Go to content Go to navigation Go to search Change language

ホーム>作品と宮殿>コレクションと学芸部門>マルスとヴィーナスの皇室彫刻群

作品 マルスとヴィーナスの皇室彫刻群

古代ギリシア・エトルリア・ローマ美術部門 : ローマ美術

マルスとヴィーナスの皇室彫刻群

© 2008 RMN / Hervé Lewandowski

古代ギリシア・エトルリア・ローマ美術
ローマ美術

執筆:
Astier Marie-Bénédicte

この彫刻群は、ルキウス・ウェルス帝の妻、ルキリアと思われる別の肖像が、2世紀末に元あったサビナの頭に代わるまでは、ハドリアヌス帝とその妻サビナで構成された皇帝夫妻を表現していた。この作品はヘレニズム趣味とこの時期流行した新古典様式を反映している。ハドリアヌス帝(在位紀元117-138年)は生前に神の姿で肖像が作られた初めての皇帝である。彼は戦の神マルスとして表現されている。

皇帝夫妻:ハドリアヌス帝と妻サビナ

1620年直前にローマのサンタ・マリア・マッジョーレ大聖堂付近で発見されたこの彫刻群は、1807年にカミーユ・ボルゲーゼ公よりナポレオン1世が購入した後、ルーヴル美術館に収蔵された。紀元2世紀初頭に制作されたこの彫刻群は、元はハドリアヌス帝とその妻サビナで構成された夫婦を表現していた。しかしその後、年代や理由は不明だが、この彫刻群は手直しされた。女性の頭部は他の古代の肖像に置き換えられた。ローマ肖像の制作年代を確定する鍵となる顔と髪型の特徴から、これは2世紀末の肖像で、おそらくルキウス・ウェルス帝(在位紀元161-169年)の妻ルキリアの肖像と判断される。そうであれば、ルキリアはこの彫刻群を彼女の亡き夫を賛美するために再利用したのであろう。彼女はサビナの肖像を自分の肖像に置き換え、そして夫ルキウス・ウェルス帝を神と同等に昇格させるような普遍的な容貌を作り上げるため、ハドリアヌス帝の顔は平凡なものに変えられた。

帝国のプロパガンダに使われたギリシア神話

ハドリアヌス帝は生前に自らを神として表現させた、初めての皇帝である。それまでは、皇帝の家族はこのような名誉を授かることはなく、死後にのみ神の仲間入りをし、永遠の存在となることができた。この夫妻は、愛人関係のマルスとヴィーナス、戦の神と愛の神に同一視されていた。その原型は恐らくアウグストゥス帝の時代ローマに住んでいたギリシア人彫刻家パシテレスにより制作された、彫刻群の中にあると見られる。ハドリアヌス帝の肖像はサビナのものより理想化されている。皇帝は英雄的な裸体で表現され、飾冠が付いた冑、肩帯、両刃の剣、人物の支柱となる木の幹に置かれた銅鎧など、マルス神の戦いに関する象徴を備えている。この象徴的な肖像は皇帝の役割を明白にした、帝国のプロパガンダとして作られた。ハドリアヌス帝は、平和と帝国の繁栄の保証人として君臨している。

ギリシア美術の参照

この観念形態にはギリシア美術の露骨な引用が盛り込まれている。ハドリアヌス帝の統治期間、紀元117年から138年に彼は、美術や文学の分野でギリシア古典主義への回帰を奨励している。よってこの彫刻群は、このギリシアびいきの政治と新アッティカ派の作品の回帰をよく示している。そのバランスと冷厳さより、ハドリアヌス帝の肖像は、前5世紀末に制作されたアルカメネスのマルス神のような、クラシック時代の競技者の像に影響を受けている。女性像は前4世紀、そしてヘレニズム時代の半裸のアフロディーテを思わせると同時に、プラクシテレスの作品の流れを汲んでいる。女神の姿勢はナポリ国立考古博物館の « カプアのヴィーナス »を連想させる。腰に繊細にまとわる襞の形は、 « ミロのヴィーナス»(Ma 399)のそれと比較し得る。しかしながら彫刻家は皇帝の妻としては慎みがないとして、あらわな胸は着衣で覆うことにした。

出典

- KERSAUSON K. (de), Musée du Louvre. Catalogue des portraits romains, II, Paris, 1996, p. 144-147, n 59.

- KALVERAM K., Die Antikensammlung des Kardinals Scipione Borghese, 1995, p. 210-211, n 95, fig. 66.

- KNELL H., Actes du XIIe congrès international d'archéologie classique, Athènes 1983, 1988, 3, p. 145-150, pl. 28.

-  KLEINER D.E.E., Latomus, 40, 1981, p. 539-540, fig. 9.

- WREDE H., Consecratio in formam deorum : Vergöttlichte Privatpersonen in der Römischen Kaiserzeit, Main-sur-Rhin, 1981, p. 269-270, n 195, n 299.

- SCHMIDT E.E., Antike Plastik, 8, 1968, p. 85-93, fig. 2.

作品データ

  • マルスとヴィーナスの皇室彫刻群

    紀元120-140年、170-175年に補修

    1620年直前にローマのサンタ・マリア・マッジョーレ大聖堂付近にて発見

    ローマ

  • 丸彫、大理石

    高さ1.73 m

  • 旧ボルゲーゼ・コレクション、1807年購入目録番号MR 316(常用番号Ma 1009)

    Inventaire MR 316 (n° usuel Ma 1009)

  • 古代ギリシア・エトルリア・ローマ美術

    ドゥノン翼
    1階
    ローマ美術:属州総督の反乱(紀元68年)から2世紀末まで
    展示室25

来館情報

ルーヴル美術館 パリ フランス
地下鉄:1番線または7番線、Palais-Royal Musée du Louvre 駅
 
開館時間
月・木・土・日:9時-18時
水・金:9時-21時45分(夜間開館)

休館日:毎週火曜日、1月1日、5月1日、12月25日
 
 

チケットを購入する