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写本外装

工芸品
初期中世

執筆:
Barbier Muriel

1677年には、マーストリヒトの名を冠したこの写本外装に、ブランバント公がこの文書において宣誓したという文書が収められていた。刻まれた銘文によれば、11世紀後半にベアトリスなる人物より贈られたようだが、この人物が誰なのかはいまだに不明である。マーストリヒトの写本外装は、数々の金銀細工技法とエマイユ技法を組み合わせたもので、オットー朝末期の宮廷で活躍した職人たちの妙技をよく示している。

磔刑

外装の中央は、打ち出しによる磔刑図で飾られている。半円形アーチの下に十字架に掛かったキリストがおり、十字架の足元には聖母と福音書記者ヨハネ、十字架上方には太陽と月の擬人像が見える。こうした図像は磔刑図に頻繁に現れる。外装の四隅は福音書記者の象徴で飾られる。聖ルカの牡牛、聖ヨハネの鷲、聖マタイの人、聖マルコの獅子である。そして上下の帯状部分にはニエロ〔黒金〕技法によるメダイヨンがあり、一方には聖ペテロと聖パウロ、他方には2人の天使が描かれている。メダイヨンの様式はモザン美術〔中世にライン川およびムーズ川流域で発達した美術〕に近いが、後から手が入っている可能性もある。逆に、エマイユはドイツ南西部〔アルザス・ドイツ語圏スイスを含む〕の作品を想わせる。

中世エマイユ技法の縮図

線細工と台座に嵌められたカボション〔半球形に研磨したもの〕に加え、この写本外装は数多くのエマイユ細工で覆われている。上述した福音書記者の象徴には、全体を覆うエマイユ(ヨハネとマルコ)と部分的に掘り窪めたエマイユ(ルカとマタイ)が交互に用いられる。これら線を強調してあったり、リズミカルであったりする四隅の装飾板の、一方は水玉模様で、他方はジグザグ模様で飾られる。全体的なエマイユと部分的なエマイユというコントラストは、両側の扇形をした宝石部分にも認められる。すべて、位置によって金またはエナメルのパルメットで飾られている。このようにエマイユ職人の関心はかなり幅広く、南方からの影響(とくにマタイとルカ)と東方からの影響(ヨハネとマルコ)を受けていたものと思われる。

寄贈者は誰か

レーゲンスブルクにおける貴金属・宝石細工の活況と、イタリアへ向かう街道のアルプス周辺の状況から、この写本外装がどこで制作されたかが明らかになり、様式上技術上の源泉が多岐にわたることが説明される。そのうえ本作品には銘文があり、ベアトリスなる人物の注文によって制作されたことが明記されている。制作年代がわかれば、この注文者が誰なのかがはっきりするだろう。実際、バール公フリードリヒ1世(954-1101年)の妻だという説もあれば、ロートリンゲン公フリードリヒ2世(1024-1034年)の娘で、トスカーナ候ボニファチオに次いで低ロートリンゲン公ゴッドフロワ髭公の妻になった女性だという説もある。後者の説であれば、ベアトリスはこの写本外装を1069年のゴッドフロワ死去に際して贈ったのだろう。またベアトリスは、シュヴァーベン公ヘルマン2世(937-1003年)の娘でケルンテン公アダルベルト・フォン・エッペンシュタインの妻だという可能性もある。銘文に欠落があるために、残念ながらこれ上詳しいことは不明である。

出典

Taburet-Delahaye Elisabeth, Technique de l'émaillerie médiévale, Feuillet du Louvre n 6/08.

Kroos Renate, Der Schrein des heilingen Servatius in Maastricht und die Vier zugehörigen Reliquiare in Brüssel, Munich, Deutscher Kunstverlag, 1985, p. 46-47.

Gauthier Marie-Madeleine, Émaux du Moyen Age occidental, Fribourg, Office du Livre, 1972, p. 54-56.

作品データ

  • 写本外装

    11世紀前半

    マーストリヒト大聖堂宝物室

    トリーアまたはレーゲンスグルク(ドイツ)

  • 木芯、銀に打ち出し、毛彫り、金鍍金、ニエロ〔黒金〕、線細工、打ち出しと金地にほどこしたエマイユ・クロワゾネ〔有線七宝〕の台座に嵌めた宝石と真

    高さ39.20cm、幅32.00cm

  • 1975年収蔵

    磔刑

    MR 349

  • 工芸品

    リシュリュー翼
    2階
    シュジェール
    展示室2

来館情報

ルーヴル美術館 パリ フランス
地下鉄:1番線または7番線、Palais-Royal Musée du Louvre 駅
 
開館時間
月・木・土・日:9時-18時
水・金:9時-21時45分(夜間開館)

休館日:毎週火曜日、1月1日、5月1日、12月25日
 
 

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作品の補足情報

毛彫りとニエロによる銘文:ECCE FILIVS TVVS ; ECCE MATER TVA ; JOHANNES ; LVCAS. MATHEVS ; MARCVS ; BEATRIX ME IN HONORE / DEI O(mn)I POTENTIS ; EIVS FIERI PRECEPIT / ET OMNIV(m) S(an)C(t)ORVM