Go to content Go to navigation Go to search Change language
ホーム>作品と宮殿>コレクションと学芸部門>《エイローの戦場におけるナポレオン、1807年2月9日》

《エイローの戦場におけるナポレオン、1807年2月9日》

© 2009 Musée du Louvre / Erich Lessing
絵画
フランス絵画
アントワーヌ=ジャン・グロは、虐殺が行われた翌日の1807年2月に、エイローの戦場を訪れたナポレオン1世の哀れみの美徳を称えている。画家は権力からの指示に従ったわけである。しかしながら、グロは、他のナポレオン時代の歴史画が決して到達することのなかった写実的なやり方でこの絵を描くことにした。前景に描かれた、並外れて大きい遺体が、観者の眼差しを引きつける。こうしてグロは、師のダヴィッドの新古典主義美術と袂を分かったのである。
皇帝の哀れみ
この絵には、凄惨な戦いの末ロシアとプロイセンに勝利した翌日である1807年2月9日に、東プロイセンのエイローの戦場を訪れた皇帝ナポレオン1世が見える。医師と元帥に囲まれて、明るい毛並みの馬に跨った皇帝は、哀れみに満ちた視線を投げかけ、負傷者を称えるかのように腕を差し伸べている。リトアニア人の兵士が、ペルシー外科医に寄りかかりながら、皇帝に向かって、「カエサルよ、私に生き延びて欲しいか。私を癒してくれるなら、アレクサンドルに仕えたように、貴方に忠実に仕えよう」と言っている。もう一人別の敵軍の負傷した兵士が皇帝の足に接吻している。ナポレオンの傍らには、跳ね回る黒馬に乗ったミュラ元帥が描かれており、戦争というものを体現していると思われる。画面前景では、折り重なった兵士の遺体が雪に覆われ、狂った負傷者が暴れている。場面の惨状は、絵の背景を占めている、青白い光に包まれた、雪の積もった風景によって強調されている。
不評を被った戦争
グロは、コンクールに入賞した後に正式な注文を受け、この絵を1807-1808年の冬の間に描いた。ナポレオン美術館館長ヴィヴァン・ドゥノンが、描くべき局面、人物の数、前景の遺体、大きなサイズの画布といった、構図の大部分について指示を出した。前景の人物に見られる写実的表現は、おそらくドゥノンの勧めを越えたものだろう。グロは、この絵を1808年のサロンに出品する。サロン会場に潜入していた警察の密偵は、この絵のせいで戦争に対する批判が高まるのではないかと疑っていた。しかしながら、ナポレオンは作品を非常に気に入り、画家たちに褒賞を授与する際に、自らレジオン・ドヌール勲章をグロに授けている。
ナポレオン時代の歴史画には相応しくない写実主義
この絵の構成は、グロのその前の作品《ジャファのペスト患者を訪れるナポレオン》(1804年、ルーヴル美術館、INV.5064)を彷彿とさせる。しかし、ここでは惨憺たる場面がさらに容赦なくありのままに描かれており、その写実的表現はナポレオン時代の歴史画の中でかつて見たことのないレベルに達している。遺骸が描かれた前景は、《ペスト患者》以上に重点が置かれ、見る者の視線を釘付けにしている。観者を捉える恐怖心と崇高な感情は、グロが描いた死体の巨大さによるものであり、画面下側に描かれた顔は、通常の2倍の大きさである。幾人かの人物は画面の縁で切り取られており、作品が現実の場面の断片であるかのような印象を与えている。グロは幅広の筆を用いて絵を描いた。《ペスト患者》に見られるように、ダヴィッドの弟子グロは、師の新古典主義の教えと訣別したのである。こうしてこの絵は、テオドール・ジェリコーやウジェーヌ・ドラクロワといった、ロマン派の画家たちの作品を予告している。
出典
- CLAY Jean, Le Romantisme, Hachette, Paris, 1980, p. 289.- GERSTEIN Marc, " Le regard consolateur du grand homme. Le concours pour la bataille d'Eylau ", in Dominique Vivant Denon. L'oeil de Napoléon, Editions de la réunion des musées nationaux, 1999, p. 321-339.
- PRENDERGRAST Christopher, Napoléon and history painting : Antoine-Jean Gros's la bataille d'Eylau, 1997.
作品データ
-
アントワーヌ=ジャン・グロ(パリ、1771年-ムードン、1835年)
《エイローの戦場におけるナポレオン、1807年2月9日》
1808年
1807年開催のコンクール後に注文
-
油彩、カンヴァス
縦5.21 m、横7.84 m
-
INV. 5067
-
ドゥノン翼
2階
モリアン ロマン主義
展示室700
来館情報
ルーヴル美術館、チュイルリー庭園、クール・カレは、新たな通達があるまで休館・休園いたします。
美術館のチケットをオンラインでご購入された方々には、自動で返金処理が行われます。返金に当たり、特にお手続きをしていただく必要はございません。
なお、返金処理数が膨大なため、ご返金まで三か月ほどかかる場合があります。
ご理解のほどよろしくお願いいたします。