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蛇を踏みつぶすライオン

© 2010 Musée du Louvre / Thierry Ollivier
彫刻
19世紀のフランス
野性的で見事なライオンが、うなりを轟かせながら蛇を地面に踏みつけている。頭部を後ろに反らせ、顎を大きく広げた蛇は、轟然と叫び声を立てている。動物の極限まで自然な表現と荒々しい表情によってこの彫刻は一大人気を引き起こし、大衆やロマン主義者たちから賞賛を受けた。一方でより保守的な評論家は、この彫刻作品が設置されたチュイルリー庭園が動物園になってしまったと嘆いた。
自然の真実
バリーはかつて誰も成しえなかった方法で動物像を彫り上げている。まず第一に、動物はここでは彫刻の主題で、単なる付属品ではない。次に芸術家は、自然に対する忠実で細かい分析を施している。こうして毛皮の描写、真実味溢れる動き、野性的な特性の描写には錯覚を起こすような手法が用いられている。バリーのライオンは真の現実味を帯びており、毛皮の下にある筋肉を感じ取ることが出来る。画家ドラクロワと共に、バリーは植物園の動物たちの研究、描写だけでなく細かい分析に何時間も費やした。しかし彫刻家は科学の奴隷となったわけではなかった。彼は自然を自らの芸術によって再現したのである。現実的な印象を与えるために、彫刻家はしばしば筋肉を誇張したり、起伏を強調したり、ラインを増やしたりしたのである。
叙事詩的な調べ
バリーはこの動物の戦いに叙事詩的な要素を吹き込んでいる。すなわち動きが止まったかのような瞬間を捉えているのである。二頭の野獣が対決しているこの瞬間は、次に展開する荒れ狂う闘争の予感によって劇的に表現されている。ライオンは優勢であるものの、十分に警戒しており、部分的に突出した爪や尾の位置、逆立った鬣がそれを表わしており、その緊張は頂点に達している。頭部を後ろに反らせた蛇は、螺旋状にとぐろを巻き、顎を大きく開き、ライオンの正面に向かって今にも飛び掛りそうである。ライオンの緊迫したエネルギーがそれに呼応しており、皺のよった鼻面、すさまじい目つき、蛇の上で力強く押し付けられた前脚、その体つきは正に筋肉そのものである。二頭の動物に備わった生命と死の力は、ロマン主義者たちを魅了した。さらに作品のサイズが全体の印象を強調している。
君主制擁護者の象徴
ライオンは優れた君主制の動物で、権力と勇気の象徴である。こうしてこの彫刻は、1830年7月のフランス革命によって布かれた政体に大きな不満が沸き起こった際の七月王政とルイ=フィリップ王に対する献辞であると言える。国王の玉座への即位は、獅子座とヒュドラ(すなわち蛇座)の星座が出会う時期に行われた。こうして彫刻はこの権力の掌握の天上からの承認を象徴しているのである。
出典
- BENOIST L., La Sculpture romantique, 1928, nouvelle éd. par Isabelle Lemaistre, Paris, 1994, p.209-215.- FUCO P. et JANSEN H.W., The Romantics to Rodin. French Nineteenth Century Sculpture from North American collections, catalogue d'exposition, Los Angeles County Museum of Art, 1980, n 17.
- BENGE G. F., Antoine-Louis Barye, Sculptor of romantic realism, Pennsylvanie, 1984, p.34-37.
- BRESC G. et PINGEOT A., Sculptures des jardins du Louvre, du Carrousel et des Tuileries (II), Paris, 1986, p.28-30.
- LEMAISTRE I., "La Griffe et la dent : Antoine-Louis Barye, sculpteur animalier (1795-1875)", in Les dossiers du Musée du Louvre n 51, Paris, 1996, pp.38-44.
作品データ
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アントワーヌ=ルイ・バリー、オノレ・ゴノン
蛇を踏みつぶすライオン
1835年
チュイルリー庭園のために注文、1836-1911年まで設置
パリ
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ブロンズ、オノレ・ゴノンによる蝋型鋳
高さ1.35m、幅1.78m、奥行き0.96m
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《チュイルリーのライオン》
L.P. 1184
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リシュリュー翼
地上階
ピュジェの中庭
展示室105
来館情報
地下鉄:1番線または7番線、Palais-Royal Musée du Louvre 駅
月・木・土・日:9時-18時
水・金:9時-21時45分(夜間開館)
休館日:毎週火曜日、1月1日、5月1日、12月25日