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作品 アル=マリク・アル=ナーシル、サラー・アル=ディーン・ユースフ・イブン・アル=マリク・アル=アジーズの銘のある壺

イスラム美術部門 : セルジューク朝・モンゴル帝国・イスラム教徒の地中海世界

アル=マリク・アル=ナーシル、サラー・アル=ディーン・ユースフ・イブン・アル=マリク・アル=アジーズの銘のある壺

© 2006 Musée du Louvre / Raphaël Chipault

イスラム美術
セルジューク朝・モンゴル帝国・イスラム教徒の地中海世界

執筆:
Bittar Thérèse

アレッポを支配していた、アイユーブ朝の君主のために制作されたこの壺は、シリアの真鍮工芸品にみられるすべての装飾を伝えるものである。それぞれの装飾要素間に、たとえば、碑銘装飾の幅広の帯、主題の場面の入った飾枠、優雅なアラベスク模様が浮き出た広い無地の地と、銘文と具象場面の地である緻密な装飾の間に、 巧妙な調和が支配している。具象場面の中には、輿に乗った女性の人物像がある。

描写

壺の形は、卵形の腹に、長い首を持っており、シリア製の紀元4世紀から5世紀の銀器(ルーヴル美術館、工芸部門所蔵)の形を想起させる。各部分を繋ぐ箇所には、打出で表わした山形文様の装飾があり、帯状の各層は、数珠繋ぎの飾り彫りのある紐ではっきり区分けされている。首の銘文と、中程下部の帯状装飾の銘文は草書体で、君主の称号を記している。腹の上部にも草書体が使用されて、一連の祈願が記されている。中程上部の帯状装飾と下部の帯状装飾には、別の祈願を記した銘文があるが、こちらは、クーファ体で表わされている。これらの碑銘装飾の帯は二本の幅広の無地の帯を縁取っていて、その二本の無地の帯には、アラベスク模様が表わされている。柔軟な葉の縁が裏返っているものが、引き延ばされて、分かれて、巻いた茎になり、それが葉を生み出す。そして、この葉が、今度は引き延ばされて、リズムのある、続く動きの中で、巻くと、茎になる。この一部が裏返った、柔らかな葉と、アラベスク模様をはっきり浮き出させる無地の地帯が、13世紀前半の金工作品の装飾の特徴である。このような装飾はロンドンのヴィクトリア・アンド・アルバート美術館所蔵のモスルの君主、バドル・アル=ディーヌ・ルッルッの銘のある盆に、殊に、認められるものである。

多弁形の枠内の装飾

人物像と動物は、緻密な文様の地、茎の先端に揺れる三弁の花などが敷きつめられた地の上に、高彫り彫刻のように浮き出ている。装飾の主題は、狩猟の手柄が、大半を占めている。上部の枠では、二人の狩人が弓を引いたり、吹き矢を使って、飛んでいる鵞鳥を落とそうとしている。吹き矢は、庭園の中で、催淫剤として聞こえた料理にするための小さい鳥を捕らえるために使用されていた。その次の枠では、騎乗の狩人が槍を獅子に指し貫いている。また、二人の射手が、ひとりは野兎を、もうひとりは雌鹿を射ている場面、騎士が猫科の動物を剣で倒している場面、二人の男が小さい丸楯を片手に、偃月刀(えんげつとう)で戦っている場面が続き、六つ目の場面では、女性が輿に坐っているという、金工作品では、非常に珍しい場面が表わされている。
下部の枠内の装飾をみると、二人の騎兵が獅子にそれぞれ槍を突き通している場面、二人の狩人が弓と吹き矢で飛んでいる鵞鳥を射ている場面、駱駝に乗った狩人が野兎に弓を引いている場面、ひとりの男が鹿を立って射止めている場面、二人の狩人が弓で野兎を射ている場面が表わされている。鵞鳥と四つ足の獣が、この主要モチーフに加わっている。
ルーヴル美術館は、同じ君主の銘のある作品をもう一点所蔵している。それはダマスカスで制作された水差しで、1258年に制作され、フサイン・イブン・ムハンマド・アル=マウシリーの署名がある。その装飾は、繊細で、手の込んだものであるが、図像学上には豊かではなく、この通称バルベリーニの壺を、制作面で、アイユーブ朝時代の傑作とするだけの、一分の狂いもない見事な腕前は、この水差しでは観られない。

銘文

12世紀より、判読の難しいクーファ体の銘文に並んで、草書体の書記法が、交互に現れるようになった。歴史的記述は、一般に、草書体で、祈願の決まり文句がクーファ体で表わされたが、この壺の銘文にもある間違いや、意味不明の言葉も稀ではなかった。しかしながら、この壺ほどの高度な質をもつ工芸品にまで、そういった間違いがあるのは、普通ではない。
1193年、アイユーブ朝の始祖、サラー・アル=ディーン・アイユーブ(サラディン)は、自分の死の前に、彼の帝国のそれぞれの部分を彼の家族に分け与えた。こうして、幾つかの公国が、ダマスカス、アレッポ、ディヤルバクル、イエメンに成立した。アル=マリク・アル=ナーシル2世、サラー・アル=ドゥンヤ・ワッル・ディーンは、アレッポの最後の君主で、1260年に、モンゴルの侵入によって倒された。銘文の中で、彼に帰属する数多い名誉ある称号は、ファーティマ朝より非常に発展した君主達の称号の内の幾つかである。
壺の底の銘、ル・マリク・アル=ザーイルは、はっきりと誰のものか判定できない。マムルークのサルタンのうちの数人がこの称号を保持していた。例えば、スルタン・バイバルス(1260—1277年)や、スルタン・バルクーク(1382−1390年)などが上げられる。

出典

- MELIKIAN-SHIRVANI, (A), Vase au nom du sultan Salâh al-Dîn, Arts de l'Islam des origines à 1700, Paris, 1971, n 151.

Les inscriptions

- Inscription cursive du col : « Gloire à notre Seigneur, le sultan, al-Malik al-Nâsir, Salâh al-dunya wa’ldîn»

- Inscription cursive du bandeau médian, registre inférieur : « Gloire à notre Seigneur , le sultan, le roi très grand, al-Malik al-Nâsir, le savant, le juste, celui qu’appuie [le ciel], le triomphateur, le victorieux, le combattant du jihâd, le guerrier du ribât, Salâh al-dunya wa-l dîn, pilier de l’Islam et des musulmans, celui qui fait triompher la vérité par les arguments, celui qui fait vivre la justice dans les deux univers, Abû’l-Muzaffar Yûsuf, fils du sultan al-Malik al-`Azîz»

- Inscription cursive au sommet de la panse : « Gloire durable, bonne fortune totale, victoire, longue vie, appui [du ciel], tranquillité, compassion, triomphe sur les ennemis, bonne santé éternellement à son propriétaire »

- Inscription kufique du bandeau médian, registre supérieur : « Gloire immense, vie et salut, agréments.....salut très haut, tranquillité .....à son propriétaire.»
De nombreux mots sont indéchiffrables.

- L’inscription kufique à la base du vase, probablement aussi une suite de vœux, est impossible à déchiffrer, totalement incompréhensible.

- Au revers de la base sont inscrits quelques mots : « Pour la cave (charbakhâna) d’al-Malik al-Zâhir»

作品データ

  • アル=マリク・アル=ナーシル、サラー・アル=ディーン・ユースフ・イブン・アル=マリク・アル=アジーズの銘のある壺

    1237−1260年

    ダマスカス、あるいは、アレッポ(シリア)

  • 銅の合金、鎚起、打出、上彫、銀象嵌

    高さ40.9cm、直径17.5cm

  • 1899年、購入、旧ブラネリ・コレクション(フィレンツェ)、17世紀にイタリアに持ち込まれ、教皇バルベリーニ・ウルバヌス8世に贈呈される。ルーヴル美術館には、バルベリーニ邸館より直接入った。

    通称、バルベリーニの壺

    OA 4090

  • イスラム美術

    リシュリュー翼
    地上階
    エジプト、近東、アナトリア 12‐13世紀
    展示室8

来館情報

ルーヴル美術館 パリ フランス
地下鉄:1番線または7番線、Palais-Royal Musée du Louvre 駅
 
開館時間
月・木・土・日:9時-18時
水・金:9時-21時45分(夜間開館)

休館日:毎週火曜日、1月1日、5月1日、12月25日
 
 

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