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ホーム>作品と宮殿>コレクションと学芸部門>《パリスのための習作》

Etude pour Pâris

Musée du Louvre, dist. RMN-Grand Palais - Photo S. Nagy

素描・版画
16世紀

執筆:
Grollemund Hélène

この黒と白のチョークで描かれた習作は、ローマのファルネーゼ美術館の丸天井の一区画にある《パリスとメルクリウス》のパリス像のための準備素描である。アンニーバレ・カラッチおよびそのボローニャの弟子たちによって1597年から1600年にかけて描かれたこの装飾画は、ラファエッロ的な調和とヴェネチア風彩色法との綜合を示すものとなると同時に、来るべきバロックの大装飾画の基礎となるものである。

基礎を築いた宮殿装飾

1595年11月、アンニーバレ・カラッチは、枢機卿オドアルド・ファルネーゼ(1537-1626年)の依頼によりファルネーゼ宮の装飾画制作を行うため、ローマに落ち着く。この宮殿はまさに当時、「永遠の都」における最も荘重な貴族の邸宅であり、ファルネーゼ家の権勢を明らかに示す象徴であった。ファルネーゼ宮の天井装飾は、ボローニャのパラッツォ・ポッジにあるペッレグリーノ・ティバルディによる「オデュッセウスの間」、ミケランジェロによるシスティーナ礼拝堂、ラファエッロによるパラッツォ・デッラ・ファルネジーナの装飾、そして古代彫刻に着想を得たものである。そこでは、神々の愛が、巧みな構図にしたがって配置されたクワドリ・リポルターティ(天井や壁面を区切って描いた装飾画を独立した絵画作品のように見せたもの)の中に描かれており、それを、大理石やブロンズのメダイヨン(円形装飾)を模しただまし絵の彫刻が、網の目のように取り巻いている。この異教的主題は、枢機卿オドアルドが、反宗教改革の支配するローマにあって自らの精神の不羈(ふき)を示そうとした際に考案されたものであり、自由の象徴、さらにはあからさまな放埒の象徴として見られた。アンニーバレにとって、放蕩三昧の神々の、陽気な、ひいては嘲笑的な雰囲気は最も得意とするところであった。開けっ広げで鷹揚な快活さの中で、原典からの自在な引用に基づく図像表現や、豊饒や悦楽を想起させるきわめて奔放な表現を結び合わせつつ、作品のそこここで遺憾なくその天才を発揮している。17世紀の装飾美術の原型とされるこの宮廷は、後の世代のあらゆる芸術家らのための道標となった。例えば、バッサーノ・ディ・スートリにあるドメニキーノによるフレスコ画、またパラッツォ・ボルゲーゼのランフランコによるそれなどには、この装飾からの直接の借用が認められる。

数多くの準備素描

現在残されている数多くの準備素描を通して、装飾全体の構造、および主なクワドリ・リポルターティの細部が組み立てられていった過程を追うことができる。それらの素描は、アンニーバレの腕の確かさはもとより、作品のうち最も見事な部分を作り上げるために、実際のモデルを基に徹底して熟考が重ねられたことを物語っている。パリスのための素描は、きわめて完成度が高いと同時に、驚くほど闊達である。英雄は腰掛けて、メルクリウスが手渡そうとしている「不和のリンゴ」を受け取ろうと手を差し出しているが、その姿は、要求されたポーズを取るモデルを写生した習作のもつあらゆる特徴を示している。左手で握っている綱は、フレスコ画ではトランペットに置き換えられている。その身体は、光を受けて柔らかな立体感を表わしているが、ブザンソン美術館に所蔵されている他の二つの準備素描、すなわち《メルクリウス》および《パリスの犬》では、力強いハッチングが陰や逆光になった部分を描き出している。ファルネーゼ宮のための習作について、マリエットはこう述べている。「カラッチ兄弟によるこれらの見事な裸体習作、頭部、および他の素描は、きわめて正確に描かれているので、もしフレスコ画が剥がれ落ちることがあろうとも、それをまったく純粋な形で復元することが可能であろう。それ故に、これらの素描は、それに相応しいあらゆる配慮をもって保存し続けることが望まれるのである。」

出典

- FEIGENBAUM Gail, The Drawings of Annibale Carracci, cat. exp. Washington, National gallery of Art, 1999-2000, n 53

- LOISEL Catherine, Le dessin à Bologne 1580-1620 : La réforme des trois Carracci, cat. exp. Paris, musée du Louvre, Editions de la Réunion des Musées Nationaux, 1994, n 59

- LOISEL Catherine, "Annibale Carracci au Palazzo Farnese", Les Cieux en gloire : Paradis en trompe-l'oeil pour la Rome baroque. Bozzetti, modelli, ricordi et memorie, cat. exp. Ajaccio, Musée Fesch, 2002, p. 121-134, n 017

- LOISEL Catherine, Musée du Louvre, Département des Arts graphiques, Inventaire général des dessins italiens. Ludovico, Agostino, Annibale Carracci, Paris, 2004.

作品データ

  • アンニーバレ・カラッチ(ボローニャ、1560年 -ローマ、1605年)

    《パリスのための習作》

    Vers 1597

  • 青色の紙に黒チョークおよび白チョーク

    縦50.3 cm、横36.3 cm

  • フランチェスコ・アンジェローニ(1652年没)、ピエール・ミニャール(1695年没)、ピエール・クロザ・コレクション、1741年にパリでその競売(462番から472番の一部)、ピエール=ジャン・マリエット・コレクション、1775年にパリでその競売(331番の一部)、国王美術品蒐集室のために取得

  • 素描・版画

    保存上の理由により、当部門の作品は常設展示室では展示されていません。

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