Go to content Go to navigation Go to search Change language

ホーム>見学と文化活動>見学コース>ローマ支配下のエジプト葬祭芸術

見学コース ローマ支配下のエジプト葬祭芸術, 驚くべき混合芸術

古代エジプト美術 - 所要時間:1h30 - 見学日: 月 水 木 金 土 日

学校団体 一般団体

Egypte romaine (Salle A) - Art funéraire
Egypte romaine (Salle A) - Art funéraire

© Musée du Louvre/A. Dequier

00イントロダクション

ローマ支配時代のエジプトの展示室は閉鎖しておりますので、この見学コースでご紹介される作品をご覧いただくことができません。<br /><br /><br /><br />紀元後、最初の3世紀の間に、ファラオ時代の図像とヘレニズム様式の肖像画が混ざった驚くべき様式の芸術が作り出されました。これは、エジプトにおける信仰と葬祭慣習がローマ世界と出会った結果生まれたものです。この展示室では、当時この様式で制作された多種多様な人物像を紹介しています。

紀元前30年にエジプトを征服したローマ人は、その地に定住するようになり、時を経ずしてエジプトの信仰に帰依し、葬祭慣習を取り入れました。この信仰および葬祭慣習は、死後ミイラ処理を施せば、死者は皆新しいオシリス神となって新しい生命を得られるという信念の上に築き上げられていました。死者はミイラ作りの守護神アヌビス神に導かれて不死の世界への旅に出て、冥界の神オシリス神の審判を受けると信じられていました。
ミイラを覆う装身具やミイラを包帯で巻き上げた包みには、様々な技術が駆使されていました。古代エジプトから継承された図像を用いているファラオ伝統様式に近いものもあれば、驚くほど素朴な様式で表現されているものもあります。
ローマ人によって、ミイラに肖像が描かれるようになりました。顔を描くことで死者の個性を保持したいという願いから、化粧漆喰に詳細な浮彫りを施し、丁寧に彩色された胸甲面(胸まで覆うミイラマスク)の肖像などが取り付けられるようになりました。しかし、肖像といっても、死者に本当に似た顔で描かれたものは稀なようです。この他にも、包帯に巻かれたミイラを包む亜麻の屍衣の上に肖像が描かれたものや、通称「ファイユームの肖像」と呼ばれている、小さい木板に描かれた肖像画をミイラの頭部に挟めこみ、包帯で固定したものもあります。


次の作品までのルート :
では、この展示室を守っている二体のスフィンクスの小像の前を通って、すぐ右にある1番陳列ケースの右上に展示されている作品の前まで進んでください。

男性の肖像
男性の肖像

© 2003 Musée du Louvre / Georges Poncet

01男性の肖像

この肖像は、肌の色が浅黒く長い顔をした男性を表したものです。Mの形をした髪の生え際や顎ひげが長い顔を強調しています。赤紫色のクラヴィ(細長い帯状の装飾)がついた白いチュニックを着用し、セプティミウス・セウェルス皇帝とカラカラ皇帝が流行させた髪形をしています。木製の小さい板は、元々長方形をしていたのものを、葬祭に使用する際に、ミイラの形にぴったり重なるように切り抜いたものです。

次の作品までのルート :
次に見る作品が展示されている、同じ陳列ケースの右下を見てください。

Portrait de femme
Portrait de femme

© R.M.N./G. Blot

02女性の肖像画

この女性の長い顔は髪の毛で縁取られ、耳は髪の毛で隠れています。髪の真ん中の分け目は三つの円盤状の宝飾品で飾られ、装身具としてその他に真珠の耳飾りと二本の首飾りを身につけています。X線検査の結果、元々この肖像画に描かれていたのは、皺の多い、もっと年老いた女性の顔であったことが分りました。後になって絵師は、顎を短くし顔の輪郭を整えることによってこの女性を「若返らせ」ました。おそらく実物より美しく見せたいと願うモデル、あるいはこの肖像画の発注者の希望に従わざるを得なかったのでしょう。

次の作品までのルート :
この陳列ケースで選択された3点目の作品は、左下にある作品です。

男性の胸甲面
男性の胸甲面

© 2007 Musée du Louvre / Georges Poncet

03男性の胸甲面

大きなカボション(半球形に整えられた宝石やガラス)が付いた冠を戴く、目鼻立ちのはっきりした顔のこの人物は、ワインの杯とオシリス神から無罪と宣告された者に与えられる「無罪の冠」を手にしています。左肩には、インドの宗教を起源とする、太陽の象徴である卍模様が付けられています。この胸甲面は、ミイラに紐で繋がれ、ミイラはテラコッタで作られた棺の中に埋葬され、デル・エル・バハリのハトシェプスト神殿の内部にある礼拝堂を改造して整備された共同墓地に納められていました。

次の作品までのルート :
後ろの2番陳列ケースに、もう1点同じような卓越した肖像が展示されています。

背もたれが付いた男性の胸甲面(胸まで覆うミイラマスク)
背もたれが付いた男性の胸甲面(胸まで覆うミイラマスク)

© 2005 Musée du Louvre / Christian Larrieu

04背もたれがついた男性の胸甲面(胸を覆うミイラマスク)

この肖像画は、色白で、灰色の髪、口髭、顎鬚をたくわえた男性のもので、長袖の白いチュニックを着用し、房が付いた白いスカーフをかけています。左手の小指に指輪を付け、頭の上には、ギンバイカの葉でできていると思われる金色の冠を付けています。背もたれの上には、オシリス神の姿で表された死者が、イシス女神、ネフティス女神、ホルス神の4人の息子達に寄り添われている様子が描かれています。

次の作品までのルート :
この区画を出た右側、この展示室奥にある6番陳列ケースまでお進みください。

Tenture funéraire
Tenture funéraire

© 2007 Musée du Louvre / Christian Décamps

05葬祭用壁掛け

太陽船の上に立っている三人の人物が大きく描かれています。中央には、若い死者が、ローマで流行していた暗色の細い帯で装飾された白いチュニックと、H字模様が入った白いコートを着用し、左手にオシリス神の無罪の冠を持って立っています。死者の右側では、頭に太陽円盤を戴いたミイラ作りの神アヌビスが、右手を死者の肩にかけ、死者を守り、冥界に導くことを意味する姿勢をとっています。死者の左側には、オシリス神として神格化されて表された死者が、包帯に巻かれ、両手と頭部のみを出している姿で描かれています。オシリス神の顔が、エジプト様式を強調した画風ではなく、むしろヘレニズム的な自然主義で描かれていることに気がつきます。

次の作品までのルート :
反対方向を向いて、右手の最初の区画にある7番陳列ケースまでお進みください。

女性の仮面
女性の仮面

© 1993 Musée du Louvre / Christian Larrieu

06女性のマスク

この肖像は、目はアラバスターと黒いガラスで作られ、鼻、唇、小さい窪みがある顎などギリシア人特有の顔に描かれています。波打つような髪は、長い巻き毛をなして耳の後ろで垂れ下がり、カールした小さい髪の房が額に沿って線を描いています。渦巻き状の髪の房がこめかみから耳の前にも二本垂れ下がっており、耳には真珠が3個付いた環の耳飾りを付けています。このような髪型は、プトレマイオス時代に流行した髪型に着想を得たものです。

次の作品までのルート :
同じ陳列ケースの左側に展示されている作品を見てください。

女性の肖像画、通称《ヨーロッパの女性》
女性の肖像画、通称《ヨーロッパの女性》

© 2009 Musée du Louvre / Georges Poncet

07女性の肖像画、通称「ヨーロッパの女性」

引っ詰めた髪は後ろで三つ編みにされ、頭頂部に金のピンで留められています。大きな耳には真珠の耳飾りを付け、赤紫色の衣装は、エメラルドがはめ込まれたブローチで胸の位置で留められています。首部に見える金箔は、この肖像画を葬祭用として再利用する際に施されたものと思われます。X線検査を行った結果、元々は大きな真珠でできたシンプルな首飾りを付けていたことが判明しました。

次の作品までのルート :
右手にある次の区画の8番陳列ケース中央には、皆さんの関心を集める若い女性を表した作品が収められています。

女性の肖像ミイラ
女性の肖像ミイラ

© 2007 Musée du Louvre / Christian Décamps

08ユダイモンの肖像ミイラ

この肖像画は、ひし形の網目模様を描いてミイラを巻いている包帯で固定されています。若い女性は、襟ぐりが赤と白の三角模様が付いたバンドで装飾された緑色のチュニックを着用し、宝石のついた首飾りと真珠の耳飾りを身に付けています。ハドリアヌス時代に流行した、三つ編みを頭頂部で冠のように巻きつけた髪型をしています。死者に「良い旅を」と祈る、伝統的なギリシアの定型句が包帯の上に書かれています。

次の作品までのルート :
さて次に、右側に展示されている作品を鑑賞しましょう。

Deux portraits de femme
Deux portraits de femme

© Musée du Louvre/C. Larrieu

09女性の肖像2点

このマスクの顔には金箔が施され、目と眉毛のみが彩色されています。編んだお下げ髪が頭の上にバラ色のヘアーバンドで留められています。額には髪の房が波形に描かれ、濃い眉毛は交差したハッチングの線で表されています。睫毛は目の周囲全体に素描されており、微笑みを湛えた口元にも金箔が施されています。

次の作品までのルート :
同じ陳列ケースの左下に、次に見学するマスクがあります

Egypte romaine (Salle A) - Art funéraire
Egypte romaine (Salle A) - Art funéraire

© Musée du Louvre/A. Dequier

10クラテスの胸甲面(胸まで覆うミイラマスク)

ハヤブサの頭を持った守護神が二柱、太陽神を表す有翅スカレベを囲んでいます。三段からなる図像には、永遠の生命への旅の様々な行程と、死者に守護を与える神々が描かれています。金色の顔をしたクラテスは、葉とカボション(半球形に整えられた宝石あるいはガラス)で作られた冠を付け、エジプト風のベールを付けています。彼は、家族4人と共にデル・エル=メディーナ村の、ある家の地下室に納められていた木棺に埋葬されていました。

次の作品までのルート :
この作品の上方を見てください。ここにも、興味深い胸甲面が展示されています。

女性の肖像
女性の肖像

© Musée du Louvre/G. Poncet

11女性の肖像

多彩色の保存状態が良好なこのマスクの顔は、頬骨が張り、鼻は鷲鼻で唇がわずかに開いています。目は彩色されて、太い三つ編みにされ、頭頂部で冠のようなシニョンに結われた髪型は、ハドリアヌス皇帝の妻のサビンヌの髪型を想い起こさせます。このマスクは、大量に生産されたマスクではなく、この人物の真なる肖像として制作されたようです。

次の作品までのルート :
反対方向に進んで、細部の表現に富んだ肖像が見られる9番陳列ケースに近づいて下さい。

女性の胸甲面(ミイラマスク)
女性の胸甲面(ミイラマスク)

© R.M.N./Les frères Chuzeville

12女性の胸甲面

この肖像は、顎に小さな窪みがある、ふくよかな顔をした若い女性のものです。身に付けている多数の宝飾品は、金製であることを表すために黄色く塗られています。葡萄の房の形を模した耳飾りを付け、二連の鎖と下げ飾りが3つ付いた真珠の首飾りをしています。両手首には、重くて柔軟性の無いブレスレットを二個ずつ付けていましたが、そのうちの一個は消失してしまっています。左手にはめた三個の指輪のうち、二連になっているものは中指と薬指を繋いでいます。右手に、オシリス神から正しき者と宣告された者が持つことができるバラの花で作られた「無罪の冠」を握り、左手に麦の穂とケシの花を何本か持っています。

次の作品までのルート :

同じ9番陳列ケースの次の区画には、右側にアンモニオスの肖像と呼ばれている肖像画が展示されています。

葬祭屍衣の断片、通称《アンモニオスの肖像画》
葬祭屍衣の断片、通称《アンモニオスの肖像画》

© 1998 Musée du Louvre / Georges Poncet

13葬祭屍衣の断片、通称「アンモニオスの肖像」

この彩色が施された半身像は、ミイラを包む大きな屍衣の一部です。顔の横にアンク記号(生命の象徴)と跪いている神が描かれています。青年の個性的な顔立ちが、この肖像を魅力的なものにしています。赤紫色のクラヴィ(長細い帯状の装飾)が付いた白いチュニックを着用し、左肩にコートをかけています。右手に、カボションで装飾されたカンタロスを、右手にはバラの花びらで作られた花輪を握っています。この人物は、この肖像画が当美術館にもたらされた時から、アンモニオスという名で呼ばれていますが、どうしてこのように呼ばれているのか未だに誰も知らないのです。

次の作品までのルート :
この作品のすぐ左にある、感動的な子供の屍衣をゆっくりとご鑑賞ください。

子供の屍衣
子供の屍衣

© 2007 Musée du Louvre / Christian Décamps

14子供の屍衣

 花飾りの装飾が額縁のようにこの作品を縁取っています。二列に描かれた挿絵の間にある聖櫃のような物の中に、幼い子供が上半身と脚だけが見えるように描かれています。綴れ織りの細い帯飾りが付いた豪華な衣装を着用し、宝飾品も身に付けています。そのうち、ブッラ(球状の飾り)付きの金属製首飾りは、護符としてローマ人の子供達が付けていたものです。顔は、子供の肖像の特徴とされている、個性の無い顔立ちで表現されています。

次の作品までのルート :
見学最後の作品になりますが、同じ区画の奥にある小さい陳列ケースの前で足を止めてください。左側に顔がよく知られている女性の肖像画を鑑賞することができます。

女性の肖像画
女性の肖像画

© 2007 Musée du Louvre / Georges Poncet

15女性の肖像画

この若い女性の顔は、ほとんど正面を向いていますが、胸部はわずかに左に向けられて描かれています。緑色のクラヴィ(細長い装飾用の帯)が付いた暗色のチュニックを着用して、同様の暗色のコートを羽織っています。髪は二つに分けられ、耳は髪で覆われて隠れています。頭頂部には、三つ編みにしたお下げ髪が付けられ、小さなカールが一列に並んでできた線が額を縁取っています。唇はとりわけ丁寧にデッサンされています。暗色の衣装、厳格な髪型、質素な装身具と、この女性の瑞々しい顔がコントラストをなしているのがわかります。


次の作品までのルート :
/来た道を引き返して、ピラミッドの下にあるナポレオン・ホールまでお戻りください。


執筆: :
Roberta Cortopassi, département des Antiquités égyptienne