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高貴な牧歌画の壁掛け

© 2011 Musée du Louvre / Philippe Fuzeau

工芸品
中世

執筆:
Marie-Hélène de Ribou

このタペストリーは3点からなる壁掛けのうちの1点で、一般に高貴な牧歌画の壁掛けと呼ばれる。「牧歌画」と言われるのは、タペストリーに羊飼いたちの様々な活動が描かれているからで、「高貴な」と形容されるのは、主として羊飼いに扮した貴公子や貴婦人が登場するからである。こうした牧歌的情景は、きわめて装飾的であると同時に、聖書場面の大掛かりな続き物を制作するより安価だったため、中世末にヨーロッパ中で大流行した。

牧歌的情景

このタペストリーには羊毛にまつわる作業の3段階が描かれている。右手には若い娘が雌羊を抱えて座り、毛を刈ろうとしている。彼女の衣服は、襞がたっぷりとってあるとはいえ、明らかに農民のものである。腰には梳き櫛が括りつけてあるが、上部に見えるように、娘は手で力強くむしっている。中央には若い男が立ち、羊毛の玉を糸巻きか紡ぎ車に据えられたかせに巻き取っている。優美な胴衣は、男が高貴な身分であることを物語る。襞のある白で幅広のベルトには、羊飼いならではの様々な道具がぶら下がっている。中でも、中央に「鋭利な」ナイフが認められる。この2人は、牧杖というまぎれもなく羊飼いの小道具を持っているが、これは先端が小さなシャベルになった一種の長い棒である。左手には若い娘が、膝にリボン編み機という、女性が飾り紐やリボンを作るのに使った携帯用小型織機を抱えて座る。杼が3つ腰から下がっており、4つ目は彼女が手にしている。娘は薄手のブラウスとたっぷりとしたスカートを身につけ、その上に流れるような襞のあるゆったりとしたドレスをまとっている。

壁掛けの装飾的な機能

調度品としての機能をもちながら、タペストリーはきわめて装飾的な役割を担っていた。14世紀すでに、田園生活や畑仕事を想起させる情景が高く評価されていたことが、数々の目録に言及されている。しかしこうした表現は、かなり忠実に再現してあるとはいえ、常に理想化されたものだった。このタペストリーは、その百年余り前にジャン・ド・ブリーが礼賛した羊飼いの牧歌的なイメージを、とりわけよく描き出している。この元羊飼いだった人物は、シャルル5世の求めに応じてよき羊飼い論を著した。職人たちは何世紀にも渡って、この著作に着想を得、図像上の貴重な情報を求めていた。
右上の隅にあるトマ・ボイエとカトリーヌ・ブリソネの紋章からは、彼らが1524年以前にこの壁掛けを所有していたことがわかるが、この人物が注文主だったかどうかは不明である。というのは、この紋章が縫い付けてあるようだからである。

小花模様の地のタペストリー

人物は、まったく遠近感のない小花模様の背景に貼り付けられている。中世の織物職人は、カルトン〔下絵〕から切り取った人物の絵を使うことが多かったが、こうした人物の絵は必要に応じて色々な壁掛けで使い回されることもあった。本作品の構成はとくに巧みで、同じ縮尺の人物像が集っており、3人が同じ面に均等に配置されている。そのため、これらの人物はこの壁掛けのために描かれ、その後ほかのタペストリーに再利用されたと考えられるだろう。
織物職人は、小花模様の背景を制作するにあたって思う存分に想像力を発揮し、植物がそこら中に配され様々な動物でにぎわう、文字通りの花畑を作り上げた。1本だけ生えている木が、奥行きを生み出そうとしているようである。

出典

Claudette Joannis, "Essai d'interprétation ethnographique d'une tenture médiévale", in La revue du Louvre et des Musées de France, n 5/6, décembre 1982, pp. 335-340.

Pierre Verlet, "Les tapisseries de la donation Larcade", in La Revue des Arts, vol. 1, 1951, pp. 24-30.

作品データ

  • 高貴な牧歌画の壁掛け

    16世紀初め

    セラン城(メーヌ・エ・ロワール県)

    フランドルあるいは北フランス

  • タペストリー、羊毛と絹

    高さ2.20m、幅3.19m

  • 1945年エドゥアール・ラルカードより遺贈

    羊毛にまつわる作業

    OA 9408

  • 工芸品

    リシュリュー翼
    2階
    ラルカード
    展示室10

来館情報

ルーヴル美術館 パリ フランス
地下鉄:1番線または7番線、Palais-Royal Musée du Louvre 駅
 
開館時間
月・木・土・日:9時-18時
水・金:9時-21時45分(夜間開館)

休館日:毎週火曜日、1月1日、5月1日、12月25日
 
 

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作品の補足情報

トマ・ボイエ(シャルル8世、ルイ11世およびフランソワ1世の治世に王室財務行政官を務めた人物。1524年死去)と妻カトリーヌ・ブリソネの紋章