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ラメセス2世の巨像

© 2006 Musée du Louvre / Christian Décamps
古代エジプト美術
宗教と葬祭信仰
この彫像は、ラメセス2世の名が刻まれた玉座についた王を表している。元々は誰の彫像であったかをめぐって、激しい論争が行われた。というのも、冠、顔、胸部、玉座に修正の跡があり、ラムセス2世王が、先代の作品を自分のために再利用したのではないかという憶測が、長い間消えなかったからだ。今日では、67年にもわたるこの偉大なファラオの治世において、単に使用目的を変更するために修正が加えられただけであることがほぼ明らかにされている。
不運な彫像
この彫像では、ファラオが伝統的ポーズで表されている。すなわち、立方体の形をした玉座に座り、両手を開いたまま腿の上に置き、正面に(破損している)コブラがついたネメス頭巾をかぶり、顎には付け髭をしている。ベルトの留め金、玉座の背面や側面の全面には、ラメセス2世の名前と称号が刻まれている。冠、顔、首、胸、および玉座の一部は修復が加えられており、修復箇所は石材の表面が劣化している。そのことが、専門家の間で、ラメセス2世が、先代の王、アメンへテプ3世の彫像を再利用したのではないか、との憶測を呼ぶ原因になった。
ヒエログリフ彫像
しかし、実際には、そのような行為は犯されてはいなかった。というのも、王の丸顔は(少々おめでたいといってもいいほど得意満面な顔つきだが)そのほかのラメセス2世の図像と完璧に一致するからだ。 ここまで似せて制作するには、アメンヘテプ3世の顔を、かなり深く彫り直さなければならなかったはずだ。これはきわめて困難な美容整形手術と同様で、下手をすれば数トンにものぼる石が、使い物にならなくなるおそれもあったはずだ。その上、銘文は明らかに無傷で、「外科用メス」の跡もなければ、先代の王の名前も見当たらない。エジプト思想によれば、像は命名されて初めて自分のアイデンティティーを取得するものと考えられていた。つまり肉体的な類似は二義的な意味しか持たなかった。したがって王の像においては、肖像よりヒエログリフで刻んだ王名の方がはるかに重要であった。ラメセス2世は、先代王の彫像をかなり頻繁に再利用していたが、その際、単に名前を自分の名に変更するだけで良かったのだ。
ラメセス2世自身による修正
そこで、彫像の修正を説明するには全く異なる説が必要になった。ラメセス2世は、即位数年後、アメンヘテプ3世の様式に極めて近いカノン(規範)に従って、この彫刻を彫らせたと推測される。というのも、アメンへテプ3世の治世は政治の手本とされ、その再現が求められていたからだ。玉座の側面は、明らかにオリジナルだと分かる、「二国の統合」をあらわす模様がある。後に、(ラメセス2世は約67年間も王位に付いていたことを忘れてはならない)おそらく王位更新の記念祝典「ジュビレ」を機に、この彫像を一新させたのだろう。その際、冠と髭に金箔が施され、玉座の側面には南の女神(右)と北の女神(左)に向かって王の名が刻まれ、背面全体にも同様な銘が刻まれた。
修正が施された時期に、この巨像は本来あった場所からピ・ラメセスに移されたと推測される。大首都ピ・ラメセスは、ジュビレ祭典(王位更新の記念式典)の中心地であったと文書にも伝えられているからだ。したがって顔と胸は、この時に事故があり破損し、そのため修正されたか、あるいは後の第21王朝にピ・ラメセスからタニスに運ばれた際に施されたものと推測される。この彫像は、ピ・ラメセスから運ばれた同ファラオの数百にものぼる他の遺物とともにタニスで出土した。
出典
- DHAUSSY MARTINEZ, Rois et reines de l'Égypte ancienne, 2001, p. 5.- Barbotin et David, L'ABCDaire de Ramsès II, 1997, p. 93.
- Les Antiquités Égyptiennes, guide du visiteur, 1997, p. 64.
- BARBOTIN, Néfertari, catalogue de l'exposition, luce d'Egitto, Rome, 1994, pp. 146-149.
- Aménophis III, Le Pharaon Soleil, catalogue, 1993, p. 143.
- Tanis, l'or des pharaons, cataloguede l'exposition, Grand Palais, Paris, 1987, notice n 52.
- BARGUET, Revue des Arts, 1960, pp. 242-248.
- VANDIER, Manuel, 1958, T. III, p. 216.
- MULLER, Journ. Eg. Archæology, 1939, T. 25, p. 53, n 3, citation.
- PORTER et MOSS, Topographical bibliography, 1934, T. IV, p. 22.
- BOREUX, Guide catalogue sommaire, Musée national du Louvre, Département des Antiquités Égyptiennes, 1932, T. I, p. 40.
- DEVERIA (Rrv. Arch.), 1861, T. IV, p. 249.
作品データ
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ラメセス2世の巨像
新王国時代、第19王朝、ラメセス2世治世下(前1279-前1213年)
タニス出土
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丸彫り、インタリオ、閃緑岩
高さ2.56m、幅0.80m、奥行き1.17m
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1827年に取得
A 20
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シュリー翼
1階
神殿
展示室324
来館情報
地下鉄:1番線または7番線、Palais-Royal Musée du Louvre 駅
月・木・土・日:9時-18時
水・金:9時-21時45分(夜間開館)
休館日:毎週火曜日、1月1日、5月1日、12月25日