Go to content Go to navigation Go to search Change language
ホーム>作品と宮殿>コレクションと学芸部門>聖杯型クラテル、通称「ボルゲーゼの壺」
聖杯型クラテル、通称「ボルゲーゼの壺」

© 1992 RMN / Hervé Lewandowski
古代ギリシア・エトルリア・ローマ美術
ヘレニズム時代のギリシア美術(前3-前1世紀)
ボルゲーゼ・コレクションのこの巨大なクラテルは、ヘレニズム時代末期の豪華な庭を装飾するための、ローマ人の好みに基づいた盛んな商業美術を物語っている。アテナイの工房は、大量にイタリアに輸出されたこれらの装飾品の長となった。この壺を装飾する浮彫はディオニソスの行列を表現している。音楽の拍子に合わせサテュロスとメナドは踊りながら、酒の席を仕切るディオニソスとアリアドネに付き添っている。
ボルゲーゼの壺の近代史
1566年にローマのサルスティウスの庭園にて発見された、この巨大なクラテルは、ボルゲーゼの剣闘士または負傷したガラテヤ人(ルーヴル美術館に保管)のように、ナポレオン1世により購入された。というのも1808年彼は、彼の義理の兄弟カミロ・ボルゲーゼ公から、そのコレクションをまとめて購入した。17世紀中頃よりボルゲーゼの壺は、大理石の古代の壺のなかでも最も破損したもののひとつであった。ヴェルサイユ宮殿のラトナの泉を飾り立てる複製品のように、何度も複製、模倣されたその姿は、版画や石材、ビスクにて近代ヨーロッパに増えていった。
ディオニソス行列の装飾
この聖杯型クラテルは、サイレンの頭部を模った怪人面と、反りひだ装飾の頂点に付いていた、広口の両側にあった把手を失っている。装飾のレパートリーのように壺の形は、前4世紀より宴会の際、使用していた鉄製の大型容器に着想を得ている。胴部を装飾する浮彫は、ブドウの唐草様の葉飾りの上にいるディオニソスを演出している。音楽の拍子に合わせサテュロスとマイナデスは陽気に踊りながら、酒の席を仕切るディオニソスに付き添っている。一人のサイレンのみ、酔っ払い倒れこんでいるところを若い同族に支えられており、それはティアソスを頻繁に特徴付ける放埓を思い浮かばせる。ディオニソスは松かさで飾られた棒でできたテュルソスを持ち、葉と房の付いたブドウの枝と木蔦の冠を被り、半裸で表現されている。彼の両脇には、その妻アリアドネが竪琴を弾いている。装飾のモデリングは、前2世紀の中頃のヘレニズム美術から取り入れている。
庭を飾る壺
前1世紀に制作されたボルゲーゼの壺は、ヴィラや庭を装飾するための、豪華な装飾へのローマ社会の好みに基づいた、ヘレニズム時代末期の盛んな商業美術を物語っている。ルーヴル美術館のクラテルに類似する、複数の大理石製の壺は、おそらくピレウス港からイタリアに向けて出航し、チュニジアのマディア沖にて沈没した船の漂流物の中で発見された。庭を飾る目的でローマ人にとても高く評価されていた、これらの装飾的な大型の壺は、アテナイの工房にて大量生産された後イタリアに多く輸出された。アテナイの大理石業者は、これらの装飾品の生産を専門とした。領土拡大に伴った、ローマの支配階級の早期のギリシア化は、回顧的な様式の発展を活発にした。ローマ将軍の略奪が満足いくものでなかったというより、ギリシアの作品の増加する需要を満たすため、芸術家たちは、ギリシア美術の前時代のレパートリーを活用した。
出典
HAMIAUX M., Les sculptures grecques, II, Paris, 1998, pp. 199-201, n 217.HOLTZMANN B., PASQUIER A., L'Art grec, manuels de l'Ecole du Louvre, Paris, 1998, pp. 282-283.
Das Wrack, Der antike Schiffsfund von Mahdia, exposition de Bonn, Cologne, 1994, pp. 3-16.
GRASSINGER D., Römische Marmokratere, Monumenta Artis Romanae, XVIII, Mayence-sur-Main, 1991, pp. 181-183, n 23, et passim, fig. 23, 60, pl. 1, 83-90, 221.
TRUSZKOWSKI E., "Sur la date du cratère Borghèse", Histoire de l'Art, 3, 1988, pp. 3-16, fig. 1-10.
HASKELL Fr., PENNY N., Pour l'amour de l'art antique : la statuaire gréco-romaine et le goût européen 1500-1900, Paris, 1988, pp. 347-348, n 169, fig. éd. anglaise, Taste and the antique : the lure of classical sculpture 1500-1900, New Haven, 1981.
FUCHS W., "Die Vorbilder der neuattischen Reliefs", Jahrbuch des Deutschen Archäologischen Instituts, suppl. 20, 1959, pp. 108-118, n 1, pl. 23 b, 24 b.
作品データ
-
聖杯型クラテル、通称「ボルゲーゼの壺」
前1世紀
1566年(?)ローマのサルスティウスの庭園にて発見
アテナイ(?)
-
ペンテリコ産大理石(アッティカ)薄浮彫と高浮彫による装飾
高さ1.72m(近代に作られた脚を含む)、直径1.35m
-
旧ムッティ・コレクション、ボルゲーゼ・コレクション、1808年購入
Inventaire MR 985 (n° usuel Ma 86)
-
ドゥノン翼
1階
ギャラリー・ダリュ ボルゲーゼの剣闘士
展示室406
来館情報
ルーヴル美術館、チュイルリー庭園、クール・カレは、新たな通達があるまで休館・休園いたします。
美術館のチケットをオンラインでご購入された方々には、自動で返金処理が行われます。返金に当たり、特にお手続きをしていただく必要はございません。
なお、返金処理数が膨大なため、ご返金まで三か月ほどかかる場合があります。
ご理解のほどよろしくお願いいたします。