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壁のタイル

© Musée du Louvre/G. Poncet

古代エジプト美術
新王国時代(前1550-前1069年頃)

執筆:
Geneviève Pierrat-Bonnefois

新王国時代の王宮は、エジプトファイアンスに多彩色が施されたこのようなタイプのタイルで飾られていた。ファラオは他国をエジプトの支配下に入れなけらばならないと考えられていたので、ファラオの異国に対する支配を連想させる異国人捕虜のテーマが選択されている。神話伝説ではエジプトで知られていた国々を支配することが王の役目の一つと考えられていた。異国人捕虜の派手な色の衣装は、装飾にエキゾチックな色を用いるための口実でもあった。

エジプトファイアンスに描かれた捕虜

ひげを生やした男性は、捕虜の姿で表されている。跪づき、右肩を後ろに向け、両手は背中で縛られている。色の付いた多数の飾紐とひだが付いた貫頭衣を着用し、円盤状の首飾りを付けている。これは紀元前2千年紀のシリア・パレスチナ地方でよく見られた独特な宝飾品で、着用している衣装や細い黒ひげの詳細表現からこの国の人であることが分かる。
装飾用タイルは、石英を主成分とし、色の付いた釉薬をかけたケイ酸質のファイアンスでできている。このタイルの製造法はきわめて手が込んでおり、詳細に彩色され引きたてられ身体の異なった部分が浅浮彫で形付けられ、共通の基盤に接合されている。髪型の部分は剥がれて消失している。

ラメセス3世の王宮

ラメセス3世は30年以上も君臨した偉大な王であった。彼の造営した数々の王宮のうち二つの遺跡が発見されている。まず、テーベの左岸に所在するメディネト・ハブ(マディーナト・ハーブ)の大神殿内にある王宮、もう一方はデルタ地帯南部、テル・エル=ヤフーディヤ(現在のカイロ市近郊)の王宮である。後者は1880年代に完全に破壊されてしまったが、住民たちが散在していたファイアンス製のタイルを拾い集めたため、今日、様々な美術館で収蔵されるに至っている。王の名が刻まれたり外国人の捕虜が描かれた、ロゼットやタイルなどがある。この作品が作られた頃、エジプトファイアンスの色付けに使用する多様な金属の酸化物が現れたため、どんな色付けも徐々に可能になっていった。従って、バラ色や明るい灰色などのパステル調の中間色は、これ以前の時代に用いられていた原色の色階と一線を画している。

エジプト王と異国

ラメセス3世の治世は平穏なものではなかった。一方では、西方からリビア人が侵入し、他方では、地中海沿岸の国々を征服した「海の民」が北方から押し寄せてきたため、敵を撃退しなければならなかった。この戦いの光景は、メディネト・ハブの大神殿の壁に刻まれて残されている。しかし、王宮のエジプトファイアンスの装飾に表された民族は、治世下に実際に戦った民族ではなく、エジプトの隣国の民を表したものである。伝統的、また神話的とも言えるほど、ヌビア人、リビア人、シリア人は常にこのように描かれていた。王宮の装飾は、周辺国に対するファラオの支配を求めた公的なイデオロギーを反映していると言えよう。ここに表された異国人は、民俗学上正確な参考資料として描かれているわけではなく、むしろ象徴されて描かれたものである。

出典


Catalogue de l'exposition Les Pharaons, Venise, 2002, P. 435, notice n 117

M. ETIENNE, Heka - Magie et envoûtement dans l'Egypte ancienne, Catalogue d'exposition, Louvre/Editions de la Réunion des musées nationaux, Paris, 2000

Catalogue de l'exposition Pharaonen und Fremde, Vienne, 1994, p. 1994, notice n 386

作品データ

  • 壁のタイル

    新王国時代、第20王朝、ラメセス3世治世下(前1184-前1153年)

    エジプト、ナイル川のデルタ地帯南東、テル・エル=ヤフーディヤ、ラメセス3世王宮出土

  • ケイ酸質のファイアンス、表面に釉薬、ファイアンスの象嵌細工

    高さ9.5cm、幅7.1cm、厚み1.9cm

  • 1883年に購入

    シリア人捕虜

    E 7691 A, E 7691 B, E 7691 C, E 7691 D, E 25503, E 25504, E 25505, E 4855

  • 古代エジプト美術

    シュリー翼
    2階
    新王国時代:ラメセスの時代 紀元前1295‐紀元前1069年頃 ファラオ王朝
    展示室27

来館情報

ルーヴル美術館 パリ フランス
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開館時間
月・木・土・日:9時-18時
水・金:9時-21時45分(夜間開館)

休館日:毎週火曜日、1月1日、5月1日、12月25日
 
 

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