acheté par le Louvre

  • 素描・版画

    保存上の理由により、当部門の作品は常設展示室では展示されていません。

来館情報

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水・金:9時-21時45分(夜間開館)

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