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作品 ヌ・バンダ、エビフ・イルの彫像

古代オリエント美術部門 : メソポタミア

ヌ・バンダ、エビフ・イルの彫像

© Musée du Louvre, dist. RMN / Raphaël Chipault

古代オリエント美術
メソポタミア

執筆:

Sophie Cluzan

 

 


多数の信者は彼らの肖像である彫像をマリの神殿に安置させ、そのようにして神の前での彼らの存在を永続させた。これらの男女礼拝像 は、多くの場合両手を合わせた姿で表され、カウナケスと呼ばれる衣服を着用している。エビフ・イルの像は作品の出来栄え、保存状態、また表現力に富んだ様式から明らかに卓越した傑作といえる

マリ彫刻の代表作品
 

1933年からアンドレ・パロによって着手されたシリアのマリ遺跡の発掘で、紀元前2340年頃と推定される 、様々な神に捧げられた幾つかの神殿(イシュタル、イ シュタラト、ニンニ・ザザなど)が見つかった。エビフ・イルの像は、マリで最初に発掘された、雄々しいイシュタル女神を祀った神殿で発見され、この神殿 からもう一つ、同時代の王、イシュキ・マリの彫像も出土し、その碑文からテル・ハリリが古代都市マリの遺跡であることが明らかになった。
エビフ・イルは、籐網みの腰掛に座り、上半身は裸で、カウナケスと呼ばれる、羊か山羊の皮あるいは動物のふさふさした長い房に似せた織物でできた、長いスカートをはいている。男女共にカウナケスを着用していた。エビフ・イルのカウナケスは羊毛皮のような房が彫られていること、また服の後ろに尾が付いていることから、明らかに動物の毛皮を表わしており、類まれな写実性で表現されている。剃髪のこの人物は、長い髭を誇らしげに蓄えている。おそらく髭には別の素材がはめ込まれていたと思われるが、 眼のみに、瀝青のフレームに嵌め込んだ貝殻とラピス・ラズリの象眼細工が残っている。ラピス・ラズリはもともとアフガニスタンからきたもので、当時から近東で長距離間の交流が行われていたことが分かる。半透明のアラバスターで作られたこの作品は、人物がたたえるほのかな笑みなど、繊細な印象を上半 身に与えている。彫像の後ろには、「ヌ・バンダであるエビフ・イルが、自らの彫像を雄々しい女神、イシュタルに捧げた」という碑文が刻まれており、作品の身元を確認することができる。エビフ・イルの称号はかつては代官と訳されていたが、最近になってヌ・バンダと解されるようになった。ヌ・バンダは、軍事などを含むとりわけ重要な役職であったと考えられる。高い位を授かったエビフ・イルは、王国のエリート中のエリートで、彼の彫像の質の高さもこれによって裏付けられる。かつて破損し、古代に修復をうけていたことからも極めて手厚く扱われたオブジェであった。最近の研究で 、戦争と権力の女神イシュタルを祀った神殿に安置されていたこのヌ・バンダの彫像と国王イシュキ・マリの彫像の関係が明らかにされた。
 

礼拝者像
 

小さい礼拝者像は、個人の守護神の加護を願い、神殿に安置するためにつくられた。極頻繁に両手を合わせる姿勢で表され、祈る姿と解されている、おそらく神殿での敬神の行為を永続させることを目指していたと思われる。人物は、神殿に納められていた饗宴の図が描かれてい る貫通孔のある浮彫に見られるように、時には手に杯を持つこともある。このタイプの小像は、初期王朝時代(とりわけ第2期と第3期の紀元前 2800~2340年頃)に初めて登場し、後代まで長い間つくられていた。テローのグデア王の像(ルーヴル美術館)が多数残っていることからもそれが分かる。礼拝者像には幾つかのヴァ—ジョンがあるものの、いずれも同じようにつくられている。男女の信者をかたどり、大半は石製であるが中には金属製の例もある。人物は立像または坐像で、高さは、数センチから1メートルを超えるものまでさまざまであるが、エビフ・イルの像は52センチに及ぶ。 碑文が刻まれている彫像もあり、その人物の名前や役職を確定することができる。マリにおいて、碑文は男性のみに刻まれ、女性は匿名のま まである。彼らは上流階級に属しており、国家や宮廷の重職(国王、王の兄弟、ヌ・バンダ、偉大なる礼賛者、代官、仕官、土地台帳長官、書記、献酌官など)に就いていたか、または聖職(マリの女性彫像に表現されている 女神官のような)に属していたか、または(商人などのように)社会の富裕階級に属していた。

出典

- PARROT A., " Les Fouilles de Mari, première campagne (hiver 1933- 1934)", in Syria, XVI, Paris, P. Geuthner, 1935, pp. 25-27, fig. 8, pl. VIII.

- PARROT A., Mission archéologique de Mari, I, Le Temple d'Ishtar, Institut français d'archéologie du Proche-Orient, Paris, 1956 (Bibliothèque archéologique et historique, LXV), p. 70, pl. XXVIII-XXIX.

- STROMMENGER E., Hirmer M., Cinq millénaires d'art mésopotamien : de 5000 avant J.-C. à Alexandre le Grand, Flammarion, Paris, 1964, fig. 88-89, p.71, pl. XX.

- SPYCKET A., La Statuaire du Proche-Orient ancien, Leyde, E. J. Brill, 1981, (Handbuch der orientalistik, kunst und archäologie), p. 97, n 279, pl. 64.

- Guide du visiteur : Les Antiquités orientales, 1993.

作品データ

  • ヌ・バンダ、エビフ・イルの彫像

    初期王朝時代、前2400年頃

    マリ、イシュタル神殿(シリア)

  • 石膏、ラピス・ラズリ、貝殻

    高さ52.50cm、幅20.60cm、奥行き30cm

  • 1934-1935年、A・パロ発掘

    AO 17551

  • 古代オリエント美術

    リシュリュー翼
    1階
    古代メソポタミア:マリ メソポタミア文化の伝播
    展示室1b

来館情報

ルーヴル美術館 パリ フランス
地下鉄:1番線または7番線、Palais-Royal Musée du Louvre 駅
 
開館時間
月・木・土・日:9時-18時
水・金:9時-21時45分(夜間開館)

休館日:毎週火曜日、1月1日、5月1日、12月25日
 
 

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