Go to content Go to navigation Go to search Change language

ホーム>見学と文化活動>見学コース>ウジェーヌ・ドラクロワ

見学コース ウジェーヌ・ドラクロワ, 描くということに対する激しい欲望

絵画 - 所要時間:1h30 - 見学日: 月 水 金 土 日

学校団体

ウジェーヌ・ドラクロワ《サルダナパールの死》(部分)
ウジェーヌ・ドラクロワ《サルダナパールの死》(部分)

© Musée du Louvre / Angèle Dequier

00イントロダクション

「道理をわきまえた絵画は好まない。」ウジェーヌ・ドラクロワ(1798-1863年)は、自身の日記でこのように断言しています。画家が波乱に満ちた航海へと私たちをいざなっています。時より狂喜や歓喜が訪れる苦悩や恐怖、絶望が次の寄港地です。

ドラクロワは神話や文学、東洋、当時の歴史から主題を汲み出し、かき立てられた感情に形を与えました。大小様々なサイズの作品が、意図的に年代の序列に関係なく展示されています。私たちの心の琴線に触れる、私たちの心を揺さぶりさえする色彩や光、動きを画家はどのように演出しているでしょうか。ドラクロワとともにこの船に乗り込み、彼の描くことに対する激しい欲望に身を任せてみましょう!

 

次の作品までのルート :

ピラミッド下のドゥノン(Denon)と書かれた入り口からお入りください。チケットを見せた後、右に曲がってください。左手にあるエレベーターKで2階に上がります。左方に進み、フランス絵画の大作展示室77に入ってください。

《地獄のダンテとウェルギリウス》
《地獄のダンテとウェルギリウス》

© Musée du Louvre/A. Dequier - M. Bard

01《地獄のダンテとウェルギリウス》

ドラクロワ最初の公式作品《地獄のダンテとウェルギリウス》は、13-14世紀のイタリアの作家ダンテの『神曲』から着想を得ています。ラテン詩人のウェルギリウスが、作家ダンテを手ほどきの旅へと案内しています。ドラクロワは、この戯曲を用いて規範を失った人間性に対する感情を描写しました。

ここに地獄が描かれています。背景に描かれた地獄の炎の赤い光と、前景の人物像の青白い光に注目してください。暗闇に満ちた地獄の恐怖を表現しています。作品に近づいてみましょう。そして、恐怖で目を見開き、苦悩で顔を歪ませた裸の人々の表情とねじれた身体の様子をじっくり観察してみてください。必死で小舟にしがみつこうとする罰を受ける者たちの恐怖を、私たちに味合わせようとしているかのようです。この嵐のような情景の中にいる二人の詩人の姿をご覧ください。ダンテは赤い帽子で顔を覆い、ウェルギリウスの顔の下には、白い布地が見えます。渡し守の小舟の上に佇んで、二人はこのカオスを眺めています。中央には、ほぼ重なり合った彼らの手が見えます。

 

次の作品までのルート :

左に進み、展示室77、76、75を通り抜けます。左手の階段を、サモトラケのニケに向かって下りた後再び上ります。アポロンの円形の間、展示室34、74を抜け、出た所右側のエスカレーターCで3階に上り右側の展示室62まで進んでください。

Hamlet et Horatio au cimetière
Hamlet et Horatio au cimetière

© 2010 Musée du Louvre / Angèle Dequier

02《墓地のハムレット》

シェイクスピアの戯曲第5幕の中で、ハムレットは、婚約者の葬列をホレーシオと共に待ちながら、存在の儚さについて思い巡らせます。この苦悶を表現するために、ドラクロワは『ハムレット』を主題として繰り返し用いています。左側に同じ主題を扱った小さな作品が展示されています。

まずはこの頭蓋骨を見てください。墓堀人のこれ見よがしのしぐさが不快な印象を与えてはいないでしょうか。視線の向かう所を想像し、丘陵、小道、背を向けた人物の指が形作るラインを辿ってみてください。全てが墓から掘り出されたこの頭蓋骨に集中していることが分かります。続いて色彩の効果にご注目ください。青・灰色・黄色の空と土色の地面が陰鬱な世界を作り上げ、人物の激しい苦悩と共に重苦しい雰囲気を創り出しています。ハムレットは、喪の色である黒で覆われ、その顔は滑らかで、繊細な指はつかの間の青年期を強調しています。

 

次の作品までのルート :

同室右側で直角に交わる壁にかかる絵をご覧ください。

Noce juive au Maroc
Noce juive au Maroc

© Musée du Louvre/A. Dequier - M. Bard

03《モロッコのユダヤ風結婚式》

ドラクロワは、制作活動における重要な行程となったモロッコ旅行から多くの手帳を持ち帰りました。クロッキー、水彩画、覚書といったこの宝物をもとに、画家は穏やかな作品をいくつも制作しています。婚礼を描いたこの作品もそのひとつで、ドラクロワは実際にタンジールで式に出席していることが分かっています。

光と影の対比が場面にもたらす奥行きをじっくりとご覧ください。国際色豊かな会衆に目を向け、その異なるポーズやしぐさ、視線にも注目してください。さらに作品に近寄ってみましょう。その細かな筆づかいによって再現されたオリエンタルな色彩が放つ輝きをご覧いただけることでしょう。中央のがらんとした白い壁は、一体何を喚起しているのでしょうか。おそらく花嫁の不在を示しているのでしょう。扉や窓といった様々な開口部が私たちの好奇心をそそります。何か重要なことが室内で起こっているようです。

同室反対側の壁の右側には、画家の自画像が展示されています。

 

次の作品までのルート :

展示室64から69を抜け、展示室71へ進みます。

Jeune orpheline au cimetière
Jeune orpheline au cimetière

© Musée du Louvre/A. Dequier - M. Bard

04《墓場の孤児》

ウジェーヌ・ドラクロワが初期に制作したこの絵画は、長い間《キオス島の虐殺》の下絵であると考えられていました。作品のタイトルを見なくても、この絵が発する悲しみを感じ取ることが出来るでしょう。

とても正確に引かれた輪郭線をまずは観察してみましょう。この輪郭線は、荒涼とした墓場と空とが描かれているぼやけた背景から、若い娘を浮かび上がらせています。繊細に表現された絶望感にも注目してください。涙は隈のある目の端で玉になり、口は僅かに開けられ、身ごろは滑り落ちて肩をあらわにし、手は腿の上に無気力に置かれています。人物の右側のうなじと首の上に最も暗く描かれた影の描写にも注目してください。また、風景と衣服の冷ややかな色階が、全体の感情にどれほど寄与しているかも注目に値するところです。作品に近づき、孤独の印象を高めている顔と肩の繊細な起伏や、布地に見られる軽やかなタッチをご覧ください。

それにしても、この孤児は枠の外に何を見ているのでしょうか?

 

次の作品までのルート :

同室右側の作品をご覧ください。

Le prisonnier de Chillon
Le prisonnier de Chillon

© Musée du Louvre/A. Dequier - M. Bard

05《シヨンの囚人》

この絵画は19世紀のイギリスの詩人バイロンの詩を引用しており、16世紀のジュネーヴの著名な政治家フランソワ・ボニヴァールを称えています。権力に抵抗したためレマン湖のほとりにあるシヨン城に投獄された彼は、兄弟の死を眼前にしてしまいます。囚人に課された暴力と、その無力さに画家は関心を抱いたのです。

独房の中へと入っていきましょう。目は次第に暗闇に慣れ、囚人の体に表れる緊迫感をとらえることでしょう。さらに近くに寄って、柱に押し付けられた足、絶望的に伸ばされた体と腕、そして視線が作り出す光を当てられた直線を辿ってみてください。囚人を繋いだ鎖にも注目してみてください。こんなにすぐ傍にいるのに囚人の手は届きません。手を伸ばす囚人と暗闇の中でうずくまって死んでいく兄弟が対照的に描かれています。最後に茶とオークルの色彩に注目してください。抑えられた薄暗い色階が表現力を豊かにし、捕虜が大変動物的に描かれています。

 

次の作品までのルート :

次の展示室72へ進んでください。

Rébecca enlevée par le Templier
Rébecca enlevée par le Templier

© 2010 Musée du Louvre / Angèle Dequier

06《レベッカの掠奪》

ウォルター・スコットの歴史小説『アイヴァンホー』から引用されたこの主題は、中世の人物像を描き出してます。ドラクロワは、力強いタッチや豊かな色彩を可能にする殺害 、掠奪、犠牲といった悲劇を物語ることを好みました。

作品の左側に立ち、横からのアングルで作品を眺めてみましょう。下部の梁から馬の臀部とたてがみ、レベッカ、そして空に立ち上る煙へと視線を指で辿ってみてください。めまぐるしい喧噪の中で荒々しい掠奪をありのままに捉えている作品を、この「S字」のカーブが構成しています。上半身とうなじを後方へ反らし、ヒロインが激しく抗う様子をじっくりとご覧ください。次に正面に立って、混沌とした夜の中に散りばめられた赤、オレンジ、黄色と白い色彩に注目してみましょう。この暖色と白のコントラストが劇的な激しさと若い娘の恐怖とを表現しているのです。

 

次の作品までのルート :

同室右側の直角に交わる壁にかかる絵をご覧ください。

Médée furieuse
Médée furieuse

© R.M.N./G. Blot

07《激怒のメディア》

ドラクロワがこの作品で取り上げているのは、ギリシャ悲劇に登場する神話上の人物メディアです。イアソンに裏切られ捨てられたメディアは、復讐としてイアソンとの間にできた二人の子供の殺害を選びます。

二人の子供と母親がひとつになりピラミッドの形を作り上げています。この身体の密接が母性的な情熱を喚起しています。左側から洞窟の中に光が入り込み、ふくよかな肉体に官能的に起伏をもたらしています。追い詰められたこの女性は、我が子を守るべく逃げているのでしょうか。それとも殺害するためでしょうか。洞窟、土、草といった景観の中や、メディアの顔にかかった影や髪、荒々しいしぐさ、子供たちの目や腕など人物像において、残酷さを表現しているいろいろな要素に注目してください。愚弄された女王の王冠型髪飾りなどの豪華な宝飾品がこの残忍さと対照的であります。メディアの決意はその横顔と短刀の上で握られた拳に表れており、その怒りは衣服の赤と茶の色彩の中に表現されています。

 

次の作品までのルート :

順路を戻りエスカレーターCで2階に下りてください。左に曲がって《サモトラケのニケ》までの展示室を通り過ぎます。階段を二つ降り、右側の大判のフランス絵画が展示されている赤の間の方向に上ってください。再度展示室75・76・77を通り抜けます。次の作品は右側中央に展示されています。

Scène des massacres de Scio ; familles grecques attendantla mort ou l'esclavage
Scène des massacres de Scio ; familles grecques attendantla mort ou l'esclavage

© R.M.N./H. Lewandowski

08《キオス島の虐殺》

この大きな作品の主題は、19世紀初頭のギリシャ独立戦争です。トルコ人に抵抗した何千というギリシャ人がキオス島で虐殺されました。

照らし出された人々の顔つきと身体に視線を固定したまま左から右へと移動してみてください。貧窮、恐怖、疲労が表情から読み取れることでしょう。敗北者たちの衰弱した裸の体つきが戦争の残酷さを物語っています。作品に近寄り、短刀の刃に注目してみましょう。瀕死の二人の体の上を血と涙が流れています。軍服姿の武装した征服者たちは影の中に追いやられ、犠牲者たちの不吉な運命を予兆しています。

作品から少し離れて上方に描かれた遠景へと視線を移してください。暗い部分と明るい部分が交互に入れ替わり、激しい戦闘の後の惨憺たる風景を作り上げています。また曖昧なタッチがこの悲痛な印象をかもし出しています。

 

次の作品までのルート :

続いて、左にある絵を見てください。

《アルジェの女たち》
《アルジェの女たち》

© 2007 Musée du Louvre / Angèle Dequier

09《アルジェの女たち》

アラブを旅したドラクロワは、アルジェでひっそりとハーレムを訪れました。ドラクロワ最初の大作《アルジェの女たち》は、この旅から想を得ています。この作品について同時代の詩人ボードレールは「安らぎと静けさに満ちた室内の小さな詩」と書き残しています。

まずは作品から漂いだす穏やかさを感じてください。そして場面を満たす光を味わってください。画面全体を覆う光が色彩と形状に変化をもたらし、絶えず視線へと訴えかけてきます。多様なモチーフも観察してみてください。色彩が混じりあい、洗練された色使いを作り上げています。下女の呑気な様子とアラブの美女たちの気だるそうな姿勢に注目してください。さまよう視線や手足が、静的な無気力感を帯びています。作品に近寄ってみましょう。タピスリーやクッション、タイル張りの床の光沢のなさと鏡や宝飾品、絹地、ガラスなどのきらめきといったマチエールの効果をじっくり眺めてみましょう。絵具の厚塗りや細やかな筆さばきが、息苦しく閉ざされた雰囲気を再現しています。

 

次の作品までのルート :

左の作品をご覧ください。

Mort de Sardanapale
Mort de Sardanapale

© 2010 Musée du Louvre / Angèle Dequier

10《サルダナパールの死》

古代アッシリアの伝説の王サルダナパールは、反乱軍への敗北という恥辱を免れようと、宮殿に薪を積み上げ犠牲の火をつけるよう命じました。女や奴隷、馬が虐殺され、続いて王が自らの命を捧げました。極限を描写する画家ドラクロワは、この主題で惨劇の様子を表現しています。

何たる混沌でしょう!私たちは一体どこにいるのでしょうか。描かれた人物を二人一組に分け観察してみてください。王と寝台の上で意識を失っている妾、左手前方には白馬とそれをひく黒人奴隷、右手には裸の女とその背中を短刀で刺す男・・・絵を見る者の目から指標を奪うかのように、全てが画面上で四散しています。
作品から少し離れて目を細め、滝のように上下左右へと流れる赤や黄色の暖色とまばゆい光の白に注目してください。オブジェや布地、宝飾品の色彩とそり返った身体は極度の贅沢と悦楽を表現しています。この荒々しく激しい場面において、王の冷然とした態度が衝撃的です。

 

次の作品までのルート :

この見学コースはここで終了です。右手に戻り、展示室77を抜け、展示室76内に設置されたエレベータ-Kで中二階に行き、ピラミッド下のナポレオンホールへ戻ります。

 

執筆: :

Yuko GRIVOTET-OKADA