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作品 泳ぐ乙女の形の「化粧スプーン」

古代エジプト美術部門 : 新王国時代(前1550-前1069年頃)

泳ぐ乙女の形の「化粧スプーン」

© Musée du Louvre/C. Décamps

古代エジプト美術
新王国時代(前1550-前1069年頃)

執筆:
Geneviève Pierrat-Bonnefois

このような木に彫られた美しい小彫像を、美術書でよく目にする。「泳ぐ乙女の形のスプーン」と呼ばれており、スプーンの上で鴨が羽を開くように装飾されているものもある。この魅力的な作品は、古代エジプト美術部門で最も有名な作品の一つで、一見、単なるスプーンに見えるが様々な象徴を含んでいる。

泳ぐ乙女

裸体の乙女は水平に横たわり、首飾りとベルトで身を簡素に飾り、両腕を前に伸ばして受け皿を持っている。美しい完璧な線を描く身体には、異なった木材に彫られた頭部と首が直角に付けられているため、不自然な感じを与えている。近づいて観察すると、頭部は両腕の付いている間、つまり肩の上ではなく、背中の上部に付けられていることに気が付く。これにより乙女を正面から見た時に、頭部とその台座になっている首飾りが、受け皿に付いているかのように見える。さらに頭部は、身体に比較して大きく描かれ、髪型、目、首飾りは黒い絵の具で引き立てられている。

奇妙な体

しかしながら、目は、見てすぐに快いこの女性像の魅力にとらわれてしまうので、この奇妙な体形には気が付かないものだ。写実的な体形に加えられた身体のゆがみは、彫り師によって計算され、故意に作られ、二つの異なった視点から楽しめるように作られている。つまり、水平に泳ぐ身体と、視点を変え正面からは、頭部と受け皿からなる乙女の胸像が見えるように仕掛けてある。それゆえ、頭部は身体より大きい比率で描かれたわけだ。エジプト人は、このように様々な視点から描いた各部分を組み合わせて、一つの彫像や図像を制作した。対象を忠実に再現することではなく、創作にメッセージや意味を含めることを重視した。

お守り

この小像に象徴されているものは二つある。まず第一に、乙女の小像は、万国共通に愛を象徴し、さらに、生命の継続が約束される意味がある。第二に、受け皿は、エジプトのカルトゥーシュの形をなし、楕円形の皿を囲む結った縄が図案化されて描かれている。通常カルトゥーシュの縄は王名を囲むもので、投げ縄のように、王の権力が、その囲まれた空間を支配していることを象徴する。この作品では、縄は、ティラピアの一種で通称「ナイル鯉」で知られる魚が3匹、睡蓮の茎を噛んでいる様子が彫られた皿の周囲を囲んでいる。ティラピアは、受精卵を口の中で孵化させるので、エジプト人にとって、再生や性的行動を象徴した。呪術的な図像が持つ効力を備えたこのようなオブジェは、スプーンを所有する者に幸福をもたらしたものに違いない。通常は「化粧スプーン」と呼ばれているが、はっきりした汚れや染みが残っていないことから、実際の用途は確証されていない。壊れやすく、繊細で美しいこの品は、美術品であるとともに、性生活あるいは単に日常の暮らしに幸福をもたらすお守り、あるいは魔よけだったのではないかと推測される。

出典

- VANDIER D’ABBADIE J., Musée du Louvre Département des Antiquités Egyptiennes - Catalogue des objets de toilette égyptiens, Editions de la Réunion des musées nationaux, Paris, 1972, p. 12-13, notice n° 5.

- LOBSTEIN D., « Objets de toilette ou objets de culte ? A propos des cuillers « à la nageuse », in La  Revue du  Louvre et des Musées de France, 1984, tome 4, p. 236-238.

作品データ

  • 泳ぐ乙女の形の「化粧スプーン」

    新王国時代、第18王朝末期、前1400-前1300年頃

  • 部分的に彩色されたイナゴマメの木彫刻(丸彫り)

    長さ34cm、幅7cm

  • 1834年に購入

    N 1704

  • 古代エジプト美術

    シュリー翼
    2階
    新王国時代:再征服からアメンヘテプ3世まで 紀元前1550‐紀元前1353年頃
    展示室24

来館情報

ルーヴル美術館 パリ フランス
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開館時間
月・木・土・日:9時-18時
水・金:9時-21時45分(夜間開館)

休館日:毎週火曜日、1月1日、5月1日、12月25日
 
 

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