Go to content Go to navigation Go to search Change language

ホーム>作品と宮殿>コレクションと学芸部門>通称《カール5世の水差しと大皿》

通称《カール5世の水差しと大皿》

© 2010 RMN / Jean-Gilles Berizzi

工芸品
ルネサンス

執筆:
Muriel Barbier

この水差しおよび大皿は、大皿に記入されている銘がそれを示しているように、1535年のカール5世によるチュニス征服を記念するための作品である。1534年夏、大王バルバロッサはチュニスを占領したが、冬に入って、カール5世は太守の力を抑えるため、そして多数のキリスト教徒奴隷を解放するため、戦争の準備を整える。アントワープで制作されたこの一式の水差しは、それゆえに歴史的資料としての価値ももってくるが、それは同時に、16世紀フランドルの金銀細工の発展を示す絢爛たる例でもあるのだ。

称揚されるチュニス征服

円形の大皿には、征服の情景がいくつも描かれている。皿の肩には、上陸、野営、そして、両軍の交戦やラ・グレット(チュニスへと導く運河)への砲撃に関するさまざまな挿話が描かれている。そこには、不自然な話の区切り方は一切なく、連続しているように見えるそれぞれの挿話が、調和の取れた全体を構成している。皿の内側に描かれているのは、ラ・グレットの奪取、戦闘、奴隷の解放、町の細部、そしてカルタゴのローマ時代の遺跡である。卵形の胴をもち、小型の台座に載った水差しでも、同じ図像表現が用いられている。フリーズには上陸の光景が描かれ、水差しの肩と下の部分では、戦いの賞杯が飾られている。
この主題はすでに、チュニス占領を描くための御用画家であったジャン・ヴェルメイエンによって取り上げられている。ヴェルメイエンは、オーストリアのマルガレーテ、続いてハンガリーのマリアにそれぞれ仕えたが、カール5世に仕えるようになった際には、チュニスのタペストリー装飾の下絵を制作していた。それゆえ、ヴェルメイエンがこれら二つの金銀細工作品の原型制作に携わっていたとしても、決しておかしくはないのである。

マニエリスムの二作品

水差しと大皿とは、ルネサンス期の間によく作られた作品である。その持ち主の富と権勢とを誇示するため、それらは飾り戸棚の中に飾られるのが習わしであった。ルーヴルの大皿と水差しの形状は、ヨーロッパのマニエリスムを明らかに示している。水差しの注ぎ口には、貝殻を冠(かぶ)り物とし、肩を二つの貝殻で飾った、女性の胸像をあしらってある。取っ手は、サテュロスの腕の周囲にからみあう二匹のヘビからなっており、サテュロスは水差しの肩に腰掛け、襲いかかるヘビたちから逃れようとしている。この、貝殻を戴く女性の半身像で飾られた注ぎ口、またヘビをかたどった取っ手を持つ水差しの形状は、すでに1533年から1540年にペリーノ・デル・ヴァーガによって採り入れられており、ローマにおけるデル・ヴァーガの作品の意匠が、カール5世の水差しのモデルとなったとしてもおかしくはない。モチーフの各要素がきわめて強調的に施されている点、また、軽めの打ち出し細工で表現された物語的情景の精緻さは、マニエリスムの金銀細工作品に共通のものである。

文化の中心地アントワープの隆盛

これらの作品に入れられている刻印のなかには、アントワープ市のものが見られる。アントワープの金銀細工職人は、自分の作品に三つの刻印を入れなければならず、さもないと罰金を払わされた。一つは親方の、もう一つは同業者組合の、そしてもう一つは制作年のそれである。アントワープは、17世紀には隆盛を極めた港町であった。人々の財力の発達が、奢侈品産業、とりわけ金銀細工業の発達を促したのである。金銀細工職人も裕福であった。というのも、彼らの中には、ホラント地方のゼイプ市からウィレムスタット市までのポルダー(干拓地)を干拓するため必要な資金を提供することができた者もいたからである。これらのフランドル人は、ドイツ人らと長期にわたってつながりを持っていたことが考えられ、それが、このカール5世にまつわる一揃いの作品と、ドイツの金銀細工との形態的な類似の説明となり得るであろう。しかしながら、この水差し一式の作者は、そのPTRの刻印があるだけで、未詳のままである。

出典

Carolus Charles Quint, 1500-1555, Gand, 1999-2000, p. 288.
Destrée J., L'Aiguière et le plat de Charles Quint conservés dans la galerie d'Apollon à Paris, Bruxelles, 1900.

作品データ

  • アントワープ、P.T.R.の工匠

    通称《カール5世の水差しと大皿》

    1558-1559年

    ベルギー、アントワープ

  • 金めっきの銀、溶融銀に打出し細工および彫刻を施し金めっきしたもの、青の琺瑯

    高さ43.5 cm直径64.5 cm

  • 元シメー大公フィリップ=ガブリエル・コレクション、1793年接収、中央美術館へ収蔵

    MR 341, MR 351

  • 工芸品

    リシュリュー翼
    2階
    アドルフ・ド・ロスチャイルド
    展示室25

来館情報

ルーヴル美術館 パリ フランス
地下鉄:1番線または7番線、Palais-Royal Musée du Louvre 駅
 
開館時間
月・木・土・日:9時-18時
水・金:9時-21時45分(夜間開館)

休館日:毎週火曜日、1月1日、5月1日、12月25日
 
 

チケットを購入する