Go to content Go to navigation Go to search Change language

ホーム>作品と宮殿>コレクションと学芸部門>クラテスの胸甲面(ミイラマスク)

作品 クラテスの胸甲面(ミイラマスク)

古代エジプト美術部門 : ローマ支配時代のエジプト(前30年-紀元392年)

クラテスの胸甲面(ミイラマスク)

© 2010 Musée du Louvre / Georges Poncet

古代エジプト美術
ローマ支配時代のエジプト(前30年-紀元392年)

執筆:
Cortopassi Roberta

クラテスのカルトナージュ製の(亜麻布やパピルスを貼り合わせて固めてたもの)胸甲付きマスクは、多彩色の美しさと様式化された図像において卓越している。胸甲部分には、ミイラ姿のホルス神2柱と有翼スカラベが描かれていて、三段からなる図を囲んでおり、そこには守護神たちと死者のミイラ処理場面が描かれている。クラテスは、古代の村、デル・エル=メディーナ(ディール・アル=マディーナ)に所在する家の地下室に八人の家族と共に埋葬されていたが、後にそこは墓に改造された。

エジプト風葬祭装飾

マスクには、故人の頭部と首が表現されており、唯一浮彫がされている頭部には金箔と彩色が施されている。目と眉毛は黒と白で塗られ、髪の毛は、図案化された花綱を額のところで巻いて飾っている。金色の葉とカボション(半球形に整えた宝石)からなる壮麗な冠を頭に掲げ、翼を広げたハヤブサが死者の頭部を守っている。緑、バラ色、白の縞が入っているネメス頭巾は、首の両脇に沿って垂れ下がっている。胸甲の白地の上に、図像は黒で縁取られ、限られた色彩を用いて、むらのない色合いで彩色されている。左右にミイラ姿のホルス神が1柱ずつ胸甲の高さいっぱいに描かれている。末期王朝時代に考案されたこの図像は、太陽神であるホルス神と冥界の神オシリス神が習合された姿を表している。中央には、復活の象徴である有翼スカラベが描かれ、下段には、ライオンの形をした埋葬用寝台の上で横たわる死者に、アヌビス神がミイラ処理を施しており、イシス女神とネフティス女神がそれに立ち会っている。中段には、ホルス神の4人の息子と女神4柱が、ヤシの葉らしきものを差し出している。最上段では、ハヤブサや牡牛や牡羊の頭をした神々が、正義を象徴する羽を持っている。

テーベの名士たち

クラテスは、八人の家族と共に、古代の村デル・エル=メディーナに所在する家の地下室に埋葬されていた。そのうち6体のミイラは、胸甲付きマスクを付けており、クラテスの胸甲付きマスクは、ミイラを包む屍衣に紐で結ばれて縫いつけられていた。屍衣には、赤をバックにしてビーズネットが描かれていた。後に、ミイラはギリシア語の銘が入った棺に納められた。棺の配置と銘文から、3世紀初頭、この墓に最後に埋葬された人物は、家族の長であったペボスであったことが分かっており、ルーヴル美術館ではペボスの胸甲付きマスクも収蔵している。
クラテスは17歳で亡くなり、(後)2世紀中頃に地下埋葬室に埋葬されたが、おそらくペボスの甥であったと思われる。二人とも、「偉大なるサラピス神」に仕える神官で、サラピス神殿、神の図像、崇拝の品々を管理する役目を担っていた名士であった。この役職については、アレクサンドリアやその他のギリシア人によって支配された大都市で発見された銘文やパピルスで実証されている。ペボスとクラテスは、今日、テーベ地方で存在が明らかになった唯一の神殿管理人である。クラテスの頭部を飾るカボションと葉でできた冠は、おそらくこの役職の象徴であったと思われる。

ローマ支配時代のエジプト人家族

家族のうち二人が神殿管理人であったこと、葬祭装身具の質の良さ、丁寧なミイラ処理から、社会のエリート層に属していた家柄であったことが分かる。固有名詞は全て地元に由来し、胸甲付きマスクの装飾もファラオ時代の葬祭伝統に忠実であることから、エジプト出身であることに愛着と誇りを持っていたことが窺われる。クラテスと叔父の装身具で、唯一ヘレニズム様式を起源とするものは、故人が高貴な人物であった事を示す冠である。

出典

- L’art de Rome et des Provinces, catalogue de l’exposition, Paris, 1970, n° 131.

作品データ

  • クラテスの胸甲面(ミイラマスク)

    後2世紀中頃

    デル・エル=メディーナ(ディール・アル=マディーナ)出土

  • いくつかの厚みが異なる亜麻の布、化粧漆喰、彩色及び金箔

    高さ75cm 幅34.7cm

  • 1935年、ブリュイエールによる発掘

    E 14542 ter

  • 古代エジプト美術

    ドゥノン翼
    地上階
    ローマ支配時代のエジプト 葬礼美術
    展示室A

来館情報

ルーヴル美術館 パリ フランス
地下鉄:1番線または7番線、Palais-Royal Musée du Louvre 駅
 
開館時間
月・木・土・日:9時-18時
水・金:9時-21時45分(夜間開館)

休館日:毎週火曜日、1月1日、5月1日、12月25日
 
 

チケットを購入する