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アリエノールの水晶の壺

© 1990 RMN / Daniel Arnaudet

工芸品
中世

執筆:
Muriel Barbier

12世紀に修道院長シュジェールが形成したサン・ドニ修道院の宝物室は、飾石と金具を組み合わせた壺をいくつも所蔵していた。「アリエノール」の名を冠した水晶(ロッククリスタル)製の壺もその1つである。ササン朝(3-7世紀にイラン・イラクを支配したイラン人の王朝)の時代に作られた水晶部分に、おそらくサン・ドニ修道院の工房で制作された、金の線細工をほどこした金具が取り付けられている。本作品は、6-7世紀のササン朝の水晶細工師の技術のみならず、シュジェールのもとで働いていた金銀細工師の卓越した技巧をもよく示している。

サン・ドニ修道院宝物室

1122年から1151年までサン・ドニ修道院長であり、フランス国王ルイ6世とルイ7世の顧問でもあったシュジェールは、聖ドニを「国王の特別守護聖人にして王国の保護者」とした。彼はサン・ドニ修道院の再建を指揮し、修道院をステンドグラスで飾らせ、財宝で満たした。こうして修道院を豊かに飾ることは、ネオプラトン主義の考えに基づいている。この考えによれば、輝かしく洗練された物は、人々が物質的なものから非物質的なものへと昇華するのを助けるという。修道院宝物室に収蔵されていた品々は、フェリビアン(18世紀初めにサン・ドニ修道院史を著した人物)の版画やブレーズ・ド・モンテスキュー=フェザンサック(17世紀前半にサン・ドニ修道院宝物室に関する書物を著した人物)の作品、および1634年の宝物室目録から知られている。シュジェールの注文で装飾された数ある壺のうち、4点だけが現存している。1点はワシントンのナショナル・ギャラリーにあり、他3点はルーヴル美術館にある。「アリエノール」の壺は、ルイ7世からシュジェールに贈られたものである。ルイ7世はこれを、妻であるアリエノール・ダキテーヌからの贈り物として受取っており、アリエノールは自身の祖父アキテーヌ公ギョーム9世から受け継いでいた。シュジェールはこの品を、(修道院宝物室へ収めることで)殉教聖人たちのもとへ返すことにした。本作品がこうして次々と贈られた経緯は、脚部に刻まれた銘文と著書『統治論』の中でシュジェール自身によって言及されている。

ササン朝の水晶の壺

壺の腹部は洋梨形をしており、金具に隠されてはいるが首の部分が約2cm上に続いている。18世紀までこの壺には手が加えられていない。現在では何本かひびが入り、欠けている箇所もある。水晶全体には「蜂の巣」模様、つまり小さな凹面の六角形の連なりが22、23列並んだ模様が彫られている。同様の装飾は、ルイ14世の孫の王太子のコレクションに含まれていた紅碧玉の壺にも用いられている。この作品はマドリードのプラド美術館が所蔵している。蜂の巣状の装飾は、ローマ時代の金銀細工やガラス工芸にも見出される。この装飾はイスラム教徒のササン朝、そしてビザンティンのガラス工芸に伝わった。「アリエノール」の壺は、ササン朝(6-7世紀)またはササン朝以降(9-10世紀)の時代に制作されたと思われる。

透かし細工の金具

金具は鍍金をほどこした銀でできている。台座は4層構成、すなわちニエロ(黒金)技法で銘文を入れた層、線細工と宝石で飾った層、花形装飾と線細工の層および飾りのない層からなる。首の部分も同様に、膨らんだ層と円筒形の層、飾りのない層、線細工の層と宝石で飾った層が交互になって構成される。宝石類は縁を鋸葉状に加工した簡素な台座に嵌めこまれている。台座部分では2粒の真珠と宝石が交互に並ぶ。宝石類をとりまく線細工は特殊なタイプである。二重で太く光沢があり、一まとまりとしてほどこされた点に特徴があり、滑らかで艶やかな地から浮き上がって見える。このタイプの線細工は、シュジェールのために作られた他の壺にも見られる。ワシントンのナショナル・ギャラリー・オブ・アートが所蔵する聖杯や、ルーヴル美術館にある紅縞瑪瑙の水差し(作品番号MR127)などがその例である。この線細工は、おそらくオットー朝やビザンティンの作品から影響を受け、フランス王室周辺で活躍していた、あるいはサン・ドニ修道院と結びつきのある地元の金銀細工工房で制作されたのだろう。

出典

- Le Trésor de Saint-Denis, Editions de la Réunion des musées nationaux, Paris, 1991, p. 168-172.

作品データ

  • アリエノールの水晶の壺

    水晶:6-7世紀金具:1147年以前、13、14世紀

    フランス、サン・ドニ修道院宝物室

    水晶:ササン朝美術金具:サン・ドニ修道院

  • 水晶(ロッククリスタル)、銀に金鍍金、ニエロ(黒金)技法、線細工、宝石、エマイユ・シャンルヴェ(生地彫りエマイユ)

    高さ33.7cm、直径15.6cm

  • 1793年ルーヴル美術館に寄託

    MR 340

  • 工芸品

    リシュリュー翼
    2階
    シュジェール
    展示室2

来館情報

ルーヴル美術館 パリ フランス
地下鉄:1番線または7番線、Palais-Royal Musée du Louvre 駅
 
開館時間
月・木・土・日:9時-18時
水・金:9時-21時45分(夜間開館)

休館日:毎週火曜日、1月1日、5月1日、12月25日
 
 

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