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見学コース 呪われたアフロディーテ

テーマ別見学コース - 所要時間:1h30 - 見学日: 月 水 金 土 日

学校団体 一般団体

David et Bethsabée (détail)
David et Bethsabée (détail)

© Musée du Louvre/A. Dequier - M. Bard

00イントロダクション

愛の物語は常に悲しい結末を迎えるのでしょうか? 16世紀から19世紀までの画家や彫刻家は、文学の中でよく知られた恋人たちの愛の苦悩を作品化しました。片思い、束縛、駆け落ち、死などが主題になっています。

ダビデとバテシバ、オルフェウスとエウリュディケ、パオロとフランチェスカなど……。波乱に満ちた田園詩に登場する神話上の恋人たちは、西洋美術でとくに好まれた主題でした。聖書の登場人物や古代の英雄、あるいは近代の恋人たちの物語も、文学に取り上げられて伝わっています。
その時代の感性やしきたりに阻まれた愛の主題を、芸術家はそれぞれどのように解釈したのでしょうか。このコースをたどるとそれがわかるでしょう。古典主義やバロック、新古典主義の芸術家たちは、主人公2人の間の感情と、そこから生じた造形上の効果をどのような手法で演出したのでしょうか。作品に沿ってよくご覧ください。人物の厳密な構成、官能的な肉体、ひんやりと滑らかな身体を見ることができます。
まずは恋人たちの不和を煽る者の表現から見てみましょう。女神アフロディーテとその息子エロスは、人の心に愛と無関心を植えつけます。エロス自身の愛の物語が、この成就しない愛をめぐる絵画と彫刻のコースの口火を切り、そして締めくくっています。

 

次の作品までのルート :

ピラミッドから“Richelieu ”〔リシュリュー〕の方へ向かってください。右に折れて“Cour Puget”〔ピュジェの中庭〕に入り、中2階の上層部まで上がります。ここはフランス彫刻部門です。展示室21の入口から右に進みましょう。

《水浴する女、別称ヴィーナス》
《水浴する女、別称ヴィーナス》

© 2010 RMN / René-Gabriel Ojéda

01《水浴する女》、別名《ヴィーナス》

「アフロディーテ」は「ヴィーナス」とも呼ばれる、愛と美の女神です。人を誘惑するアフロディーテの力は、人間にも神々にも発揮されます。早くも古代から、女性の美しさを讃えるという口実のもと、この女神の姿が度々表現されています。ルネサンス時代にこの伝統が復活し、以来19世紀まで、ヴィーナスは芸術家たちお気に入りのヒロインとなりました。ヴィーナスを通して、芸術家たちは官能性とエロティシズムを表現することができるのです。
左腕が形作るくぼみと腹部のたるみをよく見てください。古代の理想化された像を参考にしてはいるものの、このヴィーナスは現実そのものの肉体を備えています。彫刻家が生身のモデルを使って制作したからです。
頭部の思いきった傾きに注目しましょう。このため、首の後ろに大理石を補強する「繋ぎ橋」が必要でした。
同じ展示室で右手を向くと、アフロディーテの翼の生えた息子をご覧になれます。

次の作品までのルート :

階段を数段上って右に曲がり、展示室21の《アモル》に向かいましょう。

アモール
アモール

© 2011 Musée du Louvre / Thierry Ollivier

02《アモル》

「エロス」=「クピド」には「アモル」という名もあります。
子どもまたは若者の姿で表現されるアモルは、母アフロディーテの密使です。アモルが金または鉛の矢を放つと、標的となった人は恋に落ちたり、つれなくなったりするのです。
作品の周りを一周して、エロスの細やかな仕草を鑑賞しましょう。構図の空いた部分に注目してください。魂の象徴である蝶(ギリシャ語の「プシュケ」は魂と蝶を意味します)に、愛の象徴であるバラを見せるクピドの仕草からは、実に見事な技術がうかがえます。
台座の浅浮彫をじっくり見ましょう。アモルに縛られた魂の災いと喜びを教えてくれます。ミツバチたちがアモルを攻撃し、束縛された魂はついに救われるのです。この話は、アモルとプシュケの物語を伝えています。

次の作品までのルート :

左を向いて反対側の窓の方へ進んでください。

Zéphyr et Psyché
Zéphyr et Psyché

© Musée du Louvre/P. Philibert

03《ゼフュロスとプシュケ》

アモルとプシュケの物語の始まりは、幸先がよくありません。
プシュケのあまりの美しさに嫉妬したアフロディーテは、プシュケが醜い者に恋をするよう息子を差し向けるのです。しかしアモルはプシュケに夢中になり、彼女を救うためにあらゆる手立てを尽くします。
そこにゼフュロスが現れ、プシュケをそっと持ち上げて山の頂に運びます。プシュケはそこで彼女に約束された見知らぬ人を待つのです。
ゼフュロスはプシュケをどこへ運ぶのでしょうか? どんな関係が2人を結びつけているのでしょう?
2人の脚を共通の軸として、そこから2人の体が広がっています。2人は両性具有的で、区別がつかないほど似ていますね。2人は愛し合っているのでしょうか? 
2人の上体は反対方向に向いています。誘拐されているということでしょうか?
彫刻家は巧みに量塊のバランスをとり、今にも飛び立つという瞬間を表現することに成功しました。襞の渦巻装飾の透明感には感心してしまいますね。一陣の風、つまり「ゼフュロス」を感じさせませんか?

次の作品までのルート :

「ピュジェの中庭」入口まで戻り、エスカレーターで2階まで上って北方絵画のコレクションに向かってください。右手からエスカレーターを迂回し、展示室19、18を通り抜けて展示室17に入ります。右側の壁にかかった絵をご覧ください。

Hercule et Omphale
Hercule et Omphale

© RMN / Gérard Blot / Christian Jean

04《ヘラクレスとオンファレ》

リディアの女王オンファレに恋人として売られた怪力ヘラクレスは、自分を見張るオンファレに恋をします。女王はヘラクレスの耳をひっぱり、意のままに操っているように見えますね。では、何をしたためにヘラクレスはこんな目に遭っているのでしょうか?
オンファレは、ヘラクレスにおとなしく言うことを聞いて欲しいのですが、ヘラクレスはそんなことには慣れていません。そのためオンファレは彼を叱らなければならないのです。
この滑稽な場面では、男女の役割が逆転しています。
オンファレは皮肉な調教師として、ヘラクレスは従順な大男として描かれます。2人の違いを際立たせる様々な要素に注目すると楽しいですね。
持物(ライオンの毛皮、棍棒、糸巻棒、糸)を交換し、伝統的な男女の役割を逆転させています。
絵に近づいて見ると、肉体を彩る影の大胆さがわかるでしょうか? そして絵から離れて、体のねじれがどれほどか見定めてましょう。

次の作品までのルート :

展示室11まで進み、右側の壁に向かってください。

David et Bethsabée
David et Bethsabée

© Musée du Louvre/A. Dequier - M. Bard

05《ダビデとバテシバ》

バテシバの夫が留守の間に、イスラエル王ダビデは入浴中のバテシバを見てしまい、恋に落ちます。画家マセイスは、聖書で語られる物語の中でも、王が愛を告白するために使者を送る場面を選びました。その後、ダビデはバテシバと結婚するために彼女の夫を抹殺するのです。
丹念に仕上げたデッサンと灰色がかった肌の色は、ルーベンスの絵で見たばかりの鮮やかな色彩と対照的ですね。
この愛の物語の主人公2人はどこにいるのでしょうか? この絵の構図は観る人を惑わせます。というのも、「恋する男」が前景にいないのです。使者の仕草をたどりましょう。
どこにいるのかがわかります。
絵の左側で、王ダビデに支配される男の世界が、どのようにバテシバの女の世界へ割り込むのかに注目しましょう。前景にいる若い男と侍女という脇役2人は、皆さんに証人になってもらおうとしています。一方2匹の犬の対決からは、王が無理強いしているこの関係がうかがわれます。

次の作品までのルート :

展示室7までそのまま進んでください。フランス絵画部門の展示室10に入り、展示室13まで進みます。

Écho et Narcisse
Écho et Narcisse

© Musée du Louvre/A. Dequier - M. Bard

06《エコーとナルキッソス》

プッサンは、オウィディウスの『変身物語』で語られる2場面を1つの絵にまとめました。エコーは恋していたナルキッソスに拒絶されて自ら命を絶ち、声だけが残って山々にこだまします。ナルキッソスはつれない態度をとったことを責められ、水面に映った自分の姿に恋をするという罰を受けます。そしてナルキッソスは溺れ、同じ名前の花に姿を変えるのです。
この小型のカンヴァスには、3人の人物からなる親密な場面が描かれています。この人物たちの間にはどんな関係があるのでしょうか?
前景にはナルキッソスが裸で横たわり、その美しさに皆さんの視線は惹きつけられてしまいます。
景色がどのようにエコーを「飲みこむ」のか、よくご覧ください。エコーは次第にこわばっていきます。
アモルの持物の1つ、松明が描かれています。アモルはこの松明で心を燃え上がらせるのですが、ここでは死を示すものでもあります。

次の作品までのルート :

展示室14の右側の壁へ向かってください。

Orphée et Eurydice
Orphée et Eurydice

© Musée du Louvre/A. Dequier - M. Bard

07《オルフェウスとエウリュディケ》

婚礼の日に、エウリュディケは蛇に噛まれて死んでしまいます。悲しみに打ちひしがれたオルフェウスは、黄泉の国へ妻を捜しに行きます。オルフェウスの歌が冥界の人々の心を動かし、地上へ戻るまではエウリュディケを振り返って見ないという条件で、妻を返してもらうことができました。
しかしオルフェウスは約束を破り、エウリュディケを永遠に失ってしまいます。
風景がこの悲劇の中心的役割を果たしています。
絵から離れ、人物を照らす光を目で追ってみましょう。まぶしくて目をしばたいてしまうほどですね。エウリュディケの黄色い衣に当たる直射日光が、物語の発端となります。
絵に近づいて、彼女を死に至らしめた蛇を探しましょう。
この牧歌的な光景を揺さぶる不吉な要素が見えますか? 前景から画面に広がる影は、エウリュディケの血管に広がる猛毒とイメージが重なります。

次の作品までのルート :

展示室19まで順番どおり進み、右に折れて展示室20に入ってください。そのまままっすぐ進み、展示室Bのガラス戸を通り抜けます。階段の踊り場からカルロス・デ・ベイステギ・コレクションのある展示室Aに入り、右側の壁に向かいましょう。

La mort de Didon
La mort de Didon

© Musée du Louvre/A. Dequier - M. Bard

08《ディドの死》

女王ディドはアイネイアスに魅了され、そして見捨てられて自殺を遂げます。ルーベンスは、ウェルギリウスが『アエネイス』第4歌で伝える自殺の描写に従って描きました。
「ディドの目は血走り、頬は震えて血の飛び散った跡が点々とし、青ざめてまもなく息絶えようとしている」
この絵には、見捨てられた女だけが描かれています。
ルーベンスは、ディドが剣で自分の胸を刺し、致命傷を負う瞬間を表現することにしました。
上体と四肢をひねることで、ディドの体が画面全体を占めているところに注目しましょう。大げさなポーズによって、話は親密な雰囲気の寝室から劇場の一場面に移されているようです。
体が鮮やかに輝き、ディドに官能性を与えています。ふくよかな裸体は女性の体を讃えるものです。
表情に彼女のつらさが読み取れますか? 悲劇の主人公ディドは、力を振り絞って皆さんの心を動かします。

次の作品までのルート :

展示室を出て、右手の「アンリ2世の階段」で1階まで下りてください。展示室32、33、34を通り抜け、《サモトラケのニケ》へ向かいます。階段を数段下り、中央階段を迂回して展示室75の方へ上ります。右手奥まで進みましょう。

《アタラの埋葬》
《アタラの埋葬》

© 2007 Musée du Louvre / Angèle Dequier

09《アタラの埋葬》

シャトーブリアンの小説には、キリスト教徒となった2人の「良き野蛮人」を主人公とする、異国情緒にあふれる愛の物語が語られます。
シャクタスへの愛と、処女を守るという約束との間で引き裂かれたアタラは、洞窟で死んでしまいます。かつてこの洞窟で、2人の恋人は年老いた宣教師に引き取られたのです。
愛する人は今、息を引き取ったところです。
光に照らされた部分をじっくり見てください。女の体がまず注意を引き、それからぽっかり開いた空が視線を洞窟の外へ導きます。2本の十字架に注目しましょう。女が手にしているキリストの十字架像が、木々の間から現れる路傍の十字架と重なります。
3人の重なり合って波打つ体を、左から右へ目で追ってみましょう。恋する男の曲がった背中から修道士の体の傾きまでのくぼみに、女の体が組み込まれています。この構図は十字架降架を思わせます。この絵の題名を裏づけるようですね。

次の作品までのルート :

展示室77へお進みください。次の作品は展示室の奥、左側の壁に掛かっています。

《パオロとフランチェスカ》
《パオロとフランチェスカ》

© 1996 RMN / Jean-Gilles Berizzi

10《パオロとフランチェスカ》

12世紀、パオロとフランチェスカは嫉妬に駆られたフランチェスカの夫に殺されました。この2人はダンテの『神曲』に引用されています。
「永遠に続く地獄の嵐が
魂たちを突風で吹き飛ばし、
旋回させぶつけ合い執拗に攻め立てていた。」
肉欲の罪を犯した者たちを取り上げる地獄篇第2圏には、ディドも登場します。
恋人たちは、2人の証人の視線にさらされて抱擁しています。
恋人たちがどのような姿勢をとっているのか、考えてみてください。地面に支えもなく、空をすべっているようですね。
2色の布地の端を目で追ってみましょう。
これは2人を溶け合わせる愛の床なのでしょうか。それとも2人を引き離す屍衣なのでしょうか?
右にいるダンテとウェルギリウスとの違いをよく見てください。2つの場面の違いを強調するのに、光がどれほど効果を上げているでしょうか。この2つの場面は、お互い関係なく演じられているように見えますね。

次の作品までのルート :

「モリアンの階段」で地上階まで下り、イタリア彫刻部門に入ってください。展示室4を突っ切って右側奥まで進みましょう。

Psyché ranimée par le baiser de l'Amour
Psyché ranimée par le baiser de l'Amour

© 2010 Musée du Louvre / Raphaël Chipault

11《アモルの接吻で蘇るプシュケ》

プシュケはアモルの妻となりましたが、夫の顔も正体も知りません。そこで、いったい誰なのだろうと思い、夫が寝ている間に不意を襲って姿を見てしまいました。夫は、「愛は、信頼関係がなくては成り立たないのだよ」と言って去ります。取り残されたプシュケは、ヴィーナスが課した一連の試練を受け、永遠の眠りについています。アモルの接吻だけが、プシュケを蘇らせることができるのです。
これが、アモルとプシュケの物語の結末です。
アモルは今、下り立ったところです。まだ翼が広がったままで、プシュケの体とともにXの字を形作っています。
彫刻の周りを一周し、2つの体が合わさる部分をご覧ください。
作品に近づいて、様々な素材感を見せる大理石の各面を堪能しましょう。髪の毛の柔らかさ、翼の透明感、肉体の豊かさ、ごつごつした岩肌、壺の光沢、布のなめらかさの違いが感じられますね。

次の作品までのルート :

展示室を出たところにあるエスカレーターで下りて、出口のあるピラミッドに向かってください。

 

執筆: :

ロランス・ブロス、シリル・グィエット