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作品 椅子

古代エジプト美術部門 : 新王国時代(前1550-前1069年頃)

椅子

© 1985 RMN / Chuzeville

古代エジプト美術
新王国時代(前1550-前1069年頃)

執筆:
Geneviève Pierrat-Bonnefois

この椅子は、エジプトの英国領事であったヘンリー・ソールトが1819年から1824年にわたって収集した見事な骨董品コレクションの一つで、その後、J.F. シャンポリオンの助言を受け、ルーヴル美術館が1826年に購入したものである。出所については何も分かっていない。新王国時代の古典的な椅子の典型でありながら、この作例は、そのバランスや保存状態において卓越している。

見事な保存状態

この椅子には幾つかの特徴が見られる。まず、3500年前の椅子にしてはあまりにも新しすぎる、という点である。疑いたくなるのも当然であるが、この椅子は複製ではない。脚の青い塗料は塗り変えられた可能性も高く、(座面の)革の籐張りは近代のものだが、それ以外は全て古い。このような良好な保存状態は、椅子が使われた時期、つまり紀元前1400年から紀元前1300年頃以降、一度も使用されなかったためと考えられている。つまり、墳墓の地下室に置かれてから盗掘されることもなく、人的破壊や、虫やカビの被害から逃れられることができたのである。エジプトの砂漠の乾燥した気候のなかで、有機素材でできた作品であるにもかかわらず、奇跡的な状態で保存されていた。地球上のいかなる場所より、よい条件が揃っていたと言える。

洗練された家具

この椅子は、ファラオ時代のエジプトの椅子の典型的な特徴を備えている。座面は比較的低く、ライオンの脚を持っている。傾斜した背もたれの最上部が、新王朝時代の流行を追って、後方に巻かれている。背もたれとそれを補強する垂直の板にはL字形の添木が重ねてあり、この優雅な側面のラインが、座面と背もたれの角度をやわらげている。また背もたれの中央部も背の形に沿って湾曲しており、上品さが感じられる。明暗の異なった二種類の木材を使用し、暗褐色の木には象牙の象嵌細工が施されて、碁盤模様のフリーズや二本の睡蓮が描きだされており、椅子を華やかにしている。家具職人は、楔(くさび)にさえ色調のコントラストを気遣うなど、洗練さの追及に余念がない。脚の青い塗料は、おそらくこの家具がヨーロッパに着いた19世紀に塗り変えられたものと思われる。しかしながらこの色は新王国時代に用いられた色彩と一致している。というのも、これに似た青い脚の椅子の絵画が、王家の谷にある墓のひとつで保存されていたからだ。

ディレクトワール様式の前身

1799年、ナポレオン・ボナパルトのエジプト遠征に同行した芸術家たちは、王家の谷の絵画を模写したが、いつの日かそれに似た実物の家具がルーヴル美術館にお目見えするとは夢にも思わなかっただろう。この椅子は、1819年から1824年にエジプトに駐在した英国領事ソールトが取得し、その後、4000点以上にのぼる収集作品一式が、ルーヴル美術館に売却された時に一緒にもたらされたものである。当時の美術愛好家たちは、動物の脚、背もたれの湾曲、上部の渦巻きの形など、この椅子があまりにもディレクトワール様式に似ているのを見て、驚きと感動を禁じえなかった。かつて18世紀末の人々の好みで描かれた古代美術のビジョンが、実際の作品と一致していたことが、この椅子に限っては証明されたことになる。

出典

- DELANGE E., in Trésors du plus grands musée du monde, Paris, 1991, p. 73.
- PIERRAT G., in Le Louvre, Guide des collections, Paris, 1989, p. 122.

作品データ

  • 椅子

    新王国時代、第18または第19王朝、前1550-前1186年

  • 自然木材、着色された木材と象牙を使った象嵌細工、近代の革紐、かつて縄あるいは籐で覆われていた木工細工、高級指物細工

    高さ91cm、幅47.5cm、奥行き59cm

  • 1826年にソールトコレクションから購入

    N 2950

  • 古代エジプト美術

    シュリー翼
    1階
    住宅と調度
    展示室8

来館情報

ルーヴル美術館 パリ フランス
地下鉄:1番線または7番線、Palais-Royal Musée du Louvre 駅
 
開館時間
月・木・土・日:9時-18時
水・金:9時-21時45分(夜間開館)

休館日:毎週火曜日、1月1日、5月1日、12月25日
 
 

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