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見学コース ファラオ時代のエジプト人の日常生活

古代エジプト美術 - 所要時間:1h30 - 見学日: 月 水 木 金 土 日

学校団体 一般団体

エジプトの家屋
エジプトの家屋

© Musée du Louvre

00イントロダクション

シュリー翼を通って、スフィンクスが展示されている礼拝堂地下室の左手にある階段を登ると、エジプトの高官、ナクトホルヘブの彫像が方形宮南翼棟で皆さんを出迎えてくれます。この南翼棟を、北と南に交互に見ながら進むと、ファラオの時代に生きたエジプト人の暮らしの様々な側面を垣間見せてくれる品々が、第3から第10展示室に展示されています。第3展示室の2番陳列ケースには、エジプト人に食料をもたらすナイル川を主題にした作品が紹介されており、ここからエジプトの世界に入って行きます。

パピルスの書、農耕の道具、楽器、化粧道具の大部分は墓で発見され、エジプトの乾燥した気候のおかげで極めてよく保存されています。これらの品を通して様々な角度から古代エジプト人の生活に触れ、神殿の文化だけではなく、日常生活の文化をも垣間見ることができます。
リシュリュー翼の1階にある第3から第10展示室までは、農業経済、会計、文字、職人や芸術家の技巧を物語る品々が展示され、エジプトの自然環境、そしてエジプト人がどのように自然を活用し開発していったのかが紹介されています。また、家庭生活、体操、音楽、ゲームをテーマとしたものも見ることができます。
麦を入れる椀や、椅子などの品は、見てすぐに用途が分り、鑑賞するにあたって説明を必要としません。ところが、エジプト人は自分達にとって当然と思われることは書き残さなかったので、中には解釈を要する作品もあります。例えば、透かし浮彫りで装飾を施した木製のスプーン (第9展示室3番陳列ケース) が、実際のところ何に使われていたのか正確には分かっていないのです。スプーンといっても使用された痕跡が全くない上に、壊れやすい作りになっているからです。
墓を装飾していた浮彫りや壁画から(第4、第5展示室)、エジプト人がどのような人生観を持っていたのかがわかります。しかし墓に描かれた図像は、その墓主の死後の生活に役立つようなものだけが選択されて描かれているので、特殊なものであることを心に留めておく必要があります。


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シュリー翼を通って、スフィンクスが展示されている礼拝堂地下室の左手にある階段を登ると、エジプトの高官、ナクトホルヘブの彫像が方形宮南翼棟で皆さんを出迎えてくれます。この南翼棟を、北と南に交互に見ながら進むと、ファラオの時代に生きたエジプト人の暮らしの様々な側面を垣間見せてくれる品々が、第3から第10展示室に展示されています。第3展示室の2番陳列ケースには、エジプト人に食料をもたらすナイル川を主題にした作品が紹介されており、ここからエジプトの世界に入って行きます。

Modèle de bateau
Modèle de bateau

© Musée du Louvre/C. Larrieu

01舟の模型

ここには、様々な素材を使い、異なる時代に作られた、ナイル川に生息する魚、ワニ、カバ、カエルの像が、そして、ナイル川を航行する船の模型が展示されています。ナイル川は、重い物資の輸送に欠かせない主要な交通路でした。
対岸との間を行き来するための橋がまだ存在しなかった古代では、船を所有することは裕福であることの証でもありました。
中王国時代初期の墓には、木に彩色を施して作られた、仕事をする人々を表した模型が置かれていましたが、その中でとりわけ多く見かけられるものが、乗組員が乗っている船の模型であるということからも、古代エジプト人にとっていかに船が重要なものであったかが分っていただけると思います。模型の船室には、船主が手に花を持って座っているのが見えます。

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窓側の向側の壁には、ナイル川に生息する魚の浅浮彫が展示されています(3番陳列ケース)。

浅浮彫: ナイル川の魚、釣りの光景
浅浮彫: ナイル川の魚、釣りの光景

© Musée du Louvre/C. Décamps

02ナイル川の魚、釣りの光景

これは、沼地で釣りをしている光景を表した浅浮彫の一部で、ナイル川に生息する動物たちが水の中にひしめき合っているのが見えます。舟の上には釣り人の足と、その前方に銛の先端が描かれていますが、水中の動物の大きさと比較すると、縮尺率が無視されて描かれていることに気が付きます。また、それぞれの動物の縮尺率も正確に描かれていません。ワニとカバがそれぞれ2匹、植物の茎にのった蛙が1匹、その他に様々な種類の魚が多数、極めて忠実に描かれています。この忠実な描写のおかげで、すべての動植物の種を特定することができ、例えば、描かれている水草がPotamogeton lucens(ヒルムシロ科の水生属)であることが分ります。詳細な注解が付いたデッサンは、まるで博物学の挿絵のような正確さで描かれているので、その動物の名を知ることができるのです。これは、ナイル川がエジプト文化においていかに重要な存在であったかを物語っています。今日でも昔と変わらず、人々がナイル川の岸辺で、農地を潤すため灌漑用の水を汲んだり、涼んだり、食事の魚を釣ったり、あるいは気晴らしに散歩する姿を見ることができます。

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第4展示室に移動すると、入って右側の奥の壁に『マスタバ墓、野良仕事の光景』がそびえています。これは、古王国時代の名士アケトヘテプのマスタバ墓の礼拝堂を、近年になって復元したもので、中に入ると、1903年にエジプト政府から購入した浅浮彫を、本来の配置に則して再現した壁画を見ることができます。

アケトヘテプのマスタバの礼拝堂
アケトヘテプのマスタバの礼拝堂

© Musée du Louvre/C. Larrieu

03アケトヘテプの墓の礼拝堂

マスタバとは、アラビア語でベンチと言う意味で、古王国時代の裕福な人々の墓の上に建てられた、内部に装飾を施した礼拝堂を指し、遺族をはじめ、故人に会いに来る人々を迎える場所でした。ルーヴル美術館のマスタバにある浅浮彫の壁画には、ある領主の農地を表した場面や、音楽や舞を楽しみながら食事をする場面など名士の暮らしの一部始終が描かれています。この壁画には埋葬的な意味もあり、死者が冥界で生き残れるようにという目的のために全てが描かれていることに心を留めなければなりません。
奥には、呪術的な意味合いを持つ、大きな「偽扉」が二枚あります。死者はこの扉を通して地上にいる生者と会話ができると信じられていました。左の小さい方の面には、大きな家畜を飼育している光景が、次いで農耕生活の様子と、農夫にとって毎年繰り返される辛い場面、つまり収穫を報告し書記がそれを記録している姿が見えます。その下には、乗組員を大勢乗せた大きな船が「偉大な神の住む供物の野」への旅に出航する場面が描かれています。戸の反対側には、カバ狩りの場面や、あらゆる種類の魚が大量に網に掛かっている様子が描かれ、その下には、デルタ地帯にある領地の視察から戻る船が、帆を揚げ北風を受けながら、ナイル川を上っていく光景が見えます。
奥の右側に位置する次の小さい面には、冥界で領主が生き延びられるように、領主の食事の場面と、各領地を代表する農婦たちが列をなしてその領地の特産物を運んでいる様子が描かれています。
マスタバの入り口の廊下の右側には、墓主の埋葬用の彫像が、左側には、墓主のために働いた機織工に褒美を配っている様子が刻まれています。

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その向側には、新王国時代の礼拝堂を想い起させる、ウンスーの墓の礼拝堂にあった壁画が展示されています(3番陳列ケース)。この壁画は、収穫と農地を準備している光景を表しています。

ウンスーの墳墓の壁画 農作業場面
ウンスーの墳墓の壁画 農作業場面

© 2008 Musée du Louvre / Christian Décamps

04収穫と農地の準備

泥土の上に描かれたこれらの絵は、ウンスーの墓の岩窟礼拝堂の入り口を装飾していた壁画の一部で19世紀初頭に墓から採取したものです。とても壊れやすいものなので、断片になっていた物を当美術館で、本来こうであったのではないかと思われる配置で再現したもので、欠落部分が多かったにもかかわらず、壁全体を構成する三段を繋げて再現することができました。ウンスーという人物は、テーベにあるアメン神殿の穀物の蔵を管理する書記だったので、葬祭礼拝堂の壁画の断片には、自伝的側面が強調されています。農地を耕すところから収穫、そして穀物を水路で運搬するところまで、ウンスーが穀物栽培の各工程を監視している様子を見ることができます。
この断片では、二つの季節が時間を追って描かれており、下から上に読んでいきます。各段に描かれた黒いリボン状のものはエジプトの黒い土、一年を通じて同じ土地を表しています。下段では、男たちが無輪犂を引いて地を耕し「やらなきゃいけない仕事量以上に働こう」とその中の一人が言い、もう一人は、その後から種を投げ蒔きしています。中段では、刈り取りをする人が穀物を鎌で収穫した後を、娘達が「ちょっと手伝ってよ。私達今晩またここに来るの。昨日みたいな意地悪しないでよ、今日は止めてね。」とお喋りしながら落穂を拾っています。上段では、穂は脱穀所に運ばれ、牛が脱穀するために穂を足で踏みつけている光景が見えます。

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マスタバとウンスーの絵は、古代エジプトの富の源である農業をテーマとする次の展示室へと導いてくれます。そこには、道具、会計や法律に関するパピルス、小型の模型が展示されています。窓の向側の10番陳列ケースの犂を見てみましょう。

Houe
Houe

© Musée du Louvre/C. Décamps

犂は農耕や土工作業の主要な道具、言い換えればエジプト領土の大部分を開拓した道具でした。これを使って、土を掘り手前に引きながら犂を横に倒し、両足の間に挟んだ籠に土を拾い集めました。エジプトでは、土手や灌漑用の水路を常時維持しなければなりませんでした。これが、死者の召使い「ウシャブティ」に託された雑役でした。ウシャブティが、犂と先の尖った鶴嘴を持っているのはそのためです。今日においても、エジプトの農夫たちは他に発明されたどの道具よりも、金属製の刃が備えられている現代版の犂を好んで使用し、先祖たちと全く同じ動作を繰り返しているようです。

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ウンスーの礼拝堂の向側に進むと、7番陳列ケースに、冥界の野で働くジェドホルという題名のパピルスが展示されています。

『死者の書』パピルスの断片 冥界の野で働くジェドホル
『死者の書』パピルスの断片 冥界の野で働くジェドホル

© Musée du Louvre/C. Décamps

06『死者の書』パピルスの断片

『死者の書』の中のある章にページ一面を使って描かれたこのイラストは、供物の野を表しています。伝説的なこの野では、死者は食料を保証してくれるわずかな土地を持っていました。このイラストには、死者が自ら農耕作業をしている様子が描かれています。無輪犂を押しながら犂を牛に繋いだり、種を蒔いたり、上段では巨大な麦を鎌を使って刈り取っている様子などが2回も描かれているのが見えます。『死者の書』によると、この楽園でとれる麦の穂は、なんと7キュービット、すなわち高さが3メートル50センチもあったと伝えられています。この楽園の風景はエジプト風に、いくつかの窓枠のある地図のように描かれています。下段には、灌漑用の水路が見え、上の段では、死者が敬意を表する様々な地の守護神が、会計の神として書記のパレットを持って立っているトキの頭をしたトト神を従えているのが見えます。

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第4展示室の展示内容の補足として、第5展示室では、畜産、狩猟、釣りの技術に関するものが紹介されており、食物をテーマにしたコーナーも設けられています。中央の壁の裏側にある5番陳列ケースには、テペエムアンクのメニューを表した大きな浅浮彫が展示されています。

Le menu de Tepemânkh
Le menu de Tepemânkh

© R.M.N./C. Larrieu

07テペエムアンクのメニュー

切り分けられたパンが置かれたテーブルの前に座っているテペエムアンクの前で、息子たちが跪いて葬祭の儀式を執り行っています。この場面の上には、死者に捧げられた食べ物のリストが刻まれているのが見えます。
これは古王国時代の墓の壁にあったもので、浅浮彫で彫られた理想的なメニューとされているものです。はるか昔の時代に最も美味しいとされていた、ケーキ、砂糖菓子、飲み物なども含めた料理の名が並ぶ、死者がマスタバ墓の中でとる事ができる食事のメニューです。この作品の横には、注釈付きのデッサンが添えられており、このメニューのフランス語訳が記されていますが、フランス語の「バゲット」や「ルリジューズ」を他の言語に翻訳できないように、ここに登場するパンやケーキなどの名前には、翻訳することが難しいものもあります。

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「文字と書記」をテーマにした第6展示室に進んでください。
入って左手、奥の壁にある4番陳列ケースの左端には、第5王朝の神殿の財産目録が展示されています。

アブ・シール神殿の財産目録と会計記録
アブ・シール神殿の財産目録と会計記録

© 2009 Musée du Louvre / Georges Poncet

08アブ・シール神殿の財産目録と会計記録

昔から目録作成を重視する行政体制が敷かれていたエジプト文明では、会計管理が重要な位置を占めていました。配給を基本とした国家管理経済が行なわれていたことが、偏執的とも言える驚くほど詳細な会計を招いたわけです。
見栄えの悪いパピルスの断片ですが、壮大なピラミッドが建てられた古王国時代まで遡る、非常に貴重な証拠品となっています。第5王朝のネフェリルカラー・カカイ王のピラミッドに隣接した葬祭神殿にあった古文書から出てきたものです。信仰の儀式用の品であった壺の目録で、その形、素材、色、保存状態が記入されています。時には、「中は空、漏れあり、修理箇所多し、縁に剥片多し・・・剥片、修理箇所多し、漏れあり、穴あり」とかなり詳細に記録されています。会計書記が驚くほど緻密に目録を記録し、管理していたことが分かります。また、マスタバ墓では、農作の会計書記が収穫の計算書を作成している様子を描いた壁画を頻繁に見ることができます。

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同じ4番陳列ケースのもう一方の端には、「職業風刺」と題する見習いの書写板が展示されています。

見習い書記の書写板
見習い書記の書写板

© Musée du Louvre/C. Décamps

09見習い書記の書写板

文字は、エジプト人が好んだ古代から伝わる文学を次の世代に伝えていきます。古典文学や「選文集」も存在しており、見習いによって書き写されました。最も有名なものとして、この『職業風刺』を写したものが挙げられます。文自体は黒色で、句読点や日付けは赤色で書かれ、見習いはこれを18日間かけて写しました。
様々な職業を次から次へと批判したこの文は、あらゆる職業の中で最良である書記を奨励するために書かれたものです。
「工房でござを作る労働者は、女よりも悲惨なものです。膝を胸に当てて息をするのも苦しい程です。一日でも編むのを休むと50回も皮ひもで打たれ、門番を買収してやっと表へ出られ日の光を浴びることができます。
弓矢を作る者は、本当にひどい境遇にいます。砂漠を北上し、怠け者のラバに餌をたくさんやらねばならず、沼地の住民に案内してもらうために代金を支払わなければならないのです。夜、家に戻って来る頃にはくたくたに疲れて果てています。
隊商の引率者は、ライオンやアジア人を恐れ、子供達に財産を遺贈してから外国へ出かけます。ほっとできるのはエジプトにいる時だけです。けれど、長旅に疲れ果て、ぐったりして家に帰ると、家はレンガと布に変わり果ててくつろぐこともできないのです。」
この展示室では、文字の基礎知識やその進化に関する断片や書記の様々な道具が展示されています。

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展示室の中央にある長い2番陳列ケースには、筆が収納されているパレットをはじめ、様々な書記の道具が収められています。

書記のパレット
書記のパレット

© Musée du Louvre/C. Décamps

10書記のパレット

木製の「パレット」がごく一般的ですが、これは象牙でできています。インクのカートリッジを備えた筆箱のようなもので、「カラム」とも呼ばれる植物の茎が、4本まだ中に入っています。ファラオの時代のカラムは、茎の先を押しつぶして細筆のように使われていましたが、こちらに展示されているものは、むしろペンのように中が空洞になってインクが流れるように割れています。筆は自由な線を描くのに対し、ローマ支配下のエジプトで普及したカラムは硬い線を描きます。赤と黒のインクを入れる二つの窪みの回りは、表面が大きな染みで覆われているのが見えます。象牙製のこの美しい品は無頓着な書記によって使用されていたのでしょうか。大方消えかかった銘の跡がパレットの表面に残っています。まるで昨日まで使用されていたかのような印象を受けます。

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次に第7展示室に進んでください。ここでは、木、石、陶磁器、金属などの原料を用いる工芸が紹介されています。展示室に入ると、まず選抜された美しい工芸品が展示されており、一方大きい陳列ケースの後方には、様々な断片が陳列されて、各素材に使われた多種多様な技術が詳細に説明されています。
窓の間にある壁(1番陳列ケース)には、職人の長であり、また書記で彫り師でもあったイルティセンのステラ(石碑)が見られます。

職人長、書記、彫刻師イルティセンのステラ(石碑)
職人長、書記、彫刻師イルティセンのステラ(石碑)

© Musée du Louvre/C. Décamps

11職人の長、書記、彫り師のイルティセンのステラ(石碑)

このステラ(石碑)が、何故ここに置かれているのかお分かりでしょうか。このステラに刻まれている碑文の内容が特別なものだからです。アビドスのオシリス神の礼拝堂に奉献するためにこのステラを作らせたのは、職人の長であり、彫り師でもあったイルティセンという人物です。イルティセンはこの碑文の中で、自分は様々な技術を習得しており、文字もデッサンも自在に使いこなせると誇らしげに自慢しています。ありとあらゆる芸術的技法を熟知していて、自分と息子以外に誰も知らない秘密の製法を知っているとまで言い張っています。イルティセンはただの芸術家ではなく、ルネサンスの巨匠のように、創造においてあらゆる分野の知識と技術を身に付けていた人物として自分を紹介しています。エジプト人はめったに芸術について語ることはしません。イルティセンは、国家的巡礼の地であったアビドスの大神殿にこのステラを奉献することで、巡礼者にこの碑文を読んでもらい、人に認められたいと期待していたのでしょう。

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反対側の壁の方へ進みますと、右手の6番陳列ケースに、エジプト・ファイアンスとガラスを使った作品が展示されており、主要な作品としては、ミイラのビーズ製ネット装身具が収められています。

ミイラのビーズ製ネット装身具
ミイラのビーズ製ネット装身具

© Musée du Louvre/C. Décamps

12ミイラのビーズ製ネット装身具

中王国時代のイルティセンが、いくつかの素材の秘密の製造法を知っていることをほのめかしていたように、エジプト人は、顔料として使用された青色や緑色のフリットなどの合成物質を作り出しました。また、シリカ(砂漠の水晶)を主成分とし、表面を磁器化した「ファイアンス」の生産に長けており、ファイアンス製の宝飾品、護符、小像、小さな日用品などを自在に作り出しました。
筒状のビーズで作った大きな首飾りはよく知られ、男性や女性の祭りの衣装の肩に付けられているのが、小像や浮彫りや絵画に描かれているのを見ることができます。時には、女性の衣装にビーズ製のネット装身具が付けられることもありました。末期王朝時代になると、驚くほど保存状態の良いこの作品のように、ミイラの上にも守護的な図像を表したビーズ製のネット装身具が付けられるようになりました。最上部には、黒い犬で表される墓の神、アヌビス神の図像が2体、蘇生を象徴するスカラベ、冥界の王オシリス神を象徴するジェド柱が描かれているのが見えます。多彩で当時の鮮やかさを保っている色の美しさは賞賛に値します。

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エジプトの家や家具をテーマとする第8展示室に入ってください。中央にある大きな1番陳列ケースには、極めて保存状態の良い家具や家庭用品を選んで陳列してあります。この椅子の方に近づいてください。

椅子
椅子

© 1985 RMN / Chuzeville

新王国時代になると、地下墓室に安置された棺の周りに、死者が個人的に使用していた品や調度品を置くことが習慣になりました。エジプトの墓地は、田園や村から離れた砂漠地帯に位置し、独特の気候のおかげで、普通ならば今日まで保存できないような品々が未盗掘の墓から考古学者によって発見されました。
なかでも、最も美しく、そして完全な状態を保っているこの椅子に付いている脚は、ライオンの脚の形を模して作られ、青色に塗られています。優美な曲線を描く背もたれは、二種類の異なる種類の木でできており、象嵌細工の象牙(あるいは骨)の白がコントラストをなしています。エジプトの習慣で、広い座面は低めに取り付けられています。
ここに展示されている他の家具とは異なり、この椅子の座面は、近年皮の細紐で修復されたものです。

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宝飾品、衣装、身繕いの品が展示されている第9展示室にたどり着きます。入って左の壁の三つの陳列ケースには、宝飾品が年代順に展示されており、真ん中の陳列ケース(6番)では、新王国時代の宝飾品を鑑賞することができます。

魚の首飾り
魚の首飾り

© Musée du Louvre/C. Décamps

14魚の首飾り

エジプトの宝飾品類は、しばしば守護的、宗教的な意味合いを持つモチーフを使った形の面白さや、半貴石、ファイアンス、金属の組み合わせによって得られる巧妙な色使いで有名です。ここには、最も希少なものとして金や銀製の宝飾品が、また一般的なものとしては、ファイアンス製やブロンズ製の指輪が展示されています。魚の形の下げ飾りが付いたこの首飾りは、高級装身具に分類され、社会の特権階級の人たちが身に付けていたものでした。この傑作には様々な金銀細工の技術が駆使され、鎖には厚めで複雑なV字模様、魚には打ち出しが、スイレンにはクロワゾネが施されています。ティラピアという名の2匹の魚とスイレンの花は、復活の象徴とされ、これをつけている人に幸福をもたらすとされています。

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反対側の三つの陳列ケースには、ルーヴル美術館のエジプト美術部門が誇る身繕い品のコレクションが収められています。左側最後の3番陳列ケースをのぞいてみて下さい。壺を担いだ乙女の形をしたスプーンが展示されています。

壺をかつぐ乙女のスプーン
壺をかつぐ乙女のスプーン

© Musée du Louvre/C. Décamps

15壺を担ぐ乙女のスプーン

木を切り抜いたり、丸彫りにして作られ、水泳や花摘みなど優雅な動作をしている乙女を表した見事なスプーンは、とりわけ高く評価されている品です。その他に、象牙、ファイアンス、木などで作られた野生の鳥獣類や猟犬を表した装飾品にも優れた作品があります。このスプーンの乙女は、頭部に壺を載せ、重い袋を引いて多大な努力を払っている姿をしているにもかかわらず、繊細な感じを与えています。
わずかに背を曲げている召使いの乙女は、ほとんど何も身につけず潜在的な官能性を持っていますが、仕事をしている使用人をテーマにしたスプーンに分類されています。一枚の薄い板を透かし彫りにしたスプーンの柄には、色の練り物が埋め込まれ、浅く彫られたスプーンの窪みの上には、回転する蓋が取り付けられています。大変壊れやすい作りをしていることから、このスプーンが実際に日常品として使われていたのかどうか疑問視されています。

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この展示室の4番陳列ケースには、中王国時代に遡る非常に珍しい衣装の例としてひだ付きの貫頭衣が展示されています。

プリーツを施した亜麻の貫頭衣
プリーツを施した亜麻の貫頭衣

© Musée du Louvre / G. Poncet

16亜麻のひだ付き貫頭衣

布類は、エジプト文明において最も重要な位置を占めるものですが、衣類が完全な形で保存されている例は極めて稀であると言えます。これは、一般的にエジプト芸術に描かれている衣装とは異なり、袖が細く長めに作られ、ひだが水平に入っている貫頭衣で、驚きに値する珍しいものです。このようなタイプの貫頭衣は、これまでに15着ほどしか知られていません。これらの貫頭衣は、女性の墓で発見されたことから、おそらく女性用の衣装であったと思われます。汗の痕跡が残っていたため、幾つかの衣装は実際に着用されていたことが明らかになりました。当時、多量の布を所有することは、裕福さの証でした。エジプトのファラオが統治していた時代には、毛糸も使われていたものの、主要な繊維は亜麻でした。綿や絹が取り入れられるようになったのは、もっと後の時代になってからのことです。布は、死者や神に捧げる主要な供物として、供物リストに挙げられていました。布の品質は、粗末なものから最高級のモスリンまで様々なものが使われていました。

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最後の展示室に置いてある中央の長い陳列ケース(1番)には、「娯楽、音楽とゲーム」をテーマとして、ハープ、竪琴、シストルム、カスタネットなどの最も美しい楽器の典型例が展示されており、あたかも姿の見えないオーケストラの演奏家たちが行進しているかのような雰囲気が感じ取られます。また、横の補足的な陳列ケースには、楽器ごとに、より詳細に紹介されたコレクションが展示されています。

三角竪琴
三角竪琴

© Musée du Louvre/C. Décamps

17三角竪琴

竪琴はエジプト人に大変好まれた楽器でした。最古の時代には、竪琴の共鳴箱はアーチ形をしていましたが、新王国時代以降、この作例のように革で覆われ、真っ直ぐな形をした共鳴箱が垂直についた竪琴が登場しました。ルーヴル美術館の三角竪琴は、近年修復された弦を除いては、このタイプの竪琴で、唯一例外的に良く保存されているものといえます。この楽器が描かれている様々な作品から、竪琴は神殿の領域で、神々のために執り行われる儀式の伴奏に使われただけでなく、日々の暮らしの中でも、舞いや歌の伴奏に用いられていたことが分かっています。残念ながら、楽譜は発見されていません。おそらく、音楽は実演を通して伝えられていたものと思われます。

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この展示室の奥、窓と窓の間にある正方形をした陳列ケース(8番)には、大変人気があったチェッカーボードを使ったゲームが展示されています。右の窓際の壁にある小さい陳列ケース(9番)には、他のゲームも入っていて、その中にはカバの形をした、58個の穴が開いているゲームもあります。

Plateau de jeu en forme d'hippopotame
Plateau de jeu en forme d'hippopotame

© R.M.N./Les frères Chuzeville

1858個の穴があいたカバの形のゲーム

この遊びは、穴のあいたボードと棒状の駒を使いますが、駒の多くが短い耳の犬の顔とピンと伸びとがった耳のジャッカルの顔で装飾されているため、エジプト学の研究者の間ではよく「犬とジャッカルのゲーム」と呼ばれています。ここに展示されている駒は、古いものですが、このボードに元々ついていた駒ではありません。

専門家たちは、このタイプのボードをいくつも研究した結果、ルールを再現することができました。ボードは、常に29個の穴があけられた左右対称の2つの部分で構成されています。

2人で遊びます。ゲームは頭の後ろから始め、順番に小骨やサイコロをふって駒を進めます。

尻尾のあたりにある10番の穴と側面にある20番の穴にあたったら、後ろに下がり、側面にある大きな穴を囲む円の最初にある15番の穴とその終わりにある25番の穴にあたった場合は、もう一度サイコロをふることができます。



非常に人気のあったこの遊びに使われていたボードが、中東全域で複数発見されました。

残念ながら頭部が壊れてしまっているためカバの姿は完全ではありませんが、ルーヴル美術館が所蔵するこの作品は、彩色されたガラスのはめ込み細工で飾られた繊細な陶器が美しいもっとも洗練されたものです。

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エジプト発見の旅を続けるには、オシリス神をテーマとした見学コースがあります。


執筆: :
ジュヌヴィエーヴ・ピエラ=ボヌフォワ古代エジプト美術部門